たべもののこえ・プロデューサーの竹中聰子(おかん)です。
食・料理・メディアの専門家として、〝台所から世界を見つめるコミュニティ作り〟を目指して活動しています。
今週は、料理教室【包丁人のルール】シリーズ、さしみを〝ひく〟の開催ウィークでした
こちらはイサキ。
平造り、そぎ造り、角造りで。
こちらはアジ。
どちらのお魚も、今が旬
今回は、魚を三枚におろして、色々な切り方でお刺身をひき、盛り付けるという内容でした。
聞くと簡単そうに思えますが、シンプルなものほど実は難しく
今回来てくださった方は、ふだんあまりお料理しないから基本的なことから知りたいという人や、釣りが趣味で魚をさばく機会はあるけれどちゃんとした方法を知らないからという方などさまざま。
先ほども書きましたが、このシリーズは、簡単そうに見えて実は難しいので、終わったあとに…
「もっとやってみたい」となる人と、「あんまりやりたくない」となる人と、
反応もいろいろで、こちらも皆さんのそれぞれの思いを知れて、本当に興味深いです
このシリーズは毎回、料理のひとつの技術をテーマにしていて(今回であればさしみを〝ひく〟)、一見料理教室ふうにしているのですが、実は皆さんにお伝えしているのは、決して〝料理上手になりましょう〟ということではないのです
ではどういうことかと言いますと、単純に、
自分の手で〝食べものをさわる〟という時間を大切にしていただきたいと思っています。
新鮮なお魚をさわれば、色々な情報が手を通して伝わってきます。
ぴちぴちしていて美味しそう
魚ってこんな体の作りをしてるんだ
早くさばかないとダランとなっちゃうな
切り方が悪いとこんなに味が違っちゃう
魚は丸ごと買ったほうが鮮度が落ちにくいのかな
今度は切り身じゃないお魚を買ってみよう
などなど。
あげれば枚挙にいとまがないほど、たくさんのことを感じてもらえる時間と場所が、そこにはあります
ネットで見るより、すごい量の情報量や五感を通して感じる体験があるのです。
それは決してレシピサイトなどでは伝えられないので、手から手へ、ひとつひとつ皆さんにお伝えしていきます。
最初はその古典的なレクチャー方法に戸惑われる方もいらっしゃるのですが(笑)、無事に料理を終えて食べ始めるころには、シャンとした気持ちになって、そしてフラットな気分で食べものに向かいあっておられるような気がします
これが大切なのかなぁと私はいつも思うのです。
どんなにお金持ちでも、どんなに地位や名誉がある人でも、食べものの前で真摯に向かいあえる人が一番ステキ
いただきますと感謝して、そのいのちをいただく工夫を自ら手を下して、おいしく食べることができる人に、勝る人はいません。
そんな体験が、お魚をさばいて、お刺身をひくというだけで、まるっと出来るのです
そしてここで感じていただいたことは、きっとこれからのふだんの生活も違うものにします
お店に行っても、こんなに工夫してお魚を料理しているから、お刺身は高いんだな、とか
新鮮なまま食べられるのは、漁師さんやお魚屋さん、そして料理人の技術あってこそなんだな、とか
お刺身パックよりも、丸のままの魚や、柵で買ったほうが新鮮でお手頃価格になるならそのほうがいいな、とか
この気づきは、人と人との繋がりかたを変え、流通の方法も変え、世の中を変えていく力まで持っていると私は思っています。
近年『ファーム・トゥ・テーブル(農園から食卓へ)』という言葉が頻繁に聞かれるようになりましたが、私がやっていることは『テーブル・トゥ・ファーム』だなと最近つくづく思います(笑)。
高いか安いかという判断基準だけでなく、
〝私はこんな食べものが欲しい〟
そんなふうにこちらから、それぞれ一人一人が言えるようになれば、もっと世界は色鮮やかで自由に、そしてひとつひとつのいのちや個性を大切にできる、ステキな世の中になると思っています
今回も、こんなステキな時間を皆さんと持てたことに、感謝いたします。
そしてご馳走さまでした