蓄熱式床暖房のすすめ~夏と冬の快適さを実現すること | 建築家 田口知子の日常をつづったブログ

蓄熱式床暖房のすすめ~夏と冬の快適さを実現すること

家づくりのなかで、どこにお金をかけるかのバランスはとても大切ですね。広さが大切な人、キッチンやお風呂など機能性が一番大切だと思う人、仕上げ材には本物を使いたい、耐震性能に防犯性にこだわる、それぞれごもっともです。設計するということは、その方にとって一番大切なことを、あぶり絵のように浮かび上がらせていく作業だと思っています。

本人も気づいていないかもしれない「その人にとっての大切なこと」をコミュニケーションの中から汲み取って、新しい生活のあり方を提案して、幸せな生活を実現する、ということが仕事です。その際、「優先順位をつけること」は、本当に質のよい家で、コストパフォーマンスの良い家づくりに、とても大切なことです。


 さて、建築家として家づくりの相談を受けるときに、私が作る家は、部屋を壁で分けるのでなく、家の空間全体がのびやかに連続していることを大切にしています。外部にも部屋のような空間、中庭やバルコニーがあって、中とがつながって、広々感じられる空間をデザインするのは、家作りの基本中の基本です。


建築家 田口知子の日常をつづったブログ輻射式床暖房を設置した相模湖東の家。

夏も冬のエアコン無しですごせるそうです。

 そのような空間をつくることは、風通しもよく、日差しもあちこちから入ってきて、夏の快適さをつくるのは簡単です。


 ところが、逆に冬の寒さを防ぐのは、ちょっと別のアイデアが必要です。冬は、狭い部屋でストーブをたいたりコタツに入ってじっとしてるのが一番暖かいというのは事実。でもそれでは、あたりまえすぎてつまらないですね。

 冬の暖かさは、まずは日差し。太陽光を最大限取り入れる窓をデザインすること。それにプラスして「夜間蓄熱式床暖房」を建築として取り入れることは、かなり優先順位を上げて提案しています。

 費用は60万円~100万円程度の初期費用で、家全体を足元から快適に暖めてくれて、夜間電力をつかって土間床全体に蓄熱することができます。

エアコンのように風もなく、家の構造(壁や天井、床)に熱をたくわえるので、身体にやさしくもっとも快適な室内環境を実現できます。夜間電力を使うので、家全体を暖房していても、月々のランニングコストは3~4000円(30坪程度の家で)



 無印良品の家で、同じシステムをオプション品としてつけていると聞き、見に行ってきました。夜間に5時間だけ土間の床に温水を流して蓄熱します。昼は土間に蓄熱された熱だけでふわっと暖かい、を体験してきました。



建築家 田口知子の日常をつづったブログ 無印の家外観

建築家 田口知子の日常をつづったブログ 吹き抜けがあって開放感の高い設計でした。

厳寒日にはエアコンも併用するそうですが、基本的にはこの土間床暖房だけで過ごせるようです。もちろん、断熱性能もかなり高いことが前提です。

空間の開放性と風の通る家にプラス土間蓄熱式床暖房、このセットが、今の住宅設備のお勧めすです。