チュオン侯爵邸に着いた騎士団は、


意識を失っているメヒルを、

父親であるムンゲイツ・チフロンの

流刑地へ送った。


既に修道院から逃げたと知って

愚かな娘に育ててしまった事を

悔いていた所へ、一日経ってメヒルが

荷馬車に乗せられて送られて来た。

カイルの実を食べた事を聞き、

流刑地の一室に寝かされている娘の

所へ連れて行かれ、最期を看取り、

流刑地の近くの墓地に葬った。


「あの世で会ったら、今度は、まともな

娘に育ててやる…」と呟いた。



一方、カイルの実を探していた騎士団は、

修道女の服を見つけ、そこから、

洞窟へと辿り着き、カイルの木も

見つけて、焼き払った。

洞窟には、魔獣はいなかったが、

そこら中を探した。

魔獣はカイルの木ノ実とその葉を

食い尽くすが、その痕跡がない事から

魔獣は居ないと判断した。

群れから離れた魔獣がいたが、

仲間を探し、魔獣の群れに戻ったと

いう結論に達した。

その事を皇帝陛下に報告した。


「わかった!しかし、いつ現れても

対応できる様、訓練を怠るな!」


「はいっ!!我々は陛下の闘い方を

見ております!共に魔獣を倒して

来ました。油断せずに、訓練に励みます!

陛下は心穏やかに皇后陛下の出産に

備えて下さい!」


「ああ、ソクチュ副団長!たのんだぞ!」




ウンスは、産み月を迎えていた。

しかし、三つ子となれば、40週は、

お腹の中に居て欲しいと願っていた。

ウンスのお腹は、物凄く大きくなり、

食も少ししかとれなくなっていたが、

トイレには歩いて行くとヨンの手を借り

歩いて行っていた。

マイヤー夫人の検診には、毎日、

ヨンが抱いて、連れて行った。


「皇后陛下?お腹の張りはありますか?」


「う〜ん。それが、あまり感じないの。

子供達の動きが激しくて、そのせい?」


「お腹がパキパキと固くなって、

痛みを感じませんか?」


「本も読みましたが、固くなると言う

事は感じないんです。」



「そうですか…大公夫人も同じ事を

言ってました。9ヶ月位になると、

少しは張りを感じるのですが…

しかし、子宮口が少し開いて来ています!

いつお産になるか、わかりませんので、

私も今日から、泊まり込みます!」



「マイヤー夫人!ウンスの食がなかなか

進まないのだが?」


「少しでいいですから、一日何回も

食べさせて下さい。大公夫人も、

食が細くなってると聞きましたが、

普通でも、そうなります。皇后陛下は

これほど大きなお腹ですから、胃を

かなり圧迫されているのかと思います。

それと…そろそろ夜の方は、控えて下さい」


「ああ、わかっておる!」


「胸もはち切れそうな程大きくなって

おります!胸を刺激すると、

早産の可能性がありますが、もう、

36週なので、いつ産まれても

おかしくありません!

保育器もございますので、チームは、

皇后陛下のお産に最善を尽くします!」


「最善以上を尽くしてくれ!」


「はい!かしこまりました!」


チェミも使用人達も想像以上のお腹の

大きさに心配が尽きなかった。


ウンスは一日のほとんどをベッドの上で

過ごした。

腰が痛くならないように、クッションを

あてたり、起き上がった時は、

皇帝陛下が背もたれになっていたが、

大きなクッションも作って、背もたれに

するように言った。


「なんだぁ?メイド長?俺の楽しみを

奪うつもりか?」


「そうではございません!皇帝陛下も

寄りかかれるようにと。」


「そうか?確かに楽だな?ウンス?

何か食べたい物はないか?」


「おかしな事を言っても怒らない?」


「ん?俺がウンスを怒った事はないだろ?」


「あのね…何だかあのスープが飲みたいの。」


「あのスープ?まさか、18年間も

飲まされていたスープか?」


「うん…変でしょう?」


「いや、全く変じゃないぞ!

確か、激マズとか言ってなかったか?」


「うん…それでも私達には、慣れた味で

温かいうちは、ご馳走だったわ。」


「皇后陛下?どの様な味だったのですか?」


「うん…ほんの少しのオニオンと人参が

入っていて、味は…塩だけでほとんど

無いも等しい物だったけど…」


「料理長に作って貰います。いくら

粗末なスープでも、食べないよりマシで

ございます。」


「エルナも呼んでくれる?」


「かしこまりました。」


料理長は、驚いたが、なるべくその味に

近いものを作ってみた。


ビンがエルナを連れて来た。


「ウンス様!」

「エルナ!」

2人は嬉しそうに手を取り合った。


「あのね、エルナも食欲がないんでしょ?」


「そうなんです。小分けにして少しずつは

食べるようにしているのですが…」


チェミがスープを持ってきた。


「皇后陛下…ほとんど味がしないと

料理長が言ってました。私も味見

しましたが…こんな物でいいのですか?」


「ウンス様?あのスープですか?」

「うん…変よね?何だかこれが食べたい

だなんて…」


「いいえ、私も実は…」


不味そうなスープを嬉しそうに

2人は口にした。


「食べれますわ!」

「うんうん。私達って変よね?」


嬉しそうに不味いスープをすする

2人が不憫で仕方なかったが、

楽しそうに食べる2人が幼い子供の

ように見えた。

ヨンとビンも同じ物を食べたが、

ほとんど味がしなかった。


料理長が入ってきた。

「皇后陛下?お産は体力が必要です!

それだけでは、持ちません。こちらを

スープにつけて、食べてみて下さい!」

焼き立てのパンだった。

しかし、料理長は工夫をこらし、

パン生地にすり潰した栄養価が高い

豆と芋を練り込んだ。


「美味しいわ!ありがとう料理長!」


料理長は、それから、なるべく味が

わからない栄養がある物をパン生地に

練り込む事にした。そして、少しずつ

スープも工夫していった。


それから、ウンスとエルナは、

元気になっていった。

ヨンとビンも同じ物を食べるようにしたが

ウンスとエルナに叱られた。


「ヨンとお義兄様は、運動もしなくては

いけないから、お肉も食べなきゃ駄目よ」


ヨンとビンには、肉も用意された。

食事を共にしていると、

「そのお肉、一口だけ食べたい」

と喜ぶべき変化が起きたのだった。






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出産に一歩一歩近付いています。

不味いスープを嬉しそうに食べる

ウンスとエルナを全力で支える

ヨンとビンと皆んなです。