朝議が終わって、


予約でいっぱいだと言う店の

マダム・ミネルバが来た。


「輝く太陽光り輝く星、護り神の

皇帝陛下にご挨拶申しあげます!」


「忙しい所すまないな!」


「とんでもございません!皇后陛下の

ドレス50着と大公夫人のドレス50着

だなんて、光栄でございます。

ご懐妊されたと聞いております。

なるべくゆったりとした物が良いかと

思います。寝間着も必要かと思います。」


「ああ、先に大公夫人が来ると思うが

始めていてくれ!今から皇后陛下を

連れてくれ!」


「かしこまりました。」


ビンがエルナを連れて来た。


マダム・ミネルバは、複雑な気持ちだった。

サロンを経営しているが、大公殿下と

同じ年頃だった。

10代の頃から、憧れていた

ビン・サンダー王子が目の前に

居たからだ。


「大公夫妻にご挨拶申しあげます。」


「ああ、息災であったか?随分と

忙しいようだが?無理を言ってすまない!

予約待ちがでる程のサロンになったとか?

女手1つで大したものだ!仕事に精を

出すのも良いが、結婚はしないのか?」


「ビン様!その様な事を聞くのは、

失礼ですよ?」


「あっ、エルナ?そうなのか?」


エルナは直感でわかった!

この女性がビン様を見る目は、

他の令嬢達と違うと。


「大公夫人には、初めてお会いします。

素晴らしいお方を見つけたのですね?」


「ああ、信じられないかもしれないが、

幼い頃から夢に出て来た運命の伴侶だ!」


「それで納得しました。大公殿下が

なかなか婚姻しなかった理由が。

あらぬ噂も出ていたのですよ?」


「は?あらぬ噂とは?」


「男色とか、機能障害ではないか?と」


「機能障害?なる程…噂とは怖いものだな?

エルナ?ミネルバは、アカデミーで

一緒だったんだ。子爵家の令嬢だったが

いつの間にか、この国でも有名な

ドレスサロンの経営者になっていた。」


「そうですか。とても優秀なお方

なのですね。お会いできて光栄で

ございます。」


「さあ、こちらへ。」


カーテンの向こうで採寸に取りかかった。


「まあ、少し目立ってきましたね。

バストも少し大きいようなので、

今後の事も考えて、お美しい大公夫人に

似合うドレスに致します!」


「ありがとうございます。」


綺麗なミネルバから言われたが、

エルナは、複雑だった。



皇帝陛下と皇后陛下が来た。


「なんとお美しいのでしょうか。

えっ?お腹がかなり目立っていますが?」


「ああ、三つ子なんだ!あらぬ噂を

立てられと困るから、暫く隠していた!」


「あらぬ噂とは?」


「はじめまして。マダム?ミネルバさん。

こんなにお腹が大きいと、

月数が合わないとか、結婚前に妊娠して

嫁いで来たと、ヨンに迷惑がかかると

思ったからです!」


「皇帝陛下は、素晴らしい方を

見つけたのですね。」


「見つけた?やっと再会できたと

言った方が良いかもしれない!

他人には、わからぬ事もある!

兄上とエルナもそうだった!」


「そうだったのですか…誰もが憧れた

 皇帝陛下と大公殿下が誰にも

見向きもしなかったのは、そう言う

事情があったのですね。あっ、失礼

致しました。皇后陛下の採寸をさせて

頂きます。」


「あっ、俺も一緒に側に居る!」


「嫌よ!ヨンは、向こうで待ってて!

恥ずかしいじゃない!」


「今更、何を?毎夜見てるだろう?」


「こんな明るい所で大きなお腹を

見られるのは、イヤなの!

ほんっとに、女心をわからないんだから!」


「クスクス。皇帝陛下も皇后陛下には

敵わないようですね?」


「何とでも言ってくれ!俺達兄弟は、

唯一、妻には敵わない!」


「そう…ですか。」


一瞬見せた切なげな顔をウンスは

見逃さなかった!


「まあ、何と豊かなバストでしょう!

これは、ドレスは特注でなければ…

あっ!前にメイド長が特注のドレスを

沢山頼みに来ました。皇后陛下を

迎える前の話ですが、皇帝陛下は、

知っていたのですね。」


「そうなの。ストーカーみたいでしょ?

サイズがピッタリだったんですよ。

それに…妊娠がわかってから、トイレまで

付いてくるんですよ?あっ、それは、

お義兄様も一緒か…」


「大公殿下がですか?」


「兄弟って、似るんですね。安定期に

入るまで、お姫様抱っこで移動して

たんですよ。」


はは〜ん。お義兄様が好きだったのね。


「お義兄様と同級生だったのですか?」


「えっ?あ、はい…。お二人共、

首席で卒業しました。良く図書館で

一緒に勉強をしていました。

それにしても、産み月近く、大きいの

ですね?」


「もう少しで6ヶ月です。驚きますよね?」


「皇后陛下?敬語はお辞め下さい。」


「う〜〜ん。みんな、そう言うのよね?

私とエルナは、冷遇されて一緒に

育ったので、本ばかり読んでました。

其処には、目上の方は、敬え!と

書いてあったけど、間違い?」


「はい!身分は、大事です!

皇后陛下は、もっと威厳を見せても

宜しいかと思います!」


「威厳かぁ…。それより、国の役に立つ

事をしたいの。」


この方は、只者ではないと察した

ミネルバだ。


「採寸は、終わりました。直ぐに、

職人達が作業に取り掛かります!」


「充分な報酬を払ってあげて下さい!」


「はい!」


マダム・ミネルバが帰ると、

財務室に向かった。


少し元気がないエルナは、ウンスには

ひと目でわかった。


「ヨンもお義兄様も、降ろして

下さい!ゆっくり歩くので、大丈夫です!

エルナ?こっちに来て!ちゃんと付いて

行くので、2人は少し離れて!」


「兄上!何かやったのか?」


「そういうヨンこそ、姫の機嫌を

損ねたのか?」


エルナは、やはりウンス様には、

隠し事はできないと思った。


「エルナ?マダム・ミネルバの気持ちに

気づいたんでしょ?」


「はい…ビン様を見る目が違って

いました。あの目は本気なのだと…」


「私達の知らないヨンとお義兄様を

知っているのは、ただアカデミーが

一緒だっただけよ?お義兄様は、

エルナをずっと探して居たと言った

でしょ?」


「そうなんですが…ビン様があの方に

向けた笑顔が目に焼き付いて…」


「それはね、妊婦は、感情の起伏が

激しくなるからよ?」と癒しの魔法を

かけた。


「何だか、スッキリしましたわ!」


「エルナ?あれは持って来た?」


「はい!ウンス様のも持って来ました!」


「私達の腕は、最強よ!」


「ウンス様には敵いませんが、

2人でやれば、あっという間でしょう!」



何をやらかした?と思うヨンとビン。

4人は財務室に着いたのだった。




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んまっ!ビン様!まさか?