かけがえのない思い出は、嵐の中に潜んでいるーーー。
いよいよ就活などで多忙を極める妹が、大荷物を抱えて研修先から帰ってくるというので、私は折り合いの良い場所まで車で迎えに行きました。
少し早く着いたので、駐車可能地帯に車を停めると、妹から「電車が遅延していて、もう少し遅れます」とのメール。
ならばと思い、トランクから雑巾を取り出して車体についた埃を拭き取ったり、荷物がすんなり入るようにシートをずらしたり、そんな事をしていました。
それでもなお時間が余ったので、目の前の自販機でリンゴジュースを1つ買って、後ろのシートに置きました。
ウェルカムドリンク付きの送迎タクシーだぞ
と妹の喜ぶ顔を思い浮かべてニヤけていたら、当の妹が走ってこちらへ来るのが見えました
「お待たせ〜!」
最後の力を振り絞ってキャリーケースと米俵のような重さのリュックを下ろし、案の定リンゴジュースに大喜びして、こんな素敵な姉は他にいないだろうから、と私は用意しておいた台詞を言いました
さて、帰ろうとした瞬間、嵐は音を立ててやってきました。
エンジンが、かからない……
いわゆるバッテリー上がりだろうか。
電池のマークが付いて妙な音まで立てている…
2度、3度、間を空けて試したが、結果は変わらないどころか、爆発してしまうのではという恐怖心すら膨れ上がった。
恐る恐る後部座席を振り返ると、既に状況を察した妹が虚無感を滲ませた顔でこちらを見ていました…
「大事な話がある…」
「壊れた?」
「エンジンが…」
そこから保険会社に連絡し、母にも連絡を入れ、てんやわんやの騒ぎでした。
優秀な保険会社のお陰ですぐにレスキュー隊を手配して下さいましたが、
「平均で1時間前後かかる」とのこと。
電気はもちろん、暖房もかからない車中に取り残された2人…
空腹と寒さから妹を守らねば…
ひと回りも年が離れていると、母の母体にいた頃から出産当日、母乳やオムツ替え、離乳食に反抗期に…とひと通りのお世話をしたし、全て記憶しているわけで、成人していてもまだ「守らねば」という気持ちに駆られます。
そこで妹に、
「近くのお店で温かい飲み物を買ってきてくれるそれから、おやつも」
と言うと妹はスマホからメニューを開いて、「どれがいい」とのってくれました。
「駅前に美味しそうな たい焼き屋ができてたよ」とも。
妹にお小遣いを託し、たい焼きを1つと温かい飲み物を買ってきてもらいました
車中とは言え、最低気温3℃の底冷えするなか、姉妹でお芋餡の温かいたい焼きを半分こしたのはとても幸せな思い出になりました
一方、母は私たちを心配して10分とも間を空けず様子伺いのメールをしてきます
なので2人で仲良くたい焼きを半分こしてある写真を送ると、
「生きていて本当に良かった気をつけて帰ってきてね」
と返ってきました。
たい焼きを頬張っていると電話が鳴り、いよいよレスキュー隊が到着するとのお知らせが
窓を叩く音で顔をあげると、それはそれは笑顔の眩しいお兄さんが現れました
「お待たせしました!もう大丈夫ですからね!僕に任せてください!」
とヒーローさながらの、逞しい台詞を軽やかに放ち、手際よくボンネットを開けて見てくれた。
3分も立たぬうちにエンジンはつきました。そんなに早く
お兄さん曰く、バッテリーを止めるネジが緩んでいたそうで、上手く電気が流れずにエラーが出てしまったそうです
予想外すぎる展開
しかも最悪は運転中にネジが外れていたかもしれないとのこと
なのでそのネジを締めて、今後のアドバイスまでしてくれました。
その後爽やかに、風に溶けていくかのように街角へと消えたお兄さん。
実はちょっとイケメンだったんです笑
そこで妹に「あのお兄さんは芸能人や有名人、キャラクターでいうと誰に似ていると思う」と尋ねて自分も考えてみまさした。
結果はこちらです
妹:お笑い芸人・千鳥の大悟さん
私:アンパンマン
同一人物かよ
とにかく目が大きくて優しくて、ヒーローっぽい感じ。
寒さのせいか、急いで駆けつけてくれたからなのか、伝票の控えを見ても名前が読めません。笑
それがまた、逆シンデレラのようなミステリアスな事態でかっこいい。笑
そう言えば数年前、舞台の本番目前のある夜、稽古帰りに大浦さんが雪道で車が立ち往生してしまい、私もJAFを呼ぶのを手伝ったっけ。
同じように、ピンチの時に手を差し伸べてくれた人って、上手いこと印象良く残り易いような
ピンチ効果の末の結婚だったか
いや、できれば運命の出逢いだった!!と信じたい
とにかく家族みんな無事で、妹ちゃんともまた一つ、大切な想い出が作れたので、めでたしめでたし
皆様も引き続き、事故や怪我にお気をつけてお過ごしくださいね