「ギャーー」と叫び,アピールするしか手が無かった.
ここはパリ・オペラ座!
バレー鑑賞のため,隣に娘が座り,私は首が痛くなるほどに,
天井のシャガールの絵を眺めていた.
間も無く開演.
そこへ,前列の席に座られるフランス人老夫婦と思われる二人が入ってこられた.
マダムが薄い板の椅子をフラットにされて,座られた瞬間!
足を組んでいた私の宙ぶらりんの足先が,挟まったのだ.
マダムに席を立って貰わない限り,挟まった私の足は救われる事はない・・・
それには,叫ぶこと! 瞬時に思いついた,けれど意外に冷静だった.
2003年 秋 ,オペラ座・シーズン初日の特別な日,
着飾った紳士・淑女の皆さんが集まってこられて,それは夢の世界だった.
大きく叫んだ効果は抜群だった!
そのマダム,びっくりされて,席をすぐに立たれ,私の足は救われたのでした.
.
「サヴァ? サヴァ?」周りのフランス人たちが,驚かれ集まってこられる・・・.
異口同音に「サヴァ?」(Ça va ?)
サヴァって何? みんな,何を言ってるの〜〜〜??
まさか・・サカナのサバじゃ,ないよね・・本気で思ったのです
(痛いのに,更なる試練が待っていました )
効果抜群すぎて,集め過ぎたフランス人のフランス語・・
収集がつかない!
どうしたらいいのーー!
「サヴァ! ウイ,サヴァ,メルシー」 だれ?・・(私の声)
集まったフランス人に娘が,何やら喋っていて,彼らは自分達の席に戻っていく・・
痛くて誰の顔も見ていない,が聞こえてきたのでした.
ようやく静かになったので,すぐに尋ねました.
私:「サヴァって,どういう意味? どうしてフランス語を知ってるの?」
娘:「高校の第二外国語でさ,授業があって殆ど忘れたけど,サヴァだけは覚えてたんよ .
大丈夫っていう意味だけど,カンタン! 」
・・・娘をただ尊敬するだけで,自助能力を持たない母親 😅
え!そんな授業があったの? すごーい,フランス語が分かるんだ
音楽が鳴り出し,いよいよバレーが始まった
が,夜の8時から始まって3時間!
私は,ひたすら痛みに耐えておりました,・・・
こんな事があって,公演は終わっていきました.
帰りが遅いので,心配のあまり探しにきた夫に,
「お母さんね,大変だったんよ〜,・・・」
ホテルに戻り,待っていた息子にも笑われ,
「オペラ座事件!」と,帰国後もしばらく笑いのタネだったお話でした
留学の時だけでなく,トラブルは始まっていたのですねー.
★ 夫と私が行く予定で買ったチケット2枚.
当日の3時間前,娘が突然,
「わたしが!行くわ.クラシックを全く知らない人が行くより,
値打ちあるでしょ」
上等のチケットは泣く泣く父親から娘に渡ったのです,が!
もし,あのままだったら・・・コワくて想像できません
甘やかし過ぎだ〜! と思っていたのですが・・・
2003年 秋,私はフランス語の abcも知らない「典型的な日本人観光客のひとり」でした.
最後までお読みいただいてありがとうございます.
どうぞ,お天気に気を付けてお過ごしになって下さい.