★本日、小説短編集新作の出版販売を開始しました。 | 《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ贈る小説》間々田陽紀の世界

《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ贈る小説》間々田陽紀の世界

■好きな音楽、好きな映画、好きなサッカー、好きなモータースポーツなどをちりばめながら、気ままに小説(253作品)・作詞(506作品)を創作しています。ブログも創作も《Evergreen》な風景を描ければと思っています。

★Kindle 本 小説(amazon)販売中!

★本日、小説短編集 【96】いつか街で会ったなら(原稿用紙30枚) の出版販売を開始しました。

10月26(土)と27日(日)の2日間、無料で読めるので、よかったら読んでみてください。

~Kindle 本 小説(amazon)100円で販売中!


※ 作太が高校までを過ごした鹿児島の街へ戻って来たのは3年ぶりの事だった。3年前東京の大学を卒業して就職が決まったこともあって、作太は鹿児島の自分の部屋に残していた私物の処分のために立ち寄った。たった3年前の事だったのに、その時部屋に残っていたガラクタを粗大ごみと一緒に全て処分したことだけしか思い出せなかった。
 
 その時久しぶりの実家だったのに、作太は空っぽになった高校生まで過ごした自分の部屋に一切感傷的な気分になることもなく鹿児島へ着いた2日後には東京に戻っていた。もう少しゆっくりしていくようにとの両親からの言葉に対して、新しい社会人生活の準備で忙しいからと言い残して実家を後にしたのだった。
 
 18年間も過ごした鹿児島だったが、久しぶりに帰って来たのに特段会いたいと思う顔などは浮かんで来なかった。東京での大学生活が始まったばかりの時に、作太はスマホを紛失していた。古いスマホは下取りに出していたし日頃からデータのバックアップなどもしていなかった作太は、高校までの18年間のデータを全て失っていた。
 
 もっともたった一人の電話番号とメアドをのぞいては、そのことを作太は今でも惜しいとは思っていなかった。その一人でさえ連絡先が分かっていたとしても、大学時代に自分から連絡したどうか今でも作太には分からなかった。その一人とは日葵のことだった。
 
 日葵は同じ高校で3年生の時に同じクラスになった同級生だった。思えばそれまでの作太にとって唯一の女性を強く意識した異性だった。もっともそんな作太の日葵への想いを当時の日葵が、どんな気持ちで受け入れてくれていたかは今でもはっきりとしないままだった。
 
 俗な言葉で言えば日葵に避けられたと言う記憶はなかった。その反面作太の方から積極的に、日葵と同じ風景を見ていたいと言う想いを伝えた記憶もなかった。言ってみれば作太の中だけで恋?の空回りを繰り返していただけだったかもしれなかった・・・。


96000000.jpeg