『聲の形』 | テツヲのブログ

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酔いどれ公務員の妄言日記

今年は、いつになくアニメ映画を観に行った気がしますが、これはその中でも傑作だったと思います。『聲の形』。

 

原作は、雑誌掲載の時にすべて読んでいますが、読み切りで最初に目にしたときのインパクトは凄まじいものがありました。

 

ガキ大将の石田将也は、聴覚障害の転校生西宮硝子へ苛立ちを感じ、いたずらを繰り返す。しかしそれは、クラスの誰もが感じながらも表せない感情だった。筆談用のノートを池に落とし、補聴器を取り上げ、窓の外に投げた。しかし、補聴器がいくつもなくなることが問題となり、しかもそれが高額であることで、将也はクラスから孤立する。将也とともに硝子をいじめていたはずの仲間は、将也の教科書に落書きをし、将也を池に突き落とす。中学、高校と進級する将也は、いつしか人の顔が見られなくなっていたが、公民館の手話講座で再会した硝子に、将也は手話で「友達になれるかな?」と問いかける…。

 

この作品の素晴らしいところは、その構成。
原作で冗長だった部分を的確にカットして、見せるべき部分は丁寧に描く。
そのブラッシュアップにより、2時間の映像作品としての質が劇的に高まっている。
原作にあった映画作りのくだりとかをスッパリ切ったのは正解だと思う。
硝子の妹の結弦も硝子を守るというポジションがはっきりしていて、そのイケメンぶり(?)が際立っている。

 

将也から見る世界では相貌失認のように他人の顔にバツ印が付けられるが、それは原作を踏襲しており、ラストシーンのカタルシスにつながる。
誰もが他人に「赦される」ことを願うが、そのためにはまず他人を「赦す」ことが必要なのだというテーマを感じる。
死(特に自殺)がストーリーの重要な柱になっているが、自殺では誰も救われないことを、この作品は強く訴えている。
甘いエピソードばかりではなく、むしろ友人同士が傷付け合うドロドロした話なのにもかかわらず、誰もが自分に誠実なので、感情移入は妨げられず、むしろ誰でも誰かに共感してしまう。
しかし、不自然なまでに「父親」不在のストーリーは、最近のフィクションの流行りなのかな?

 

映像は動きも含めて文句なく、音楽も声優もマイナス要素は皆無。
であるからこそ、エンディングのaikoはどうにもそぐわない感じがして、もったいなかった。この作品には合ってないと思う。

久しぶりに胸が熱くなる良作に出会えました。

 

評価金額:1700円