なんだかものすごく評判がよいので、ダメモトで新規オープンのイオンシネマ長久手に行ってみたら、すんなり観られました。
でもって、劇場で観られて、ホントによかった。『この世界の片隅に』。
ストーリーは、魅力が伝えられないので割愛。
戦時中の広島と呉を舞台に、おっとりポジティブに生きる北条すずという女性を描いた物語。
何がいいってこの映画はすべてがいいところばっかりなんだけど、まずは声優ののん(能年玲奈)が素晴らしかった。
トーンやリズムが、映像とキャラクターにピッタリでした。
ちなみにこの映像、イヤミはないけど癖があって、個人的には「日本昔話」を髣髴とさせます。
モノがない中でも、好きな絵を描きながら、毎日ほんわか楽しく過ごしているすずは、その生活を見ているだけで楽しくなります。
しかし、空襲のたびに防空壕に籠もり、優等生の兄が亡くなってしまう状況に、戦争という現実が否応なくのしかかります。
そして後半の姪の晴美と爆撃に遭うシーンと、「はだしのゲン」を思い出させる原爆投下後のシーン。
決して微笑ましいだけではなく、しっかり時代考証がなされた、ずっしりしたリアリティが作品全体を締めています。
泣かせようとするストーリーではないのに、後半はずっと胸が熱くなっていました。中でも、なぜだか子どもの死で慟哭する親のシーンで胸が詰まりました。ストーリーの本質とはいえないシーンなのに。
自分が親になったからでしょうか。それとも単に年を取ったからでしょうか。今まで映画を観て涙を流すことなんてなかったのに、涙腺が緩くなっている自分に驚かされました。
そしてとにかく、「ありがとう。この世界の片隅に、うちを見つけてくれて」という台詞の素晴らしさに感激しました。
もちろん戦争を賛美する映画ではないし、だからといって声高に反戦を訴える作品ではないのに、観る者に戦争の虚しさと怖さを植え付けます。
子どもが大きくなったらこの映画、ゆっくり観せたいな~。