・コミックス28~29巻<”「いま支度する じい」”から”「あんなやつのことなんか…!」”まで>

真澄30歳、マヤ19歳

 

「気になってマヤちゃん?」

 

真澄の見合い後、マヤは割と早い段階で真澄と遭遇します。美しい女性をエスコートしながら優し気な笑顔を浮かべる真澄を街角で見かけるのです。プラネタデート後初めて真澄の顔を見るわけですが、いつもと様子の違う真澄にマヤは戸惑います。(ちらっとしかみえなかったけれど…きれいなかんじの女の人だった…なんだろあの冷血仕事虫がなんだかやさしそうな顔して…女優やタレントにはあんな顔しないし…)不思議そうな眼差しのマヤを、背後で真澄に書類を届けに来た水城が見ていました。「気になってマヤちゃん?」マヤは水城に真澄と一緒にいた人は誰なのかと尋ねます。水城は真澄の本心を知っている数少ない人間。真澄が本心を偽って見合いを受け入れたのが不本意なのでしょう。腹に一物があるような表情を浮かべていますが、マヤも知っておいたほうがいいと考えたのか、冷静に答えます。「真澄さまお見合いをなさったのよ 今の方はそのお相手

 

聞かされた事実に、マヤは雷に打たれたかのように驚き白目をむいています。(お見合い…!あのひとがお見合い…!結婚するかもしれない。あの速水さんが…!それであの笑顔…!あの笑顔…!)世界が終わったかのような衝撃をうけて立ち尽くすマヤ。この雷が走った背景はプラネタデートで真澄が受けたものと同じですよね。マヤの驚きぶりにさすがの水城も何か感づいた模様。マヤが里美茂に恋してる事をマヤのそぶりだけで見抜いた事のある水城は、非常に鋭い感性の持ち主なのです。今のマヤの態度だけでマヤ自身も知りえないマヤの心の内が読めてしまったのかもしれません。「あの…あのそれでもうお決まりなんですかあのひとと…」震える声で尋ねるマヤ。「いいえまだよ でもきっとそうなるでしょうね。この結婚はあの方と大都芸能にとってもプラスになるものだし、会長であるお義父さまが大乗り気なの

 

水城が去った後も、マヤは寒気が収まらない様子。(お見合い…あの冷血仕事虫が…!結婚ですって!?どうしたんだろ…あたしヘンだ…なんだか…心の中が突然空洞になったみたい…どうしたのあたしいったい どうしたのよー!!)マヤの背景はまるで寒風吹きすさぶオリゲルドの白の牢獄みたいになってしまいました。寒そうに両腕を抱えるマヤ。さてマヤは、どうしてしまったのでしょうか。

 

真澄のような立場で三十路近くの年齢なら恋人のひとりやふたりいても当然ですし、結婚するのも自然な流れです。しかしマヤは納得いかない様子。マヤは"あの冷血仕事虫が結婚だなんて"と、いう言い方をしています。マヤからすると速水真澄とは、どんな酷いことも、仕事のためならなんでもやるあくどい人物なのです。事実自分は彼の所業を目の前で見てきたし、されてきたし、ずいぶん泣かされても来た。そんな人間が女性に愛されるわけがない、女性を愛するわけがない、結婚だなんてありえない!!…と、こんな風に真澄を低く見ていたのではないでしょうか。

ところが真澄は女性に向かってマヤが見たこともないような優し気な笑顔を浮かべている。マヤは一度も真澄からあのような笑顔を向けられた事がないのです。彼にはマヤの知らない別の顔があって、本当は女性に優しくできる人間なのだと、マヤは初めて思い知ったのだと思います。

 

・「なにかおれにいいたいことがあるのか?」

 

この後マヤは、新しい芝居の稽古に入り、話の本筋は本来の演劇マンガの方に戻っていきます。役に集中することと、相手役がかつてマヤに告白したことのある桜小路であることもあって戸惑ったりと、マヤはまた真澄のことなどすっかり忘れてしまっています。

これまで真澄は、口実を作って積極的にマヤに会う機会を設けてきましたが、見合い以降(プラネタデート以降)はその回数は減っています。次のアクションはマヤからでした。真澄がお見合いをしていつも寄り添う女性と婚約間近であることを、週刊誌の記事で知らされるのです。"週刊誌で知る"というのが、この時のマヤと真澄の立ち位置がいかに遠いかよく分かりますね。週刊誌を読んだマヤの心は嵐のように吹き荒れます。

(あのひとだ…!写真ではよくわからないけど きっと前にみかけたあのひとだわ お見合いしたっていう… うそみたいあの冷血仕事虫がデートなんてひとなみなことするなんて…そうよあんな冷たい男…やさしい顔してた…あのとき…速水さん…うそだ!あのひとが本気で恋人つくったり結婚したりするわけないわ!お見合いだってきっとみせかけの…へんだ…あたしヘンだ…なんであんなやつのことがこんなに気にかかるの いつだってあたしのことからかっていじめてばかりで…どうしたんだろあたし なんでこんなにいらだしいんだろ なんだかおちつかない…!なんでよ…!)

週刊誌で真澄の近況を知った稽古の帰り道、気が気でなくなり、ついにマヤは電話ボックスから大都芸能に電話をしてしまいます。交換手が繋いでいる間、マヤはどうしようもなく落ち着かない様子。(どうしようあたし…!電話しちゃった 速水さんが出たらなんていおう なにをはなそう…どうしよう…!)思い立ったら、後先考えずに、行動が先に出てしまうところがいかにもマヤらしい。

 

電話の相手がマヤだと知ると、真澄は電話の向こうで『ー!』と、反応していますのでかなり吃驚したのでしょう。自分の事を「二度と許さないから!」とまで宣言した彼女がいったい何の用事でかけてきたのかと、(また何か傷つけられるような事を言われるのかと)身構えたのではないでしょうか。しかし当の本人は、電話をしたのはいいが、何といって切り出してよいのか分からず、予定とは違う事を話し始めます。「え…と えと…その… 月影先生の行方 なにかわかりましたか?」「ああ いやまだだ」事務的な話だったので真澄も事務的に応じます。「手がかりを調べているところだ わかりしだいきみにはしらせるよ」「…」この話が終われば、マヤは真澄と話す話題が殆どないのですよね。前回会った時は、意味不明な呼び出し方をされて一日デートまでしたのに、そんなことはまるで百年前の出来事のようだといわんばかりに忘れちゃっているのでしょうか。

 

話をつづけないマヤに「まだ他になにか?」と尋ねるこの真澄のビジネスライクなしゃべり方が、なんだか以前より距離がある感じ。「あの…あたし 今度またお芝居に出ます 「忘れられた荒野」狼少女を演ります!」と、なんとか話をつなぎます。前回、アンナ・カレーニナの劇場で、真澄が席を立とうとするマヤの手をとって必死に引き止めた事がありましたが、今回はその逆で、マヤが必死に真澄を引き止めているかのように見えるのが面白い。「狼少女…!それはいい 楽しみだな きみにはお似合いの役じゃないか 招待はしてくれるんだろうね」以前と変わらない、人を小ばかにした、そして面白そうな口調で応じる真澄。「お…おのぞみなら」いつものマヤなら「あなたが吃驚するようなリアルな狼少女を演じて見せるわ!」ぐらいの事を言いそうですが、それどころではありません。「お…おのぞみなら」などと、およそマヤらしくない返答の仕方をしています。(ほんとにいいたいことはこんなことじゃない こんなことじゃないのに…!)真澄から揶揄い口調で話しかけられると、マヤはいつも本音を言えなくなってしまうのですよね。言いたいことが言えず、だんんだんといら立ちMAXになってゆくマヤに挙動不審を感じた真澄は尋ねます。「どうした?なんだか変だなチビちゃん。なにかおれにいいたいことがあるのか?」

 

口しようと思っていた言葉を見抜かれたかのように感じたのでしょうか。マヤは真っ赤になって「いいえ!!どうかお幸せに!!」と、叫んで結局何も訊きだせないまま電話を切ってしまいました。さすがの真澄もマヤが何にイラついているのか分かりかねたようで(なんだ?いったい どうかお幸せに?どういう意味だ)と、心の中で呟いています。

 

かつてマヤは、月影の具合が悪いから先生の事を頼むと、真澄に電話をかけてお願いしたことがありましたが、マヤの方から真澄に電話するのは今回二度目。この時マヤは未だ真澄に対して警戒感を緩めていないにも関わらず、真澄自身の事を尋ねるため、それだけのために電話をしているのです。ものすごい心境の変化、ものすごい進歩ですよね~。プラネタデートのあの夜、あの時のレストランで、たとえ真澄がマヤに決死の告白ができたとしても、マヤ心境はここまで至らなかったでしょう。

かつて作者は里美茂の存在で、真澄の本心を引き出したように、今度は見合い相手という結婚を前提とした女性をマヤの目の前に用意して同じことをしました。その点では、マヤは今回非常に焦っていますから、予想通りの効果があったと言えるでしょう。しかしそうはいっても、真澄の場合はマヤの時より事態はもっと深刻で、里美とは大きく事情が違っています。里美とマヤは若いふたりの清い交際で将来を約束するものではありませんでしたが、真澄は、マヤに対する気持ちを完全に蓋をし、結婚をほぼ覚悟して、ガチな見合いをしているのです。

 

(ばかなことしちゃった…!あたしったら電話でいったいなにをきこうとしていたの?お見合いしたってホントですか?週刊誌のあの記事はホントですか?もしホントだったとしてもそれがどうしたっていうの?どうでもいいじゃない あんなやつのことなんか…!あんなやつのことなんか…!)

 

マヤさん、"あんなやつのことなんか"なんて言っていてよいのでしょうか?と、全国の「ガラかめ」ファンからのクレームの声が聞こえそうです。今後、残念なことに、この状態がまだまだ続いてゆくことになります。そればかりか、マヤが自分の気持ちに気づかないばっかりに、真澄は益々見合い相手との結婚に没入してゆくことになるのです。

 

 

・コミックス28巻<”真実がみえない…速水さん…”から”「いま支度する じい」”まで>

真澄30歳、マヤ19歳

 

コミックス28巻のプラネタデート以降、話の流れは、真澄がお見合いをする→真澄の見合いを知ったマヤがイラつく→イラつくマヤが嫉妬しているのではと真澄が疑う…と、いう流れになっています。しかしマヤは真澄の見合いに気をとられつつも、「紅天女」の獲得にかかわる舞台の稽古が始まるとそちらに気をとられて、真澄のことは殆ど思い出しません。一方真澄は、マヤに賞を獲らせるために、あれやこれやと手を変え品を変え、動き回りますが、しじゅうマヤの事を考えている割には、マヤが本当に自分に嫉妬しているのか確かめようとしないのですよね。匿名でマヤを呼び出し強引にデートに連れまわし、死ぬ気になって「何か」を打ち明けようとまでしたのだから、再トライしてもよかったんじゃないでしょうか?

イラつく自分の気持ちが何なのか考えないマヤ、マヤの本心を探ろうとしない真澄、という構図が紫のバラの人バレまでずっと続きますので、二人の進展を望んでいる読者としては正直キツい展開です。

 

・野生のジェーンにハマるマヤ

 

「紅天女」を目指すマヤが選んだ最後の芝居は、野生の狼に育てられた狼少女の役でした。黒沼龍三から話を持ち込まれたとき、マヤは「演りたい!あたしジェーンを演りたい…!TVも映画もおオフィーリアもなにもかも捨てたっていい!あたしジェーンが演りたい…!そうよ今 わかったわ…!あたしが選ばなければならないのはあたしに一番ふさわしい役 あたしが本当に魂をうちこめる役 それなんだわ!」と、天啓をうけたかのように役に惚れこんでいます。今までマヤは、与えられた役ばかりこなしてきましたが、自分から「やりたい!」と、前向きに役を演じたいと思ったのはこれが初めかもしれません。振り返ってみると、マヤは、人間でなかったり、人間であってもちょっと天然がはいっていたり、野生化した人間を演じる事が多いですよね。ビビ、ヘレン、エリザベス、ルル、パック、ジェーン…阿古夜も女神なので、半分人間ではないですし。そんな"自然"な存在、または"創造"された存在を演じる事がマヤは得意で、そんなマヤに真澄は惚れているのですから、ジェーンを選んだマヤの選択は間違いなかったのでしょう。

 

しかし「狼少女」の後は「紅天女」が待っています。阿古夜は魂のかたわれである一真に恋する乙女。ライバル姫川亜弓は、十代でありながらロミオに熱烈に恋するジュリエットを演じて芸術大賞まで獲得しているというのに、(ジュリエット役はジュリエットの乳母の年齢にならなければ上手にこなすことはできないと言われている)マヤは恋愛とは程遠い役ばかりにのめり込んでいます。コミックス44巻"ふたりの阿古夜"の章で、マヤは一真に恋する演技が上手くできず、黒沼に「おまえは役者だ。ここ(頭を指さして)を使え。想像力だ。おまえならできるはずだ。(中略)観客はおまえの演技を見てああ魂のかたわれってほんとにいるだ…と思うんだ」と、注意を受けています。黒沼は恋愛経験が少なくとも"想像力"があれば上手に演じられるといいたかったのだと思いますが、稽古の半ばまでやってきて、今更"恋する女"の演技指導?一方亜弓は本気で男性を好きになった事はなくても、自分に恋する異性の眼差しを自主的によく観察しています。逆にマヤの方は桜小路や里美茂の存在があったにも関わらず、その貴重な体験を役に生かせていない。そんな彼女が、恋する女とは程遠い"少女"の役ばかり選んでいていいのでしょうか?真澄がそんなマヤに希望が持てなくなってしまったのも、個人的に頷けてしまうのですが…

 

・見合い直前の真澄の腹の中は?

 

マヤが「狼少女」の役に気を取られている間、裏では大事な事が着々と進められていました。真澄の見合いです。「どうだ真澄決心はついたか?見合いの日取りをきめていいな」と念を押す英介に真澄は「ええ お義父さん」というシーンが、結構大きく描かれているのが印象的です。これは真澄が見も知らない鷹宮の娘との結婚を決断、宣言しているシーンなのだと思います。なぜ会ってもいない相手と早々に結婚を決めなければならないのでしょう?お見合いというのは会って双方の合意があってから決めるものではないのでしょうか?

 

では話をずっと後の方に移して検証してみましょう。コミックス48巻"めぐりあう魂"の章で、結婚を考え直してほしいという真澄に紫織は「わたくしとの結婚を取り止めるということは 今鷹宮グループと進めている大型プロジェクトの企画も取りやめるということですわよ…!役員としての経営陣への参加も…将来約束されているトップの座も…!」と言っています。話の流れ的に、紫織と真澄の婚約がまとまったので、大都と鷹通とのビジネスが始まったかのように見えていますが、英介がこういった具体的な皮算用を事前に準備しておかなかったはずはありません。本当は大きな利益と会社の発展を目論む大きなプランが、(見合い以前に)最初から計画されていたのではないでしょうか。そのためには保険として紫織と真澄の結婚が必要であり、結婚の見返りとして真澄は将来の鷹通のトップの座を約束されていた。紫織と真澄の結婚は、両家が絡むビジネスが大前提として存在しており、この見合いを受けた時点で、結婚が成立する類のものだったのではないでしょうか。

 

そうはいっても、見合い当日の真澄の態度ははっきりしませんね。じいやに「早くお支度を」と急かされて着る服まで準備されているのに、椅子に座って物思いにふけりタバコをふかす真澄は何を考えているのでしょうかねえ。まゆを顰めいかにも不服そう。彼はマヤの件を除いてでも、色んな意味でこの結婚が気に食わないのかもしれません。なにせ相手は大都芸能の速水真澄より格上のお嬢様。今までワンマン社長で通してきた真澄には、つらいところなのでしょう。そしてそんな気に食わない相手と見合い→結婚しなきゃならないなんて、なんでこの速水真澄とあろうものが、そんな(愛してもいない相手と)結婚をしなきゃならんのだ。これもそもそもマヤが俺を拒絶したからだ、俺の心を傷つけたからだ!本当はこんな結婚、俺はするはずなかったんだ!と、心の中で、逆切れしているのかもしれません。

 

…とういのがわたしの個人的な想像ですが、作者がいいたかったのは本当のところは、(待つつもりでいた…待ちつづけていようと思った。大人になるのを…けれど真澄 それでどうなるというのか あの少女はけっしておれのやったことを許しはしない…憎しみの火が消えることはないだろう これ以上どうなるというのか…?正直で素直で信じられないほどの情熱を秘めている あの小さな身体 あんな少女ははじめただ あの少女になにかあるたびにどうしようもないほど惹かれている自分を知る…このおれが…!なんてことだ だが どうなるというのだ?真澄 おれは一生影でいるしかない…影でるしか…!)と、こんな感じだったのだと思います

 

この頃の真澄は本当に不憫ですね。不憫だけど、この時期のマヤの真澄をサボっている様子をみれば、仕方ないかもしれませんねえ。この先も顔がニヤけそうなドキドキする場面が少ないのが正直残念ですが、ふたりがくっつかず、真澄がマヤを諦めてお見合い相手と付き合っている構図は、真澄の不憫さが全面に強調されて、彼の壊れっぷりを楽しむことができます。(* ´艸`)と、同時に主役:マヤ、準主役:亜弓 真澄 月影、といったこれまでの構図が、主役:マヤ&真澄と、だんだんとシフトしていっている移行期間にも見えます。真澄もまた「ガラスの仮面」をかぶっている主人公のひとりとして、彼を中心に進展するよう話が進化していっているのです。それゆえ真澄と関わる人物、英介や紫織の登場が増えて当然ですし、当て馬として桜小路が復活するのも、必然の流れなのでしょう。

 

真澄は諦めたようにタバコを押しつぶし、颯爽?と立ち上がります。そして「いま支度する じい」と、答えています。彼は本当に覚悟をきめたのでしょうか。

いつもご訪問下さり、ありがとうございます^^。

 

年の瀬が迫り、慌ただしくなってまいりましたが、皆様如何お過ごしでしょうか。

 

明日から毎日連続で書き溜めた分、11本ほど毎日更新の予定です。以前の続きと、ちょっと違う視点で書いたものを掲載しますので、「自分の好みとは合わない記事だわ…」と、思われるかもしれません。どうぞ暖かい目で見守ってくださいませ。

 

それでは、明日より更新致します。

お楽しみ頂く事できましたら幸いです。

 

まみい 拝

当ブログにおいでいただきまして、ありがとうございますm(__)m

いつもご贔屓いただき、感謝申し上げます。

 

定期的な更新を続けてまいりましたが、キリのよいところまできましたので、ここで、いったん休憩に入りたいと思います。

最後に三日連続で駆け足で更新しましたが、お楽しみいただけましたでしょうか。

28巻以降、新キャラが出てきたり、旧キャラが復活したりと真澄とマヤの関係も複雑になってきゆきますよね。

またいろんな目線で書ければと思いますが、次の更新の予定は決めていません。

また書く気になりましたら、こちらでご連絡させて頂きます。

 

未だ世の中は、動きの取りづらい状況ではございますが、なんとか乗り切ってまいりたいと思います。

これからは暑い季節が続くと思われますが、皆様方の健康と幸せを、心よりお祈り申し上げます。

 

深謝。

 

「ガラスの仮面」50巻発売を待ちわびている まみい 拝

・コミックス28巻<”きょうきみをさそいだしたのは…ただ…”から”真実がみえない…速水さん…”まで>

真澄30歳、マヤ19歳

 

・速水真澄を馬面化させた北島マヤの氷の一言

 

真澄は結局、予定していた"告白"を口にすることはありませんでした。口にしなかったのに、真澄はマヤの口から死刑宣告のような恐ろしい言葉を浴びせられています。そうです、「もし先生があたしの母さんみたいなことになったら、あたし一生あなたを許さないから!」というあのセリフです。彼はレストランでも「(おれは)おそれている…この少女の反応を…はっきりとした拒絶を…」と、マヤの口から拒絶の言葉を発せられるのを恐れ、ぐずぐずと告白をためらっていました。そして間の悪い事件が勃発し、偶然とはいえ、真澄は予告なく、そのセリフを聞かされてしまったのです。

彼がその日一日ずっと恐れていたこと、それは、マヤの"はっきりとした拒絶"でした。その言葉を聞くのがイヤで、告白することを躊躇いあれこれ逡巡していたのに、何の因果か、今まさに、その言葉がマヤの口から伝えられてしまったのです。彼は、その言葉で気持ちを固めたのだろうと思います。その言葉で、"マヤを諦め見合いをする"という結論を出してしまったのだと思います。

 

・真澄の願い

 

マヤを愛する真澄にとって、マヤ対する一番の望みは、自分を許してもらう事だったのではないでしょうか。マヤの母親の件だったり、マヤが芸能界にデビューしたときの売り出し方だったり、アテネ座の件だったり、まあ、マヤに憎まれる事をしてきたあれやこれやの数々の行いは、すべてマヤのためとはいえ、マヤを傷つける事にはかわりありませんでした。愛する彼女のために、ずっと憎まれ役を進んで買ってきた真澄。何気ない風を装っていながらも、実は彼の心はずっと負担を感じていて、罪悪感でいっぱいだった。本心は、その重荷をずっと下ろしたかったのだと思います。

 

わたしは真澄はこの日、シンプルに「俺のしてきたことを許してほしい」と、言おうとしていたのかもしれないと、そんな風に感じています。

47巻のアストリア号で両想いであることを確認しあった時、真澄は開口一番マヤに言っています。「いままできみに嫌われてとばかり思っていた。憎まれていると…」マヤが真澄の事を「誤解していた」と答えると、それだけで真澄はマヤにもう何も尋ねないんですね。え、もうちょっと何か質問してもいいんじゃないの?「いつからだ?」って訊いてもマヤはろくに答えていなんだから(ちゃんと答えなよ、マヤ…)、いつから自分を好きだったのか、どんな気持ちの変遷があったのか、もっと詳しく訊きだしてもよかったんじゃ、、、とも思うのですが、真澄は感極まっているのか「驚かせてすまなかった」と言うだけで、あまり何も尋ねないのですよね。つまり真澄はマヤから、好かれている=憎まれていない、イヤがられていない状況である事を知り、それだけでものすごく満足したんじゃないかと思うのです。(そればかりでなく、「おれのことも「冷血漢」と呼ぶな!「ゲジゲジ」とも呼ぶな!「冷血仕事虫」もだ…それから「人でなし」に「疫病神」「イヤミ虫」もだ!」と、真澄はマヤに念を押している。これらの呼び名で呼ばれることに相当傷ついていたのでは…)それだけ真澄にとって、マヤから「許してもらえないこと」「冷血漢だと思われること」は、最大の重荷だったんじゃないでしょうか。わたしは、真澄は許されたかったし、もう二度と憎まれるような事もしたくなかったのだと、これらのシーンからそう思うのです。

 

・真実が見えない

 

車のドアに手をかけ「きょうきみをさそいだしのは…ただ…」と言う真澄は、まるでマヤを見納めるような淋しそうな眼つきです。彼はこの時点でマヤの事を諦めています。そして自分がお見合いをすること、おそらく見合い相手と結婚しなければならない事を覚悟していたと思います。しかし彼は、マヤとの最初で最後の(デートの)機会であるこの時に、言い残したかった事を口にしようとしていました。(なにをいおうとしたのですか?速水さん、ただ…それから…?)マヤは、真澄の言葉の続きを待ちますが彼は答えません。その後真澄は紫織との関係を進めます。もはや真澄はマヤとデートする機会など、マヤが自分を許さないのと同じぐらいに、あるわけないと思っていたかもしれません。しかし予想をはずれて、一年半後に真澄は再びマヤとデートすることになります。

 

コミックス47巻のアストリア号で鉢合わせしたとき、マヤは自分を子ども扱いする真澄にこう言っています。「あたしもう大人です!お酒だって飲めるんです!結婚だってできるんですから…!」真澄は白目になって固まっています。「いつかは結婚するんだなきみも誰かと」と言う真澄に、「はい、いつかは…あなたが紫織さんと結婚するように…」と答えるマヤ。真澄は再び白目になって言うのです。「そうだな…ではきみとデートできるのも今だけだ…」

 

マヤでない女性と結婚する事を決意した真澄と、いずれ真澄でない違う男性と結婚するかもしれないマヤ、という構図は、28巻"紫の影"の章と47巻"めぐりあう魂"で行われた、このふたつのデートシーンとてもよく似ています。

お祭りの飾りを渡した後、去り際に真澄は、ただ一言マヤにこう言いたかったのではないのかとわたしは想像します。

「俺は近々大都にとって有益な女性と見合いをする。おそらくその女性と結婚することになるだろう。結婚する前に、チビちゃん、君とデートしたかったんだ…」

 

しかし真澄は何も言わずにここを去ってしまいました。彼のプライドのせいでしょうか?それとも大都芸能の社長としての立場がそうさせていたのでしょうか?それとも1パーセントの可能性を残しておきたかったのでしょうか?

(満天の星…東京ののこの空に…満天の星の群が輝いているのに…スモッグや地上の灯りでみえない。ろくに…真実がみえない…速水さん…)と、マヤもまた真澄の心が見えないようです。いやアンタがもっと真澄に優しくしてあげていたら、彼は口を割ったかもしれないのに…今更見えないだの、なんだのいっても遅いんだよ!…と、読者はツッコミたくなるところですが、この時のマヤの態度がブーメランのように跳ね返り、彼女は自らの行いのツケを支払う時を迎えます。おなじみの社務所と、真澄の婚約式のシーンです。

しかしながら、勇気を振り絞ってデートまで設定したのに最後まで口を割らなかった真澄も同じで、これ以降彼は、マヤ以上に苦しむことになります。早くヘタレを返上し…じゃなかった、この時の苦難を乗り切って、いつか彼も幸せをつかんでほしいものですが、果たしてうまくいくでしょうか。彼が幸せになる(であろう)姿は50巻以降に描かれることになると、強く信じているのですが…