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複雑系③ ~将棋と複雑系~

前回はゲーム理論をオセロを例にしてみていった。

別にゲームについて語るのが目的ではないのだが、

後々つながっていくことが多いのでもうちょっとみていく。

 

今回はコンピューターと人間の考え方の違いについて

将棋を例にしてみていく。

 

ある局面があった場合、コンピューターならどうするだろうか?

100通りの方法があれば、それについてすべて等しく取り扱う。

たとえば、5手先まで読む場合、仮に100手づつであれば

100×100×100×100×100=10000000000

100億通りの手を読むことになる。

 

人間のほうはどうだろうか?

1つの局面で主に読むのは2~3手ほど、

仮に3手として、5手先まで読むとすると

3×3×3×3×3=243

243通りとなるがこれくらいでも大変だろう。

ここで3通りの手というのはよさそうな手を選んできている。

これは個人によっても違うし、経験、性格、気分なんかによっても

かなり変わってくる。

 

ここで考えてほしいのはコンピューターの場合は基本的にはありえる

分岐についてはすべて等しく取り扱っているということである。

対して、人間のほうは一度に多くの手を読むのは難しいので

好きな手から読んでいくことが多い。要は優先順位をつけている。

あまりよくなさそうな手や嫌いな変化については省いたりすることも多い。

一方、コンピューターの場合だとこの手は好きだから深くまで読むとか、

この変化は面白くないからあまり読まないとか

優先順位をつけたりすることはない。

一見、無駄に見えるような手順であっても

一生懸命計算しているのである。

 

ここで将棋の初手から終了までの手順がすべてでx通りあるとする。

どの手順についても同じ確率で現れるとするならば、

1/xということになる。この場合の確率を客観的確率と呼ぶことがある。

別に客観的だからえらいというわけでもないのだが、

要はコンピューターが思考するように確率をとらえた場合の話である。

ただ、将棋に関しては統計をとってみると分かるのだろうが、

明らかに人間があまり指さない手があり、 

定跡形など出てくる頻度が多いものもあるので、

客観的確率と同じ確率で出てくるとは限らない。

こういった人間の意志や嗜好をとりいれたものを主観的確率という。

別にコンピュータがすごいということを言いたいわけではないのだが、

このように思考方法はかなり違ってくるのである。

 

ちなみにコンピューターの考え方だと10手や20手ほど進んだところを

計算するだけでも天文学的な計算をしないといけないので

コンピューターといえども大変なのである。

対して人間の場合、あらかじめ捨てる手順があるので

読みとしてはかなり省けたりする。実際のところはプロといえども

極端に多くの手を読んでいるわけではない。

経験によって省いている部分が多いのである。

 

ここで将棋の場合だと人間とコンピューターで

得意な局面と苦手な局面がはっきりしている。

終盤のように王様が詰むか詰まないかという局面だと

コンピューターのほうが圧倒的に有利である。

答えがはっきりしているところはコンピューターが強い。

筆者なんかも中盤で多少よくても、終盤でコンピューターに

逆転されることなんてしょっちゅうである。

序盤、中盤だと人間のほうが有利である。

王様が詰む、詰まないというのがまだ全然見えない局面、

駒の損得や王様の囲いの堅さなど様々なものを考えて、

形勢を判断するというのはコンピューターは苦手である。

将棋では大局観というのだが、コンピューターには

大局をみるという感覚はあまりないように思える。

だからこそ、人間のように感情が読みにくいっていうのも

あるのだろうが・・・

 

次回はゲーム理論から複雑系の本質について

もうちょっとつっこんでいきたいと思う。

 

 

 

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複雑系② ~ゲームと複雑系~

前回 、複雑系とはルールが簡単で変化が複雑である

システム(ゲーム)だと定義した。

 

今回は具体的なケースを見ていきたいと思う。

 

まずは分かりやすいところでオセロについて考えてみる。

実はオセロはコンピューターで全ての変化について

解析されており、後手必勝のゲームである。

ここで後手必勝とは先手がどんな手を指してきても、

後手が最善手を指し続ければ必ず勝てるという意味である。

ちなみにここでいう最善手とは一種類とは限らない。

 

ここ20年ほどコンピューターの進歩はすさまじく、とうとう

オセロについては解析が終わってしまった。

後手必勝とは言っても、変化は一本道ではなく、

とうてい人間の頭で覚えられるようなものではないので

安心してゲームを楽しんでいただきたい。

オセロについてはコンピューターに最強の座を明け渡してしまったが、

しょせんゲームは人間が楽しむものなので

人間同士での対戦の楽しさは変わらないと思う。

あと個人的に知りたいのは勝負が終わったときに

白のほうにいくつ石をたしてあげたら先手と後手が公平に

なるかということである。

興味がある人は研究してみてください。

 

将棋、囲碁、チェスなどのゲームが先手必勝なのか、

後手必勝なのか、それともどちらでもないのか、

そのあたりを調べるのがひとつのテーマである。

囲碁なんかだと陣取り合戦という特徴からして

先手が有利であると推測できる。

将棋だとプロの公式戦の統計を調べてみると

先手のほうがわずかながら勝率がいいのだが、

昨年はプロの公式戦では後手の勝率がよかった。

将棋については全て解析が終わらないと

分からないだろうと思う。

 

長くなりそうなので次回 に続く。

 

 

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複雑系① ~複雑系とは何か?~

今回は複雑系について。

 

ここ10年ほど複雑系という言葉をよく聞くようになったが、

分かりにくいと思っている人も多いので今回はゲーム理論と

絡めて定義していく。

 

以前、新聞で複雑系について、「複雑な世界を複雑な

ものとしてみる」とか書いてあったが、全く違うので

勘違いしている人も多いと思う。

 

そもそも、複雑な世界をそのまま受け入れても、

何も分からないだろうし、それだと学問にならないんで

簡単に定義する。

 

複雑系はよくゲーム理論と一緒に語られることが多いが、

ここでもゲーム理論を使って考える。

ここで、ゲームとはルールが規定されているものと定義する。

この場合、TVゲーム、囲碁、将棋、スポーツなどあらゆる

ものを含む。研究対象としては勝負がつくものが対象になる

ことが多いが、勝負を競わないものも含まれる。

 

 

次にゲームの種類を以下の4種類に分類する。

 

①ルールが簡単で、変化が少ないもの。

②ルールが簡単で、変化が多いもの。

③ルールが複雑で、変化が少ないもの。

④ルールが複雑で、変化が多いもの。

 

 

以上4つのうち、複雑系の研究対象になるものは②である。

ここでルールが簡単だとか、変化が多いというのが主観的で

分かりにくいので①からみていく。

 

①の例としてはよく小学校のときに遊んだことのある人も

多いと思うのだが、○×ゲームをとりあげる。

○×ゲームは3×3の枡に先手と後手が交互に○と×をつけていき、

先に縦、横、斜めのいずれか一列をそろえたら勝ちである。

このゲーム、ちょっと考えてみるとどんなときに先手が勝つのか、

どんなときに引き分けになるのか分かってしまう。

ルールが簡単で変化も少ないので①に該当する。

ちなみにこのゲームの場合、先手・後手ともに最善の手を

指していくと、引き分けになる。

こういったゲームなんかは小学生ぐらいだと熱心に遊ぶかも

しれないが、ちょっとしたこつに気がつけば勝つ場合、負ける場合が

分かってしまうほど変化が少ないのですぐに飽きてしまうことが多い。

 

②がいわゆる複雑系である。また、ルールが簡単であり、

変化が複雑であるという特徴は優れたゲームによくみられる特徴である。

例をあげると、将棋や囲碁など、ルールが比較的簡単なのに対して、

変化は多様なゲームなどが複雑系にあたる。

ゲームは基本的には人間がプレイヤーになるんで、簡単で覚えやすい

ほうがいい。ただし、変化も少ないとすぐに飽きてしまうので、

変化は多いほうがゲームとしては優秀である。

 

 

③ルールが複雑で、変化が少ないもの。

これも具体的な例はなかなか思い浮かばないのだが、

けっこうありそうなものである。せっかく複雑なルールを

覚えても変化が少なければゲームとして深みもなく

あまり面白みがない。

 

④ルールが複雑で、変化が多いもの。

ルールが複雑なので変化が多くてもあたり前すぎる。

一部のマニアには受けるかもしれないが、

ルールが複雑だと競技人口も増えず、技術も上がらない。

そもそも、継承することですら困難だろう。

所詮、ゲームは人間がするものなので、ルールは簡便な

ほうが好ましい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここでルールが簡単であるとか、複雑であるとかは直感的で

 

 

 

 

分かりやすいのだが、具体的にどれくらいだと簡単で、

どれくらい変化があれば多いのかとかは規定されていない。

ただ、他にうまい定義の仕方もないのでこんな感じの定義に

なってしまった。他にもいろいろな複雑系の定義の仕方があるのだが、

これが一番直感的にわかりやすいだろうと思う。

ちなみに数学なんかで定義の仕方は自由である。

定義によって、公理系の広がり方が違ってくるので、

公理系が広がっていくような定義をすれば、優れた定義であると

いうことができる。定義をするのは自由であるので簡単そうだが、

本質をついていないと公理系が広がらずにすぐに行き詰ってしまう。

複雑系はまだできてから30年ほどしか経っておらず、

分かってないことも多いので面白い分野だと思う。

次回はもうちょっと詳しく複雑系を見ていこう。

 

 

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