皆さん、こんにちは。 夜は虫の鳴き声が秋を感じさせます。今年の夏も終わりましたね。皆さんにとってどんな夏でしたでしょうか。
さて、今回の院長ブログも治療終了のご報告です。
38歳、女性、受け口と凸凹を主訴に来院されました。以前からご自分の歯並びが気になっておられたようですが、お嬢さんが当院へ通院するようになり、やってみようと決心されたというわけです。
下段にある初診時の顔写真でもわかるように、下顎が大きく前方に位置する骨格性の下顎前突に加え、左側への偏位も併せ持っていました。骨格を是正するには、外科的手術による解決方法もあります。
ただし全身麻酔による手術で、入院期間も必要で、健康な体にメスを入れるわけですから、術後もそれなりに辛い期間は覚悟しなければなりません。
初診時、その手段をお勧めしましたが、手術による骨格の改善は望まない。歯の移動だけで治してほしいとのご希望でしたので、矯正治療だけで行う治療のリスク、限界などを説明、納得していただき矯正治療を開始しました。
歯のサイズは大きく、スペース不足で凸凹がいたるところに認められました。また上下の正中線は下顎が左に2ミリほどずれています。骨格の左側へのズレにあわせて、歯も左下の犬歯や小臼歯大臼歯にかけては、反対咬合です。このズレを矯正治療だけで治すのは難易度が高いのです。
右上の第二小臼歯は前後の歯に挟まれて、十分に萌出できていない状態でした。また左上の2番目の前歯は、大きく内側転位していました。下顎は前歯部に凸凹が集中している状態でした。
パノラマレントゲン写真です。凸凹に伴う歯の乱れは認められますが、根の問題などはありませんでした。親知らずが3本確認できました。
左の写真は正面からのレントゲン写真ですが、目と鼻の真ん中から垂直なラインを引くと、下顎は左にズレているのがわかります。右写真の横顔のレントゲン写真でも、下顎骨が上顎骨と比較すると、前後的にも垂直的にも大きいことが一見しただけでわかります。
治療方針は、ひっかかっている右上5番と左上4番を、下顎は両側4番の抜歯を行い、下顎にJフックヘッドギアを使用していただくこととしました。途中で下顎の後方移動のために下顎両側親知らずの抜歯も追加で行いました。
治療期間は2年8カ月でした。以下に治療前後の写真を供覧します。
治療前 治療後
正面からのお顔の写真です。手術は行わないので、残念ながら骨格のズレはそのままです。
しかしよく見ると、術後は下唇の厚みが薄くなってより自然な感じになっています。
笑顔では、歯が引っ込んでいた部分に見えた影が、きれいに無くなりました。上下の歯の見え方もバランスがいいと思います。
治療前 治療後
横顔です。治療後は下唇が後退し顎に向けて綺麗なカーブができました。。
治療前 治療後
正面から見るとわかりますが、残念ながら術後わずかに真ん中のラインがずれた状態で終了となりました。治療中はゴムなどをかけて当然一致を試みましたが、そうすると上下の前歯の当たり方が強くなりすぎる部位が出たり、逆に接触しない部位がでたり、また歯が斜めに傾き過ぎたりして、全体的には良い状態にはなりませんでした。色々頑張りましたがここらへんが限界でした。
もちろん患者さんにお話しして、骨のズレを歯で完全には補いきれなかったことを納得していただきました。
治療前 治療後
右側面です。治療前に生え切れずに途中で止まっていた5番を抜歯して、スペースを閉鎖しにいきましたが、抜歯したその部位の外側の骨が大きく欠損した状態が改善しませんでした。つまり骨ができない状態で、術後の写真でもわかるように、骨の部分がへこんでいる状態でした。ある程度は歯を移動して詰めてきましたが、大臼歯の根が徐々に見えてくるなどの問題も新たに発生してきました。ここも骨が無い以上、無理をして歯を移動するのを断念し、スペースが残存した状態で終了しました。
治療前 治療後
左側面です。こちらは問題なく綺麗に山と谷が接触関係を構築しています。
咬合面です。右上の残ったスペースが確認できます。将来的にはプラスチック剤などで充填処置をして、隙間は詰めようかと考えています。
こちらは治療後のみです。内外側的な接触関係は緊密に仕上がりました。
治療前
治療後は乱れていた根の並びも綺麗になりました。根の長さにも問題はみられません。
右上の5番の部分は骨の高さが低くなっています。
治療前 治療後
骨格的な左右のズレに変化はありませんでした。
治療前 治療後
横顔のレントゲン写真です。上下の前歯が後方へ移動しました。下顎は親知らずを抜歯したので全体が後方へ移動しました。下顎の前歯の根付近の骨は幅が狭く、コントロールは慎重にしないといけません。治療後もまずまずの位置で終了できたと思います。
治療後に感想を書いてもらいました。
治療終了おめでとうございます。骨格的に前後的&左右的にもズレがあり、手術の適応と考えられる症例を、矯正治療のみで治療するという状況は、正直非常に大変でした。また抜歯した部位に骨ができてこないということも想定外でした。治療中は、ワイヤーが折れたり、歯の当たりが強い部位が出たりと、色々と御苦労おかけしました。しかし、Jフックは非常に真面目に使用していただき、ゴムも適切に行っていただき、親知らずの抜歯も頑張ってくれたお陰で、何とかここまでたどり着けたという実感です。正中線やスペースの残存など我慢していただく所は出ましたが、私なりには厳しい条件の中で精一杯治療して、十分満足のいくレベルにまで持ってこれたと思っています。装置が外れてお口を正面から見たときは、正直私も別人かと思うほど感動しました。私にとっても貴重な経験でした。お疲れ様でした。まだまだ不安定ですので、リテーナーをしっかり使ってください。これからもよろしくお願いいたします。
下顎前突、受け口の治療は、治療する時期が、成長期までの治療とそれ以降ではかなり難易度が違います。成人でしかも手術が必要なレベルとなると、かなり難しくなります。受け口で矯正治療を考えている方は、少しでも早く専門医にご相談ください。
それでは、今回の院長ブログはこれまでです。皆様お元気にお過ごしください。
徳島の矯正歯科治療専門医院 藤崎矯正歯科クリニック
当院のホームページ http://fujisaki-kyousei.com もご覧ください。
総費用:65万円
治療中または治療後に、虫歯の発生・歯根吸収・歯牙疼痛・口内炎・歯肉形態不正
顎関節症・ほうれい線・歯の削合・後戻りなどのリスクがあります。
感想の内容は個々人によりそれぞれです。同様の効果を保証するものではありません。