1969年のハリウッドの連続しない数日を切り取った独特の脚本で、シャロン・テート殺害事件を題材に描いたフィクション……となんとも表現に困るのですが、落ち目の俳優リック・ダルトンとその専属スタントマン兼付き人のクリフ・ブースがいるパラレルワールドのような世界とでも捉えればよいのでしょうか。このへんもスティーブ・マックイーンあたりの俳優たちをベースにしていて、変に現実感のある業界の時代背景の描き方をしています。これはタランティーノ自体が映画オタクが故の緻密さというか拘りを感じるところで、観客をその世界に没入させてくれるトコロが面白さだと思います。

中盤くらいまでは強烈な主人公ふたりと映画業界やハリウッドという街を描いていて、そのへんは冗長な感じもあるのですが、ジワジワと事件に近づいていく緊張感が少しずつ増していて、ラストシーンに期待を抱かせてくれます。その冗長な部分も細かいところで面白味がそこここに散りばめられていて、落ち目である自分に悩むリックが泣き崩れるシーンやブルース・リーとクリフがイタズラに対決するシーンなど、タランティーノの趣味で描かれているような気もします。個人的にはクリフが運転中に脇見運転しすぎなところが映画的、とくに古い映画的で好きですね。