水谷豊の監督・脚本で、こういう着想はどこから出てくるのかと思う作品です。轢き逃げをしてしまった罪の呵責で追い詰められる心理、被害者遺族が悲しみに追い詰められる心理がよく描かれていると思います。役者の演技もさることながら脚本段階で詰めてあるようで、映像の構成も瞬発的な楽しさよりも余韻の面白味があるシーン・カットの割り方が独特だと思います。
全体的にはかなりシリアスで、恐怖や悲嘆といった心理状況を中心に描かれているのですが、そこに入ってくる毎熊克哉演じる若手刑事の軽やかさと岸部一徳演じるベテラン刑事の老獪な雰囲気がアクセントになっていて面白いところです。ピンと張った糸に適度なたわみを持たせ、観ていてリラックス出来る、とでも言いましょうか。緊張を繰り返すハリウッドのサスペンスとは違い、作品に持たせたテーマが沁み入ってくるように感じます。最後の着地までゆったりと楽しめた作品ですね。