一人の政治家としての、国を動かす政府をコントロールできる政治家としてのディック・チェイニーという男を掘り下げた作品で、こういう作品がなければ私は知ることのなかった内容だったと思います。なんとなくはジョージ・W・ブッシュの黒幕のような男だというコトくらいしか知識はなく、果たして彼がどういう人間だったか、というのをコメディタッチで上手く描いていると思います。

ディックと妻のリンとの関係はヒラリー・クリントンと夫のビルとの会話から着想を得たのかな、という部分がなかなか興味深いところで、その視点から考えると彼は常に妻であるリンに認められたかった、個人に対する承認欲求によって動いていたように思います。自分のオフィスを手に入れた時に、真っ先に妻に電話をかけるシーンなどはそれが印象的なところかと。そのうえで副大統領という地位に就くときのリンとのシーンはどう捉えるか、は考えるに面白味が増してくるように思います。私的にはシェイクスピアの引用はおちゃらけているとは思いますが、作品的な盛り上がりとしてお気に入りです。

そして、ミステリのようにメタなナレーションをしてくる男。これが最後の最後でどうディックの人生に関わってくるかが、本当に上手く出来ている。彼のようなアメリカという国をそこで支えている、アメリカ的な男とディックの関係性こそが、ディック・チェイニーという人間を掘り下げる重要なキーワードになっているのだと、そういうメッセージ性を感じました。