世界に向けたイスラム社会における差別的意識やコーランを信じ縛られてしまう人々が印象的です。性被害にあった妻がそれに恥じる心情の部分はイスラム教徒に限らず、日本でもどこの国であっても同じようなところはあると思うところです。しかし、引っ越し先の元住人や劇中で取り上げている『セールスマンの死』についての演出など、これはイスラム教社会で作られた映画なのだ、と気づかせるところが多くあります。

また、『別離』に通じるミステリ感のある演出も面白さのひとつだと思います。その夜、本当は何があったのか、誰が来たのか。それを追いかけていくことと、今あるギリギリの生活を維持していこうとする夫の描き方、そして最後に問われる正義の本質を投げかけてくるのは、ファルハディらしいのかと思いました。