以下に出会った人々の話、決してウソではありません。


(1)会社を出た時、前を歩いてたヤツが不審な動きをしていた。道沿いに点在する店の前を通り過ぎる度に、一軒一軒立ち止まっては、なにやら変なモノを取り出してカメラで撮影するような仕草をしている。そのモノというのは、鉄製のツヤ光りしたサイコロ大の立方体。ヤツがその立方体を覗き込みながら、後ろの方についてるボタンを押すと、白いライトのようなものが一瞬光った。そのライトは、瞬間的に細い煙が吹き出たようにも見えた。何なんだ?あれは? 男は黒いTシャツにジーンズのハーフパンツ、頭にバンダナのようなものをしていて、見た目どこにでもいそうな若い男だった。はたしてただのおかしなヤツなのか、それとも最新にして最小のカメラの発売に僕が気付いてないだけなのか・・・。


(2) 駅前で広告のプラカードを持った男。何かしきりに宣伝文句らしき言葉を発し続けている。しかしこれが非常に早口で、何よりものすごい低音なので、何を言ってるのか一言も聞き取れない。ちょうど商店街の八百屋か魚屋のおやじの「安いよ安いよ安いよォ~、さぁ、いらっしゃい」というダミ声に限りなく近く、妙にインパクトが残る。男の前を通り過ぎて20メートルほど離れてもなお、声はギンギンに振動感を伴って耳に入ってきた。でもやっぱり何を言ってるのか全然わからない・・・。


(3) 夜道を歩いていると、10メートルほど前方を一人のOL風の若い女が歩いていた。ケータイで何か話しているようだ。すると突然、女はいきなりスキップをしだした。しかしその後すぐに普通に歩きだし、またしばらくすると急にスキップを始めるのだ。成人女性が路上をスキップしていくの見たのは恐らく初めてかも。よっぽど嬉しいコトでもあったのかな、と無理矢理自分で言い聞かせて納得していたが、女の奇行はそれだけに終わらず、今度はフィギュアスケートの選手よろしく、いきなり回転ジャンプ!器用にケータイで話しながらだ。しかも話してる内容はいたって普通。この時彼女がジャンプをしてこっちの方を向いた瞬間、僕と目が合ってしまった。彼女はその後また普通に歩きだし、しばらくすると急にスキップを始めてそのまま棲家とおぼしきアパートの門をくぐって行った。で、僕がその後でアパートの前を通り過ぎようとした時・・・。アパートの門を閉めるような感じで女はまだそこにおり、しかも僕をじっと睨んでいるではないか!「見たな~っ!ドクロ」って感じの形相で・・・。


(4) 自宅マンションに戻り、一階からエレベーターに乗り込んだ。その時、自転車置き場の方の入口から「コツン、コツン」という人の足音がしたので、エレベーターに乗ってくるかな、と少し待っててやろうと思ったが、足音はそのまま階段を昇って行ってしまったので、そのまま扉を閉め、自宅のある四階へと上がった。エレベーターに乗ってる間も、「コツン、コツン」というあの特徴ある足音が階段を昇ってるのが聞こえた。ほどなく扉は四階で開き、僕は降りてそのまま右手方向を曲がって我が家へと戻ろうとした。しかし次の瞬間、「コツン、コツン」というあの足音が四階階段から出てくる音がし、左側の方へと足早に歩いて行き、バタンッと、何号室かの家に入って行った。エレベーターと同じスピードで階段を上がってきた同じ階の住人?! 誰だろう・・・。