今日の昼休み、昼寝してたらこんな夢を見た。

僕は伊豆半島付近の保養施設に来ていた。
ここは勤め先の会社の保養所なのだが、なぜ僕がここにいるかというと、この保養所は今月いっぱいで閉鎖されるからである。
閉鎖の理由は二つ。一つは会社の財政的理由。そしてもう一つは風光明媚で古い日本の風情漂うこの場所が、もうじき観光産業を打ち切りにするというのだ。

観光産業を取りやめる原因は何と、ここ最近の「幽霊」騒動である。この町のメインストリートと呼ばれる大通り。古い和風の佇まいをした料理屋、土産屋、茶店等が並ぶ昔の雰囲気たっぷりの観光の拠点なのだが、この通りを訪れる観光客のほとんどが、ここで「幽霊を見た」というのだ。
そのためにここはあっと言う間に「怪奇スポット」と化してしまい、客足は遠のくばかり。
町は何とかすべく莫大な資金をはたいて対策を講じたものの、大きな効果は得られず、観光ではこれ以上やっていけないという結論に至ったのである。

かつてはこれだけ大きな通りを埋め尽くすぐらい沢山の観光客が来てたのに、その彼等がほぼ全員幽霊を見ただなんて、観光客以上の数の幽霊がいるっていうのか。そんなバカな!

よし、それなら僕が幽霊の実態を調査してやろう。

もしかしたら悪意ある者のいたずらかも知れない。と、いうわけで町の観光協会の会長と掛け合ってみることにした。

「あなたのような頼もしい方々に幽霊の実態調査にいつも来て頂き、ありがたい限りです。幽霊は我々が想像する以上に恐ろしい存在なので、襲われることの無いよう、巨額の資金で購入した探索セットを一式お貸し致します。」
観光協会会長はそう言って奥からこの山間の町には思いがけないような、近未来的な器材を持ち出してきた。

「幽霊は敵意を感じ取ると相手の命を奪うことがあります。なのでスピーディーな移動が求められる探索のための新兵器です。」
リュックのように背中に背負うとジェットが噴射し、空を飛べる器材であった。どこかのオリンピックの開会式で見たことがある。これで空中を飛行しながら鳥以上のスピードで探索するのである。
「そして、このシートは、幽霊に、こちらが人間だと察知されないためのカモフラージュ用です。かぶると全身が半透明に見えます。」
会長はそう言って一枚の透明なフィルムを取り出し、それをすっぽりと僕にかぶせた。ともあれ、これで幽霊に対抗できる。
背中の器材からジェットが噴射した。僕は空中に舞い上がり、早速このメインストリートの調査を開始したのだった。

リニアを上回るようなスピードで空中を自在に飛びながら、この長いストリートをくまなく探索する。

はっきり言って気持ちいい。立ち並ぶ建物の看板がみんな斜めになって見える。幽霊のことなんかしばし忘れて、冒険飛行を楽しんだ。

しばらく探索をしてみたが、結局幽霊らしき者に出くわすことは無かったので、観光協会に戻ることにした。

幽霊なんて、いませんでしたよ、会長にそう報告しようとした時、会長の口から意外な言葉が発せられた。
「今、幽霊が現れた、と言ってさっきまでこの辺にいた観光客達がみんな逃げ帰ってしまった所です。」
なんだって?いつの間に現れたんだ、幽霊!

会長は続けて言った。

「しかし、変ですねぇ。これまでも幽霊探索を買って出る方が大勢来てくれたのですが、探索をする時に限って幽霊を見たという人が続出するようなんです。」

もしかして幽霊って・・・。