★タイ人の寮で本場のタイ料理が振舞われるホームパーティーがあり、磯子に行ってきた。実はこの宴会、過去に磯子で一回、洋光台で二回と、ほぼ毎年ベースで行われている。NHK(にっぱつ)の現地法人から研修で定期的に来日しているタイ人達が、ふとした縁で横浜タイ語組の皆さんと親しくなり、以降こうした食事会が催されている。現在来日中の研修生であるクワンさん、ボムさん、バムさんそしてノートさんの四人は通常よりも長い一年間の滞在予定。しかーも、クワンさんとボムさんの二人は今回二度目の来日で、以前二回行われた洋光台での料理会でそれぞれ料理長を務め、そのプロ級の腕前は既に我々仲間達の間でも広く知れ渡っていた。

★最強のシェフ二人がタッグを組んだ上、連休だし、ということで、今回の集まりはかなり気合いが込められ、午前11:30に磯子集合、昼から夜までぶっ続けの超長丁場宴会となる模様。例のごとく僕は少し早く起きて出発。東横線車内で同じ東京組KUKOさんと待ち合わせ、定刻に磯子駅到着。改札でゆきさんとおやさんに合流した後、そのまま近くのスーパーで飲物やつまみを買出し。タクシーで約15分程でクワン達のアパートに到着した。扉を開くと、タイの四人はそれぞれナイスなチームワークで手際よく調理に励んでいた。想像していたよりかなり広い居間のテーブルには早くもグリーンカレーの入った鍋が置かれ、エスニックな香りが和室いっぱいに漂っている。外は雲一つ無い青空。連休のためか、鳥の鳴き声しか聞こえないほど静かな周辺の家々。窓のすぐ外には鯉のぼりが翻っていた。

★タイ諸君が見慣れない料理を盛り付けた皿を手にセッティングしていく中、タニーダ先生、Kさん、I さん、とまとさん、namthipさん、N先生と仲間達が続々到着。ビールに、ワインに、焼酎等ドリンクもいろいろ用意されており、皆それぞれお好みの飲物をコップに注ぐと、色とりどりのタイ料理を前に、昼間っからカンパ~イ!! 正に極上の快楽を享受する瞬間であった。

★で、美味しく頂いた今回のメニューはと言うと、ご飯にもそうめんにもピッタリでマイルドな仕上げの、「ココナツの芽」と鶏肉入りグリーンカレー。ご飯にちょびっとかけただけでピリ辛なシーフード入りトマトソース。一見チヂミのように見える卵焼き。この卵焼きにつけるソースというのが、赤茶色をしていて後々まで引きずる程の極辛!それにラープと呼ばれるお肉のレモングラス和え。いやいや豪華絢爛!これだけのボリュームのタイ料理、料理店なんかで食べたら高いゾー。しかもこれらは全て、前回の花見
の時に料理長クワンさんがみんなから事前にリクエストを聞いて作ったもの。これは単に一人暮らししてるからできるようになったというレベルではなく、きっと彼等のお母さんは筋金入りの料理の達人で、幼い頃から舌を肥やしながら調理のテクを盗んできたのではないか。キチンと材料をメモして、タイ諸君からレシピを聞いていたKUKOさんはそう分析していた。ウン、なるほど。

★あまりにすごい盛り付けだったので、それほど減ってはいないのだが、一同お腹いっぱい。いつも通りおしゃべりしながら料理に舌鼓を打っている限り誰も意識はできないのだが、いつもの飲み会より時間が3倍ほどゆったりしているので、その分多く酒も摂っているため、なんだかゆったりまったりな雰囲気で、ゴロ寝したくなる気分が蔓延する会場。それでもタイの四人組、席には常に三人しかおらず、決まってクワンかボムのどちらか一人が台所で何か別の料理を仕込んでいるようだった。来客は大満足させるまで丁重にもてなす、全アジアに共通する尊い精神がここでも感じられ、日本にいながらアジア旅の感動をバーチャルで体感する僕であった。

★まぁ、ずっと畳に座ってると体がなまってくるので、ゆきさん、バムさん、ノートさんを連れ立って酔い覚ましに周囲を散歩することにした。この辺りは右も左もアパートばかりの完全なベッドタウン。坂が多く、ちょっと歩くと昇り坂や下り坂に遭遇する。焼酎が回っていたゆきさんはかなり足にきているご様子。気軽に買物できる店が近辺にほとんど無いので、住民達は普段どうしてるのかな。一方で緑いっぱいの公園も多く、我々は大きな池のある公園をしばし散策し、閑静な住宅地の間を縫うように伸びる細い道を歩きながらアパートに戻った。

★テーブルには大ぶりのエビが入った春雨、そして中華風の山菜炒めが広げられていた。特に春雨は黒コショウが効いていて、ほどよい辛さ。お腹一杯でもついつまんじゃう程口当たりのいいものであった。宴の席の雰囲気は相変わらずまったりしていたが、5日に開催される猿島BBQ大会の打ち合わせが行われたり、ノートさんの隠し芸であるトランプ手品が披露されると、一気に熱気が取り戻された。習い始めたフラダンスの授業があると、しばし中座していたタニーダ先生が戻って来たので、余興がてらちょびっと踊って頂くと、女性陣はそれに強く反応。Kさんは早速盆踊りを、namthipさんは何の踊りかわからないが、リズミカルなステップと腰使いがちょっとSexyな踊りを披露し、場は最高に盛り上がったのだった。

★デザートの時間。お菓子も、アイスも、イチゴも、フルーチェも、紅葉饅頭も、柏餅も、何でもありなので、それぞれ思い思いに口直ししている中、会場で圧倒的多数を占める女性陣の間で「タイ人の男=見かけも仕草もカワイイ上、優しいし自立している」、「日本人の男=気を使ってくれないし威張ってる上、人にしてもらうことを当然と思ってる=自立できてない」といった議論が展開され、そうこうしているうちにこの場はタイ人男絶賛&日本人男罵倒大会の様相を呈してきた。気が付けばゆきさんは既に宴の席を後にしており、唯一の日本人男となってしまった上、タイ語がわからないことも合間って、たちまち居場所が無くなってしまい、隅っこでヌイグルミを突っつきながら膝を抱えて小さくなっていた。 しょぼん

★そんな中、ボムはタニーダ先生のフラダンスの太鼓を手におどけながら叩いて笑わせてくれた。クワンはさりげなく酒を勧めてくれた。ノートとバムはエンジニアらしく、僕をPCの前に呼ぶと、車の部品の3D-CAD画面をいじって見せてくれた。来客は全員もれなく満足させる、彼等の気持ちは本物であり、その気遣いに感激の涙をぐっとこらえるのであった。確かに国民性というのはそれぞれに長所と短所があり、タイ人にはタイ人の長所がある。従い○○人はこうだからいい、××人はああだからダメ、という論法も、評価としてありかも知れない。だが僕は今この場にいる彼等四人個人個人を心から誉めたい。たまたま彼等はタイの出身だった。でもただそれだけである。これがカンボジアの出身であっても、イラクの出身であってもいいのである。

★夜9時を回った。そろそろ帰らないと。僕とKUKOさんが腰を上げると、ノートさんとバムさんが最寄のバス停まで送ってくれた。最後の最後まで親切で嬉しいなぁ。静かな住宅街の坂を上り下りしながら、満月を街灯代わりに、相変わらずゆったりまったり気分で帰途につく我々であった。