Dailymotionより(動画)
『[原発危機]事故はなぜ深刻化したのか』
【2011年6月5日 いまだに危機的な状況が続き予断を許さない原発事故。当初の想定を超え、水素爆発やメルトダウンなどが進行し、後手後手の対応の中で、汚染は拡大していった。
 なぜ、ここまで事故は深刻化したのか。事故対応にあたった官邸、保安院、原子力安全委員会、そして東京電力はどう動いたのか。当事者たちの証言と内部資料をもとに徹底検証する。】

壺 齋 閑 話さまより *詳細な解説ありがとうございました。
【NHKが福島第一原発事故を検証する番組の放送を始めた。題して「シリーズ原発危機」 第一回目は、「事故は何故深刻化したのか」というテーマで、初動対応の問題点を整理していた。これを見た視聴者は、この事故が天災であった以上に人災であったということを、改めて認識したことだろう。

番組は、3月11日午後2時47分の地震発生、それに続く3時42分の津波襲来に始まったこの事故の概要を、時系列で整理していた。東電が政府に報告したのは4時45分、内閣が緊急事態宣言を発したのは7時03分である。これがタイミング的に遅かったのか、やむをえなかったのか、どうとでもいえる。問題は、その後の初動対応が適切になされていたか、もしなされなかったのであれば、その原因はなにかということだ。

初動対応が基本的に成功しなかったことは、いまでは事実の裏づけに基づいていえる。これまで二転三転した事実認識が、最近の検証で正確なものになり、1号機、3号機、4号機については、いずれも深刻なメルトダウンを引き起こし、その結果としての水素爆発や高濃度の放射能汚染を引き起こしていたことが分かってきた。

結局、初動対応がタイミング的にずれていた(遅れていた)というのが根本的な問題だが、その前段として、東電や政府の原発事故に対する姿勢の甘さが、決定的な要因となったということだ。

当事者たちは少なくとも、電源喪失によって冷却システムが麻痺し、それを放置しておくとメルトダウンにつながるという認識はもっていた。だがこうした認識を持ちながら、適切な対応をとることができなかった。それは安全神話の上に胡坐をかいて、もしそうした事故が起きた場合にどのような対応をとるべきかについて、具体的な指針が何もなかったからだ。

対策会議では、失われた電源を確保するためになるべく多くの電源車を現地に集めようということになり、菅首相自らそれを命令した。だが集まった電源車を現地に持っていくと、肝心なケーブルがつながらない、やっとケーブルをつないだと思ったら、今度はポンプが動かない。こうして右往左往している間に6時間が失われた。この間に原発内部で燃料棒が露出し、それがメルトダウンへとつながっていったのである。

ついでベントをめぐる混乱が事故の規模を拡大させる上での致命傷になった。炉内に水を入れて冷やすためには、炉内の圧力を低くしなければならない。そのためにはベントといって、ガスをぬく作業が必要になる。ところがベントを行うために必要な弁の開閉ができない。マニュアルは、電動で開閉する事態しか指示しておらず、手動での開閉を想定していなかったからだ。

こうしたわけで、ベントの実施にも無駄な時間を費やし、それが事故の規模を拡大させた。

ベントはまた、空気中に多量の放射能を撒き散らすことを意味している。したがって付近住民を危険にさらす可能性が高い。それなのに政府や東電はベントについての正しい情報を住民に知らせることを怠った。当時風向きは北西方向で、この方向には多量の放射能が流れることは簡単に予測された。だから避難する人々には、そちらへは行かないように呼びかけるべきだったにもかかわらず、それをしなかった。結果として、放射能の流れに沿う形で、放射能を胸いっぱいに吸いながら避難して行った人もいた。その中には小さな子どももいた。この子どもが大人になったときに、どのような健康傷害を蒙るか、それを思うと、当事者の責任はあまりにも大きい。

情報開示のあり方をめぐっては、もっと大きな問題がある。それは政府による情報統制ということだ。一号機が爆発したとき、政府はそれを二時間も隠した。隠したという言い方がきつすぎるのであれば、情報の開示を統制しようとした。生の情報ではなく、政府が説明しやすいようなコントロールされた情報にこだわるあまり、開示に必要以上の時間をかけたといわれてもしょうがない。

日本政府の情報コントロール体質については、海外のメディアが厳しく批判したところだ。だが政府は無視した。その結果もっとも被害を蒙るのは、先ほどの避難者のような国民一人ひとりということになる。

この番組をみて、びっくり仰天させられたのは、事故当事者の責任意識の希薄さだ。

まず東電の体質だ。東電の事故対応のあり方については、先日も本社と現場の意思疎通の不在が問題になったばかりだが、番組の中では、東電が事故処理からの撤退を画策していた事実を報道していた。どういうつもりでそんなことを考え付いたか、筆者のような部外者にはわからないが、撤退とは責任放棄にほかならない。国民を重大な危険にさらしたまま、自分だけが逃げ延びようなどと、そんなことを考える人間を、人間と呼ぶことができるのか。

もうひとつは原子力安全委員会の斑目委員長の態度だ。この男は菅総理が最初に現地視察をした際、ヘリコプターに同乗した。そのヘリコプターの中で、原子炉の状態を聞かれた氏は、「大丈夫」を連発するだけだったという。専門家としての知恵を期待されて総理大臣に同行したというのに、かえって事態を紺柄がらせるようなことをいっていたわけだ。

斑目氏はそのことを強く批判されたのだろう。番組の最後に出てきて、照れ笑いをしていた。そしていうことがふるっている。「3.11以降のことはみんななかったことにしてほしい」

この男はどういう神経をしているのか、筆者は絶句するばかりだった。】

まずNHKの関係者の皆様に、国民が最も知りたかった疑問、なぜこんな重大事故になったのか、防ぎようは無かったのか、について、真正面から取り組んで下さったことに感謝申し上げます。

その上で、それでも疑問のままの点、非常用冷却機能のどの部分が機能しなかったかを推測したい。
まず、冷却水を送るポンプが故障で電源を入れても動かなかった?
ならば、ポンプは全部で何台あり、そのうち何台がいつから故障していたのだろう?
取水口が詰まっていて、あるいはホースが詰まっていて取水できなかった?
電源車から電気を受ける配電盤が水没したため壊れていて電気をポンプに送れなかった?
そもそも配管が破損していて、駄々漏れ状態で原子炉まで十分な冷却水を送れなかった?

 いずれにしても、手動ベントの方法さえ知らなかったように、既に事故を起こしてからでは手の付けようが無かったというのが真相だろう。
 
 一度事故を起こせば甚大な損害を引き起こす、非常に危険な、原発と言う猛獣を飼っているという自覚がまったく無く、事前の備えがあまりにもお粗末だった。

 福島県民の生命・財産を危険に曝した責任は重大で、もし日本の検察・警察が健全に機能しているのならば、東電や監督官庁・保安院の法的責任を当然問わなければならない。