教え子にも、いろんな生徒がいるもので、高校生時代から可愛がっていた上に、卒業してからも付き合いを続けている生徒がいれば、可愛がっていたにも関わらず、卒業後には一切関係が遠ざかってしまう生徒もいる。また、卒業後に、突然関係が深まる生徒もいる。それは、生徒の親との関係も同様だ。


阿南に、可愛がっていた生徒で、しかし、学校では少しヤンチャな生徒がいた。その生徒が学校で問題を起こし、処分を受けたことがあった。だが、私たちの塾では休ませることなく、寧ろ通わせた。ただ、私の勝手なルールで男の子は丸刈りの処置をさせていた。かれこれ20年くらい前の話である。

その子の親御さんが、電話をしてきた。

「うちの子、坊主にしたら、やめるかもよ」

「それは、もう、しゃあないっすね」


だが、彼は坊主にしてきた。

「ビックリするほど似合わんでしょ」


苦笑いをしてやって来た彼を、「悪い子」だとは一回も思えなかった。


そんな彼が卒業するとき、親御さんがラーメン屋を開くことになった。17年前のこと。そして、親御さんが、店の名前を、いくつか候補として出してくれ、と私に言うのだ。条件は「漢字2文字で、読んだら4文字」。そこで、4つほどの候補をひねり出した。それぞれの意味合いを添えて。


結果、選んでくれたのは、「山海(さんかい)」だった。一時の間、ほぼラーメンを食べないように気をつけていた時期はあったが、最近は時折訪れる。


肉入り(中)。




今や結婚し、普通に暮らしているその彼に会う機会は激減したが、親御さんとは、店でたまに談笑する。

不思議なものである。