効力失せた「古証文」をいまさら持ち出す全中 | 週刊ライス・ビジネス 〔コメ 生産・流通の動向〕

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 JA全中の萬歳会長は「(農協法で定めた全中監査の)廃止が、農業所得増大とどうつながるのか、理解しかねる」と言っているが、それは全中の強制監査権を廃止することで、農協が全中に加盟する義務がなくなり、実質的に年間約80億円もの「賦課金」と称する上納金を支払う必要がなくなるからだ。


 そのことで農協の負担が減り、経営の自由度が増し、組合員農家へのサービスが向上することで、農家経営にプラスとなるからである。


 また、萬歳会長は5年も前の農水省の古証文を持ち出して、「あの時は全中監査で良いと言ったではないか」と農水省をなじっているが、政権トップが替わり、政権の農協に対する考え方も変わったのである。昔の約束を持ち出して責め立てても、「時代の変化をまるで認識していない」と批判されるだけだろう。


 萬歳会長は「会計監査と業務監査が一体となった全中監査の有効性」を強調しているが、本紙でも度々報道しているように、農協の独禁法違反や職員による貯金の横領などの不祥事が跡を絶たない。しかも何年にも亘って違法行為を続けていた事例も多い。これは「身内が身内を監査する」弊害が出ている証拠であり、外部機関による監査の必要性を裏付けている。


 しかし、いろいろ議論は乱れ飛ぶが、今回の農協改革にかける政府の本音は、「全中を弱体化させて、政治圧力団体としての性格を削ぎ取る」ことだ。安倍内閣の目玉政策は「地方創生」であり、これを進める上で全中に様々な圧力をかけられては「うるさくてたまらん」というわけ。


 これに対して全中側もあれこれ理屈を並べたてているが、最後は自民党の農林議員を総動員しての肉弾戦、と覚悟を決めている。


 安倍内閣と全中の体力勝負が始まる。(1月21日号「展望台」)