KAYAK/Out of This World…2021年 | 車通勤メタル!

車通勤メタル!

児童養護施設で働くメタル好き中年保育士のCD日記。目指せ1万枚!

オランダのベテラン・プログレ・バンド、

KAYAKのスタジオ・アルバムとしては18枚目の作品。

 

まずはジャケットからして

この作品への並々ならぬ意欲を感じます。

 

このバンドのデビュー作、「See See The Sun」は

邦題が「金環食」で、その現象を捉えた写真を

ジャケットにしていました。

 

そして、このアルバムのジャケットは

満月に向かって道が延びている絵であります。

何かを暗示させるジャケットですが、

その予感は的中。

 

このアルバムを最後に

翌年にフェアウェル・ツアーを行ない、

KAYAKはツアー・バンドとしての活動を終えました。

 

まあ今後アルバムを作る可能性は

ゼロでは無いかもしれませんが、

かなり高齢ですし、そこは期待せず、

最後の作品として聴いております。

 

さて、内容の方は

1曲目「Out of This World」の

イントロのピアノからして鳥肌モノであります。

 

実に甘美でドラマティックな曲ですね。

「See See The Sun」発表から実に50年近く経つ訳ですが、

このレベルで初期の音楽性を保っているのは奇跡と言えます。

 

2曲目は一転してゆる~い雰囲気でポップな「Waiting」。

こういった気軽な曲と、抒情的な曲が交互に来る展開で、

これもまたKAYAKらしいとこであります。

 

3曲目の「Undar a Scar」はまたドラマティックで、

これもいかにもKAYAKらしい曲。

ちょっと「Starlight Dancer」っぽい雰囲気もあって

素晴らしいです。

 

続く「Kaja」は短いインスト曲ですが、

鳴きのギターが美しい哀愁漂うナンバー。

これも切なくて良いですね~。

 

5曲目の「Mystery」は

タイトル通り不思議な雰囲気の曲で、

この曲はMVも公開されていますが、

映像も不思議な感じでなかなか面白い曲です。

 

その後もKAYAKらしいナンバーが並びますが、

ちょっとメロディが弱く、似たような曲が並ぶため、

中だるみのようになるのは残念な点。

 

もちろん全曲十分クオリティは高いですが、

やはり捨て曲ナシの全盛期作品を知っていると、

物足りなく感じてしまいますね。

 

とは言え終盤

13曲目の9分超えの大曲「Winter's Tale」からの

ポップな小曲「Cary」、そしてラストの

「Ship of Theserus」は重苦しい雰囲気と、

締めくくる展開はなかなか練られていて、

ここはさすがであります。

 

「Ship of Theserus」は

何か次の展開がありそうな

思わせぶりなラストですが、

まさか最後のアルバムになってしまうとは…。

 

まあその辺りの

狙いなのか、自然な流れなのか分かりませんが、

そういった仕掛けもKAYAKらしいところではあります。

 

全体を通すと

正直素晴らしい曲と、そうでない曲の差が大きく、

必ずしもKAYAKの作品の中では

上位に位置するアルバムではありませんが、

このバンドに興味がある人は買って損の無い

作品と言えるでしょう。

 

逆に1曲目の「Out of This World」のためだけに

買っても損はありません。

それだけ「Out of This World」の素晴らしさが

突出しています。

 

ラスト・アルバムでこれだけの名曲を出してくる、

このバンドの底力を感じる1枚です。

 

☆「ラスト作にして、これだけのクオリティ。シンフォニック・プログレの名バンドの底力」…☆☆☆☆☆☆☆☆☆星9つ!