未成年である犯罪容疑者の実名や顔写真が雑誌や新聞に掲載された場合,これまで公共の図書館では各館の自主的な判断によって閲覧させるかいなか判断させていたようですが,日本図書館協会の委員会は
「加害少年の推知報道については提供することを原則とする」
といの考え方をまとめたとのことです。
少年法61条は


「家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であること推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。」
と規定しているので,報道側も自主規制をはっていたようです。
ただ,今年8月に山口で起きた女子学生殺害事件で殺人罪の被疑事件で指名手配された少年が自殺していた問題で,
少年の保護・更生と重大事件については公共の関心事だとして知る権利のどちらを優越させるか
が議論になっていました。
少年の名をなるべく伏せようとすることには,特定されてしまえば,少年の将来の更生を機会を奪ってしまうということが言われるのですが,少年が死んでしまった場合は例外ではないだろうかと言われたわけです。
これはなかなか難しい問題で,どちらがいいかということはすぐには答えがでません。個々の事件に即してこれからも議論していく必要があるでしょう。
裁判所ではどのように扱っているのでしょうか。
少年が刑事裁判の対象になった場合には,開廷表(法廷前に掲示する裁判の予定表のことです)に載っている被告人名は実名を伏せています。
また,公開裁判であり,少年も傍聴人の前に姿を現さなければなりませんが,できる限り,傍聴人からはその姿が見えづらい配慮(語弊があるかもしれません)をしています。
たとえば,被告人が入廷する際に,傍聴席の前に遮へい版をおき,被告人が席についたら遮へい版をはずし,少年の周りには刑務官を配置するといったことをするのです。少年は正面を向いているので,傍聴席からは少年のかすかな横顔か後姿しか伺うことができません。
裁判所のこうした配慮が甘いとの批判があるやもしれませんが,裁判所が一番,少年が可塑性に富んでいることを期待しているのでしょうね。