
「プッシャー」のニコラス・ウィンディング・レフン監督、「ラースと、その彼女」のライアン・ゴズリング主演。昼は自動車整備士とスタントマン、夜は強盗の逃がし屋を営む名もなき男が、愛する女のために命がけの戦いを挑むクライム・サスペンス。
カンヌ国際映画賞監督賞を受賞したという本作。ネットでの前評判は非常によく、小生自身もこの手の「ザ☆漢の世界」的作品は大好きなのだが(ちなみに変な意味はない。念のため)、個人的にどうにも腑に落ちない点も多く、いまいちノリ切れなかった。
過去を語らず、愚痴をこぼさず、ただただ寡黙に仕事をこなす、通称「ドライバー」の、己が身をも盾にして人妻への報われぬ愛を貫くという、3、40年前の渡哲也氏か小林旭氏を彷彿とさせるキャラクターは面白く、それに倣ってか、日本の仁侠映画を思わせる、血生臭くもどこか哀愁すら漂わせるストーリーがまた良い。
全盛期の日活アクションよろしく、並み居る悪党相手にテメェのクソ度胸一つを武器に立ち向かう痛快さに、メリケンらしいカースタント要素、さらに儚いラブロマンスも加わり、まさにアメリカ版「昭和の男」とも言うべき、漢臭さ全開の映画に仕上がっている。
しかしそれだけに、主演のライアン・ゴズリングにはもう少し、いい意味での「無骨さ」「泥臭さ」がほしかったところ。
言葉で表現するのは非常に難しいのだが、目と背中で歩んで来た人生を語るような、汗と涙と血と泥にまみれた者のみが鎧う色気、あるいはオーラとでも言うべきか。
本国でライアンは「セクシーな男優」と評されているそうだが、そういう性的な色気ではない。そのせいか、彼の表情がどことなく機械的に見えてしまったのは、小生だけか。
また、「過去を語らない」にしても、あれだけのドライビングテクニックをどこで身に付けたのか、何故ショットガン持った相手をいとも容易く倒せたのか、そもそも待ち時間が何故5分なのか、具体的にでなくとも、せめて「こういう事かな?」と匂わせるヒントぐらいあっても良かったように思う。
男も女もミステリアスなのは確かに魅力的だが、あまりに正体不明過ぎて、素直に感情移入できなかったのは、実に痛い。
それに伴って、もう一つ。せっかく「どんな状況でも5分だけ待つ」というルールがあるのだから、それを破らせるだけの何かがあっても良かった気がする。何かしら深い意味があるのかと思いきや、一切触れずに終わってしまったので、少々肩透かしを食らった気分に。
それを言ったら、途中で撮影用のマスクを被って出てきた意味もよく分からんかったけども…。
期待していただけに、ちと残念。まあ、例えば今、このシナリオで邦画を撮ったら、大した作品はできないだろうと察するが(理由は単純に、この主人公を「満足に」演じられる若手俳優を思いつかないから)、どこに注目して観るかで、評価が大きく変わる映画なのかもしれない。
…いや、それはどの作品にも言える事か?
ちなみに浅田次郎氏曰く、男の条件は「嘘をつかない、愚痴を言わない、見栄を張らない」の3つなのだそうな。ならば、一つも当てはまらない小生は男じゃないのかしら。もうホント、失礼しちゃう!
さて、そんな与太話はさておき、小生の、この映画に対する評価は…、
☆☆☆★★
小生にはこれが限界。星3つ!!
あーなるほど、「キタノ映画っぽい」ってのは確かにそうだな。いっそ、石橋凌さん辺りを主人公にして北野武監督がリメイクしたら、いいモノが出来るかも。
というか、やはりああいう役はせめて40歳越えてないと貫禄が出ないな~、と。
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