昨夜、19時の電話定期便を妻がかけたら、義父が発熱しているといった。丁度図っているからと体温計を取り出したら7度8分だという。老人はもともと体温が低いし、高齢者の発熱はすぐ肺炎などに繋がって危ない。


妻は今日は予約してある毎年一回の検査のため自分が車で一時間の病院に通院するはずだった。

実家には週末に行き、その足で義父を連れて私の車で箱根に紅葉狩りの予定だった。もともとそれは十月末に父のリクエストで計画されていたが、その時は天候が悪いうえに妻の帯状疱疹が発症して延期となった。

サイクルからいくと先週末のはずだったが、それも妻の体調を見てもう一週間後にしようということになったのだ。


妻は今日の午前中に予定通り通院して検査を受け、その足で実家に向かうことにした。そのことを改めて義父に電話すると義父は、無理に来なくていいと言い張った。

そういえば昨朝珍しく実家近くに住む義弟から妻に電話があった。「体調はどう?」という話で、妻は義弟が心配して電話をしてきたことに驚いていた。まだ少しからだのあちこちが痛いというと、そう、結構長引くねといって電話が切れた。


一昨夜義父は、これも習慣となっている義弟宅での週末の食事の後、いつもなら運動になるからと送迎を断って家との間を歩いて往復するのに体調が少し悪いというので義弟に送ってもらったのだ。義弟は朝の電話でそのことに触れなかったが、妻は義父からそのことを聞いて、朝の弟の電話の意味を知った。


妻は義妹に「明日実家に行きます」と連絡を取り、いくつか打ち合わせをしていた。


妻は明日から実家だからといって早く布団に入った。しかし寝室の隣の居間でイヤホーンで音を消して録画してあった『ボーン・スプレマシー』を見ていたら、ふすま越しに布団の中から妻が声を上げた。

「眠れないよ」

物音や私の動く気配のせいかと尋ねたら、「実家に行く前の夜はいつもそうなの」と彼女は答えた。

それならば私にできることはない。

私は曖昧な返事をして、まためまぐるしいアクションの世界に没入していった。