吉田兼好児の旅日記 親友 旭川・美幌・摩周湖

大学一年生時の夏休みに北海道を旅した・・クラスメイトの辻誠君(旭川出身・電気工学科・NHK)と会うためであった・・・・。彼とは、東京時代に一度飲んだきりで、その後はずいぶん会っていない!、一度だけ年賀状はもらったが・・その賀状には、“2番目の妹がNHKアナウンサーに嫁いだ“ とか書き添えてあった・・今頃、どうしているのかな~あ?・達者でいると信じているけど、ね!、Facebookでもやっていれば・・メッセージもくるだろう・・。大学一年生の夏、僕は荻窪の伯父の家に下宿していた・・。東京の夏は蒸し暑く、家の中は風通しも悪い・汗かきの僕は、夜中は四六時中目が覚めて、いつも睡眠不足に悩まされていた・・もちろん、今のように・エアコンなんぞは、普通の家庭には無い時代である・・。そんな頃、荻窪近辺の映画館では真夜中から早朝まで「深夜劇場」とやらをやっていた・・、映画館内は、当時は・まだ“エアコン”とは言わない・壁から冷や汗を垂れ流す“冷房”と呼ばれる機械モノが音を立てて唸っていた・・。昭和36年の東京はインフラ整備の真最中で至る所が土木建設の現場だった・・・。夜ともなると、その日稼いだ札束を腹巻に詰め込んだお金持ちの飯場の親父さんたちが肩で風切って歩いていた…、特に夏の蒸し暑い夜などは、親父さんたちは飯場を出て、街中の銭湯で体を流して軍艦マーチが鳴り響くパチンコ屋で過ごし、その後は焼きとり(この頃は豚のモツ焼き)屋で一杯やって、夜中から朝までは冷房のきいた深夜劇場の映画館でのんびり寝ながら休む、といった風情だった・・。深夜劇場は値段も安く・上映する映画も3本だて、けっこう人気があった・・。東京での初めての夏休みがやってきた・・高知に帰ろうか?・それともバイトでもしようか?、と、悩んだりしながらの・そんな夜、あまりにも蒸し暑くて眠れないので、そっと下宿を抜け出して近くの冷房がよくきいている映画館の深夜劇場に入った・もちろん、朝まで此処で涼をとりながら寝るつもりだった・・、席に座って1時間ほど経っただろう?・・隣のイビキがうるさいので急に目が覚めた!、映画館の薄明りの中でふと横を見ると、顔見知りのトビ職の飯場の親父さんだった・昼間の仕事で疲れきって寝込んでいる ・・、親父さんのイビキの音ですっかり目が覚めてしまい、眠気の中で上映中の画面をぼんやりと眺めていた・・映画のタイトルは、日活「君の名は」第二部だった・・・、広々とした風景・小高い丘から馬車が駈けてくる・・馬車が止まり、スタイル抜群のアイヌ美女が馬車から下りる、美女が歩く道端には木の立て看板・そこには「美幌峠」と書かれている、アイヌの美女役の女優は北原三枝(後の石原裕次郎の奥さん)・・・。目が覚めた!・・そうか!・北海道か!!、此処に行ってみよう!・・・北海道には辻君がいるよ!・・・。大学の1年生授業は、基礎教養の必須科目だったのでクラス全員が出席した・・教室では、講師が立つ教壇に向かって生徒の机が出席番号順に並ぶ、14番の僕の席のすぐ後が22番の彼だった・・。授業の合間に、彼と振り向いて話す・・すべての科目授業が終わった頃には・いつのまにか友達になっていた・・・。「清岡、オマエは高知だろう!、南国土佐は暑いだろう~?、オレは北海道の旭川だから・夏は涼しいよ~!、夏休み・オレは旭川に帰るよ!、よかったらオマエ、夏休みは北海道に来ないかい?、念のために旭川の電話番号を教えとくよ~!」・・・。そんな彼との話を思い出して、翌朝さっそく荻窪駅に行って「北海道・美幌」までの片道)普通)乗車券を買った。手持ちの金では、旅の食いモノの駅弁代と列車の片道切符を購入するぐらいが精一杯だった・・・。とにかく、旭川駅までたどり着ければ・・後は何とかなるだろう~!と、その夕刻に上野駅発青森行の普通夜行列車に飛び乗った・・約24・5時間の鈍行の旅である。その頃・夏休みとなれば、北海道を周遊する女子大学生のグループが多く、一人旅の学生の僕には・・突然の差し入れなどもあり、食いモノには事欠かなかった・・・。青森から函館まで青函連絡船に乗り初めて津軽海峡を渡った・・・。函館駅で、友達になった東京の女子大学生たちと別れて、どうにか・長万部経由で札幌駅にたどり着いた、しかし、その夜の旭川行の列車はすでに無く、持ち金も底をついていたので、結局、札幌テレビ塔のある公園のベンチで寝ることになった・・・かなり寒くなった夜明け前に、巡回中の警察にタタキ起こされた・・、「はい!、これが学生証です!、浮浪者じゃないですよ!、これから旭川の友達の家に行くところです、無銭旅行中です、ほら、美幌までの片道切符も・ちゃんと買ってあります!、旭川でバイトして東京に帰る予定です・・・」とか、何とか応えて、どうにか警察から開放された・・。朝一番の札幌駅発・岩見沢経由旭川行の普通列車に乗った・・。旭川駅に着くなり、すぐに公衆電話から彼の家に電話した・・・誰かでてきた、「誠君と大学で同級の清岡です、彼は居ますか?」、ちょっと待ってくださいね!・・・辻ですが!、どなたですか?、「清岡だよ!、辻君!」、“はーあ”・キヨオカ?、どちらの?キヨオカさん?、(てめえ、どちらも・そちらも、ねえだろう~!)・・、「ほら、大学で出席番号14番の土佐のキヨオカだよ!」、おお!、オオ“”キヨオカ君“、元気ですか!?、今、何処?東京?、「旭川駅だよ!、オマエが夏休みに遊びに来いよ!、と、言ったから・・来たんだよ!」・・・。彼の家は、旭川で酒屋を営んでいた。2週間ほど彼の酒屋でアルバイトをして、彼の親父さんから頂いた駄賃で、彼と一緒に美幌峠・阿寒湖などを観光旅行した・・・

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