蒼は周りにも親切にした。柚菜には時折、それが偽善に見えた。
でもそれは彼には言わなかった。
そして蒼の優しさは男女分け隔てることはしなかった。
柚菜としては分け隔ててほしかった。
それも黙っていた。

蒼はそんなんじゃないと言っていたけれど、柚菜としては同情で拾われた感覚がどうしても抜けなかったから、そんな引け目から蒼には束縛することは出来ないでいた。

だけど蒼の周りにいた最後の1人の女性と後から関わることになる1人の女性についてはその引け目を差し引いても我慢が出来なかった。
それどころか華栞までやっかいな目にあった。

後から関わってきた女性についてだけど、華栞はやっかいな目には合わなかった。
それは柚菜が扱っていたのが華栞だったから彼女は取るに足らない相手と判断していたのではないかと思う。
それが雪見だったら大変だったろう。
なぜなら彼女はPKだった。

蒼はPKを心底嫌っていた。
特に女性のPKに対してひどかった。
軽蔑していた。
性格や容姿も蔑んでいた。

それならなぜ彼が雪見を受け入れたのかと思うことだろう。
雪見とは戦ったこともなければ、実際にPK活動しているところをみたことがないからと言っていた。
雪見の家族欄をみるとPKと関わりがあるのは一目瞭然。
それをみて、あー雪見って海に住んでるんだなとしか思わなかったそう。
実際、PKだったとは思ってなかったらしい。

ではなぜその女性を相手にしたのか。
なぜ柚菜はやっかいなことに巻き込まれなかったのに慌てたのか。

それは蒼の同情心だった。
そこから焦りが生まれた。
蔑んでいたはずの現役のPKの女性に蒼が同情を示したからだった。

例えば彼が海へ襲撃に行った際に彼女と時間を割き、彼女の相談や愚痴をきいた。
内緒話がくればそれに応じたりもした。
そして彼女はゲームを辞めると言った。
蒼にアイテムをあげるとも言った。
多少の違いはあるものの雪見が辞めると言った時とそっくりだった。
さすがに焦った。

蒼の心が変わってしまうんじゃないかと思った。
そして柚菜は初めて嫉妬をあらわにすることになった。

その気持ちを伝えてからの蒼は従来通り、彼女を敵とみなしてくれた。

やがて彼女は言葉通り引退した。
最終日に彼女はアイテムを渡したいと内緒話をしたが、蒼はそれを無視した。
彼女は蒼の友達に預けたが、それを受け取ることも辞退した。


蒼の毅然とした態度は、華栞からはとても気持ちのいいものだった。


例えば、雪見よりも先に蒼が彼女に出会っていたら…逆の立場に立たされていたのかもしれない。
少なくとも当時の彼ならば・・・、柚菜とこうなったのは後先の問題だったような気がした。


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