商標が類似とされた例 | SIPO

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審決例(商標):類否144

 

<審決の要旨>

『1 引用商標1の周知性について

(1)請求人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、以下のとおりである。

 ア~キ  略

(2)判断

 上記(1)によれば、以下の事実が認められる。

 我が国において、2019年(平成31年)1月から、請求人が販売を開始した請求人商品は、同年3月1日から全国販売を開始し、その販売金額シェア及び販売数量シェアは相当程度高いこと、有名タレントを起用した請求人商品に係るテレビCMの放送、当該テレビCMと同内容の動画のYoutubeへの投稿及び雑誌への広告掲載を行ってきたこと、Twitter及びInstagramにおいて、請求人商品のイベントを行ったこと、請求人商品は多数のスーパーマーケットで取り扱われ、販売されていること、前記テレビCMや広告等において、請求人商標のみならず、引用商標1が、請求人商標の略称を表す語として使用されていること等が認められるから、引用商標1は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人商品に使用する商標として、我が国の需要者の間においてある程度知られていたことが認められる。

 しかしながら、請求人による請求人商品に係る広告宣伝活動等について、幅広い需要者層が目にする機会の多いテレビCMは、2019年(平成31年)において、合計6か月弱、2020年(令和2年)において、合計約6か月の期間のみ放送されたものであり、請求人が主催するTwitter及びInstagramにおけるイベントは、2019年(平成31年)4月及び11月に開催されたのみであって、その後継続して行われていることなどを把握することができない。

 また、請求人は、広告宣伝活動の一つとして、Youtubeへの動画投稿を行っていることなどを開示しているが、当該動画の再生回数などを具体的に示す証拠は見いだすことはできず、さらに、新聞、雑誌等における宣伝広告については、販売地域、発行部数などを具体的に示す証拠は見いだすことはできないから、我が国における客観的な使用事実に基づいて、その使用状況を把握することができない。

 以上からすると、引用商標1は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人商品(ぽん酢)を表示するものとして、我が国の需要者の間において、ある程度知られていたということができるものの、それを超えて我が国の需要者の間に広く認識されていたとまでいうことはできない。

 2 引用商標2の周知性について  略

 3 「ぽん」の意味合いについて

(1)請求人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、以下のとおりである。

 ア~オ  略

(2)判断

 上記(1)によれば、「ぽん酢」は、柑橘類の果汁を用いた和食の調味料を指し、狭義では、レモン・ライム・ダイダイ・ユズ・スダチ・カボスなど柑橘類の果汁に酢酸を加えて味をととのえ、保存性を高めたもの(ぽんす)をいうが、「ぽん酢」に醤油を混ぜた「ぽん酢醤油」などの「ぽん酢調味料」も一般的に「ぽん酢」と略して呼ばれており、被請求人も含む、多くの食品製造業者がぽん酢又はポン酢調味料を製造、販売している。そして、当該商品には「ぽん」を後置した「○○ぽん」の名称が多く使用されていることが認められる。

 そして、2018年(平成30年)ないし2020年(令和2年)の期間において販売された商品「ぽんす」又は「ぽん酢調味料」中、商品名として「○○ぽん商品」が占める商品数の割合は、1割程度で決して高いとはいい難いものの、販売個数シェアでみると、全体の約6割近くを占めていることが認められ、「ぽん」は「ぽん酢」を表す略称として広く一般に使用されていることが認められる。

 また、「○○ぽん商品」以外の商品、例えば、「○○ぽん酢(ポン酢、ぽんす)」の構成からなる商品等、「ぽん」の文字をその構成中に有する商品を含めてみれば、商品「ぽん酢」又は「ぽん酢調味料」中の大多数の商品における商品名は、その構成中に「ぽん」の文字を有してなるものと認められる。

 以上からすると、「ぽん(ポン)」の文字は、本件商標の指定商品の分野において、商品の品質等を直接表示するものではないとしても、本件商標の登録査定時には、少なくとも「ぽん酢」又は「ぽん酢調味料」商品について、商品名の一部に採択、使用されており、本件商標の指定商品の取引者、需要者の間において、原材料にぽん酢が含まれているなど、ぽん酢と密接な関連を表す文字として一定程度、理解、認識されているものと認められる。

 4 商標法第4条第1項第11号該当性について

(1)本件商標について

 本件商標は、上記第1のとおり「だしまろぽん」の文字を標準文字で表してなるものである。

 そして、上記3においてした、認定、判断によれば、「ぽん(ポン)」の文字は、本件商標の登録査定時には、少なくとも「ぽん酢」を含む調味料の分野において、「ぽん酢」と密接な関連を表す文字として、一定程度、理解、認識されているものであるから、本件商標中、当該文字部分は、自他商品の識別標識としての機能が極めて弱い部分であると判断するのが相当である。

 そうすると、本件商標は、その構成中「だしまろ」の文字部分が、取引者、需要者に対し、商品の出所識別標識として、強く支配的な印象を与えるものと認められるから、「だしまろ」の文字部分を要部として抽出し、この部分のみを他人の商標と比較して商標の類否を判断することができるものというべきである。

 してみれば、本件商標は、その要部である「だしまろ」の文字に相応し、「ダシマロ」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。

(2)引用商標1について

 引用商標1は、上記第2のとおり「だしまろ酢」の文字を標準文字で表してなるところ、構成中「酢」の文字は、「3~5パーセントの酢酸を主成分とする酸味のある液体調味料」を意味する漢字(「広辞苑  第7版」株式会社岩波書店  発行)として我が国で親しまれているものであり、その指定商品との関係において、商品の品質又は原材料を表示したものと理解され、自他商品の識別標識としての機能を有さない部分であると判断するのが相当である。

 そうすると、引用商標1は、「だしまろ」の文字と「酢」の文字を組み合わせた結合商標であって、上記のとおり「酢」の文字部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められるから、「だしまろ」の文字部分を要部として抽出し、この部分のみを他人の商標と比較して商標の類否を判断することができるものというべきである。

 してみれば、引用商標1は、その要部である「だしまろ」の文字に相応し、「ダシマロ」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。

(3)本件商標と引用商標1との類否について

 本件商標と引用商標1とを比較すると、両者は上記(1)及び(2)のとおりの構成からなるところ、観念においては比較できないものの、「だしまろ」の構成文字及び「ダシマロ」の称呼を共通にするものであるから、外観及び称呼において相紛れるおそれのある類似の商標である。

(4)本件商標の指定商品と引用商標1の指定商品との類否について

 本件商標の指定商品中「ぽん酢,その他の調味料等」は、引用商標1の指定商品と同一又は類似するものである。

 しかしながら、本件商標の指定商品中、上記以外の商品については、引用商標1の指定商品とは類似しないものである。

(5)小括

 上記(1)ないし(4)のとおり、本件商標は、引用商標1と類似する商標であって、その指定商品中、「ぽん酢,その他の調味料等」については、引用商標1の指定商品と同一又は類似するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。

 しかしながら、本件商標は、上記以外の商品と引用商標の指定商品との関係においては、商標法第4条第1項第11号には該当しない。

 5 商標法第4条第1項第10号該当性について  略

 6 商標法第4条第1項第15号該当性について  略

 7 商標法第4条第1項第7号及び同項第19号該当性について  略

 8 商標法第4条第1項第16号該当性について  略

 9 商標法第3条第1項柱書違反について  略

 10 まとめ

 以上のとおり、本件商標は、その指定商品中、「結論掲記の商品」について、商標法第4条第1項第11号に該当するから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とし、その余の指定商品についての登録は、同法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号、同項第16号及び同項第19号のいずれにも該当せず、同法第3条第1項柱書の要件を具備するものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。(下線・着色は筆者)』(無効2021-890040)。

 

<所感>

審決は、本件商標「だしまろぽん」の「ぽん」に関して、「ぽん酢」の「ぽん」の文字を挙げて少なくとも「ぽん酢」又は「ぽん酢調味料」商品について、商品名の一部に採択、使用されており、本件商標の指定商品の取引者、需要者の間において、原材料にぽん酢が含まれているなど、ぽん酢と密接な関連を表す文字として一定程度、理解、認識されているものと認定し、自他商品の識別標識としての機能が極めて弱い部分であると判断した。そして「だしまろ」の部分が本件商標の要部であると認定して、引用商標1と類似とした。しかし、本件商標は「だしまろぽん」と平仮名文字で一連、一体不可分に表記され、文字数もさほど多くない。このような表示から「だしまろ」と「ぽん」を分離するのは、例え「ぽん」が「ぽん酢」の「ぽん」として使用されているとしても難しいのではないだろうか。むしろ「だしまろぽん」が一語として自他商品の識別標識としての機能を発揮するのではないだろうか。