蘇った椅子

 昨年の年末、椅子が蘇った。

 椅子2脚とオットマンの布地は色褪せ、多少綻びが目立ってきた。座面が歪んできている。使えないことないのだが、くたびれた感が全体に漂っている。もう何十年使用しただろうか。

 もたれた頭をしっかり支え、身体をすっぽり包み、座り心地が良い。背もたれ部分の角度が3段階に切り替わり、好みの体勢を選択できる。機能も使い勝手も極めて優れている。

 これらの家具は、仕事と子育てに奮闘している頃に出合った。大層気に入ったのに、椅子を横目に時は流れた。のんびりと座って寛ぐ余裕などなかった。

 それらの椅子は、何度かの引っ越しの度に運び込まれた。そして、退職後、椅子の利用度は一変した。テレビを見たり、お茶をのんだり、本を読んだり、昼寝梅したり、俄然椅子愛用生活となった。

 買い替えようと夫と一緒に何度も家具店に足を運んだ。好みの椅子が見つからない。現在の機能性のある椅子を手放したくないと思う気持ちが高まった。

 もう椅子の張り替えしかない。椅子張り替え店からの見積もり書を見ると、新しく購入した方がいいのではないかと思うほど高額であった。しかし、これまで好みの椅子を見つけられなかったのだと覚悟を決めた。

 多様な生地の種類、選択に迷う。光沢のある暖かい色合いの生地を選んだ。完成まで1カ月ほど要しただろうか。椅子が届いたののは12月24日。クリスマスマツツリーなどの飾りはない居間だけれど、蘇った優雅な椅子は豪華なクリスマスプレゼントになった。

 生涯共に過ごすことになりそうだ。

(2021、2、26)