ウクライナ軍、東部ブフレダルに遮断の危機 | すずくるのお国のまもり

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お国の周りでは陸や海や空のみならず、宇宙やサイバー空間で軍事的動きが繰り広げられています。私たちが平和で豊かな暮らしを送るために政治や経済を知るのと同じように「軍事」について理解を深めることは大切なことです。ブログではそんな「軍事」の動きを追跡します。

◎ウクライナ軍が2年堅守してきた東部ブフレダルに遮断の危機 増援余力はあるのか?

 

 

 ウクライナ陸軍第72独立機械化旅団はロシアによる戦争拡大から11〜12カ月目の2023年1〜2月に、東部ドネツク州の要塞都市ブフレダルの郊外で2倍の兵力を誇るロシア軍部隊を撃破した。
 それ以来、第72機械化旅団はブフレダルを堅持し、ウクライナのおよそ1000kmにおよぶ戦線の重要正面のひとつを守ってきた。ブフレダル周辺は、東西に伸びる南部戦線が北に折れ、東部戦線につながっていくちょうど角あたりに位置する。東部戦線はずっと北まで伸び、先端近くにはウクライナ軍が先月、ロシア西部クルスク州につくり出した1000平方kmほどの突出部がある。
 とはいえ、2年近くもブフレダルを守備してきた2000人規模の第72機械化旅団が疲弊してしているのは間違いない。一方、ロシア軍は攻撃を続けている。ブフレダルから第72機械化旅団を押し出すのに何度も失敗してきたロシア海軍第40独立親衛海軍歩兵旅団をはじめとするロシア軍部隊は、ここへきてブフレダルとその守備隊を迂回して遮断を図る行動に出ている。そして、それに徐々に成功しつつある。
 ほかの多くの正面で戦闘が鈍化しているのと対照的に、ブフレダル正面ではロシア軍がこの機を生かそうとしており、戦闘に拍車がかかる可能性が出ている。ウクライナの調査分析グループ、フロンテリジェンス・インサイトの創設者であるタタリガミ(@Tatarigami_UA)は、ブフレダル正面について「状況が急激に変動する可能性があるので目を離さないように」と注意を促している。
 ブフレダル周辺の地雷だらけの道路や平原は、攻撃してくるロシア軍部隊にとって“死の罠”になっている。ロシア側は数十両の装甲車両やオートバイ、バギー(俗称「ゴルフカート」)に乗って突撃することを繰り返している。ウクライナ側は地雷やドローン、大砲、対戦車ミサイルでその大半を撃破するということを繰り返している。
 だが、ブフレダルの周辺には比較的危険度が低いルートがある。町の北東数kmのボジャネ村を通る複数の道路だ。ロシア軍部隊は強力な滑空爆弾による航空支援を受けながら、ボジャネ村方面で進撃している。ウクライナのシンクタンク、防衛戦略センター(CDS)は23日の作戦状況評価で、同日にブフレダル周辺でロシア軍による突撃が6回あったと報告している。

 第72機械化旅団は、T-64戦車やBMP-2歩兵戦闘車、米国製M-109榴弾砲などを保有し、まずまず装備の整った旅団と言える。とはいえ、どんなに装備の整った旅団であっても前線を永遠に保持することはできないし、2年近くというのは旅団が全体規模の休みなしに戦闘を続ける期間としてはあまりに長い。
 同じ陸軍の第47独立機械化旅団に聞いてみればいい。第47機械化旅団は米国製M2ブラッドレー歩兵戦闘車の安定供給を受け、大隊の完全戦力を保ちながら(編集注:第47旅団は3個大隊に各30両のブラッドレーを配備している。米国はウクライナにブラッドレーを累計で300両以上供与しているが、ウクライナ軍の装備に関するルールにより、1個旅団に配備される数は最大100両ほどに制限される)、2023年6月からつい最近まで南部と東部でノンストップで戦い続けていた。だが、1年3カ月にわたる戦闘で疲弊した同旅団は、十分に装備の整った交替旅団が足りない状況にありながら、今月ついにローテーションで前線を離れた。
 第72機械化旅団は、一貫して兵力にまさる敵の大軍を相手に、前線の同じ町を2年近くも防衛し続けるという稀有な偉業を成し遂げてきた。その旅団がいま、交替とは言わないまでも増援を必要としている。
 しかし、どの部隊が増援に駆けつけることができるだろうか。ウクライナ軍は東部と南部を防御するのと並行してクルスク州に対する越境攻撃を始めた結果、戦力がますます薄く引き伸ばされている。
 ウクライナ陸軍は14個旅団の編成を進めているものの、現代的な車両が絶望的なまでに不足している。ボロディミル・ゼレンスキー大統領によると、現状ではわずか4個旅団分の車両しか確保できていない。