山口千尋監修「製靴書」を読みました。

 

本書は、地元の図書館で目に留まって借りてみました。靴磨きを趣味にしている私も楽しめるかもしれないと思って。

 

手づくりの靴を作る

 

監修の山口氏は、いわゆるオーダーメイドの靴づくりの第一人者。NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」でも取り上げられた方です。本書では、靴の製作過程を写真と文章で詳細に書かれ、物凄い手間をかけて作られているのがよくわかります。

それぞれの足には個性があって、それを考慮して作っていく靴。その靴は、機能美と嗜好品の極致のように思えてきます。

 

【私の感想】

私は、靴磨きは好きだけど、靴づくりに挑むのはとても無理だとわかりました。足の型を取り、そこから木型を作って、包み込むようにパーツを作っていきます。その工程は、私には途方もなく感じられました。工程のひとつひとつに熟練の技があります。プロの技術は物凄く奥深いです。

すぐにはできませんが、プロに作ってもらう靴に憧れを持ちました。

 

スニーカーは革靴より楽だから足に良い?

 

子どもの頃は、親から与えられた靴が必ずしも成長に合ったサイズではない場合が多い。結果的に、きつくないややルーズなものを履くことが多くなり、そのルーズさが心地よいと感じるようになる。そのルーズさゆえに靴が型崩れして自分の足にフィットした感覚が心地よいと感じてしまう。

 

そもそも靴にとっても最重要事項は、「その人の動きの妨げにならないこと」です。ですから、走るときはランニングシューズを履くべきで、「革靴で走ってください」なんて思いません。しかし履く目的が変わると、ランニングシューズより革靴のほうがその人の歩行を助けるということも起こります。靴にはそれぞれ目的があって然り。それぞれの競技に特化して作られた靴が、決して日常生活の中で足の助けになってくれるものにはなりません。

 

たとえば、靴底のクッションが過度になってしまうと。足が本来持っているクッション性がなくなってしまう。これが一番の欠点です。

 

【私の感想】

目的にあった靴を履こう、というメッセージと受け取りました。ランニングシューズを仕事用に履いたり、バスケット用のシューズで街歩きしたり、ファッションとしてはカッコいいのかもしれないけど、それを日常にしてしまうと、本人のもっている機能を落としてしまう。それを納得しました。革靴には、「スーツを着たときにいかに美しく見せるか」という使命があり、そのように作られている。だから踵がすり減るのは当たり前で、歩くにはそこが邪魔になるわけで。革靴をある程度履いたら、踵を補修するのは当然の使い方だと思いました。

 

靴ベラの正しい使い方

 

靴ベラを踵から縦にぎゅっと深くにまで差し込んで靴を履いている人を見かけます。これは正しい方法ではありません。実は靴ベラはかかとの内側にほんの少し当てる程度で良く、先端を5mmくらい差し込むのが理想的です。

 

また、足は靴に対してまっすぐ入れるのではなく、足の外側から内側へ回転するように入っていきます。ですから、靴ベラで少しフォローしてあげればよいのです。

 

シューツリーも外側から内側へ回転しながらのほうがスムーズに入る。

 

【私の感想】

私は何冊も靴の手入れに関する本を読んできましたが、この靴ベラの正しい使い方についての記述は、一番わかりやすく入ってきました。「外側から内側へ回転して入れる」それを意識してみます。そのように靴を取り扱うと、長持ちして、よい経年変化が楽しめる感じがします。靴についた皺や傷も含めて、自分とともに歩んだ靴をいとおしく感じますが、それも良い使い方をしてこそ。実践していきます。

 

ありがとうございました。