矢野龍彦ら著「ナンバの身体論 身体が喜ぶ動きを探求する」を読みました。

 
image

 

 

本書は、裸足ランを実践している方がfacebookの投稿で「ナンバの動き」について触れていたことから知りました。

 

私は最近、「スネの太い方の骨に体重を乗せる」という学びから、力を抜いて姿勢良く立つコツがわかってきた感覚があって、嬉しくなっています。それに気をよくして、力を抜いた効率的な動きをもっと日常に取り入れたいと思うようになりました。本書は、そのヒントをくれました。

 

「ナンバ的動き」は、かつての日本人には一般的だった

 

「ナンバ歩き」「ナンバ走り」といわれているものは、単に右手右足、左手左足を同時に動かす動きではない。右足が前に出るとき右腕を前に出し、右半身全体が前に出ているような動きに加え、身体内部(胸郭ボックスや骨盤ボックスのこと)を器用に使い、全身を動きに参加させる。それによって、身体の「捻り」や「うねり」を極力抑え、身体を前傾することで連続的に重心を前に崩して進んでいく。

 

江戸時代までの日本人の一般的な歩き方はナンバであった。ナンバで歩くことの一つの利点として、着物が着崩れないということが挙げられる。また、身体を捻ったり、うねったりすることが少ないので、内臓の血流が悪くなったり、関節部分に負担をかけることなく長時間労働が可能になる。

 

各分野の匠と呼ばれる人々は、ナンバ的動きを修行の中で感覚的に身につけ、自然に行っていると考えられる。長年に及ぶ修行の中で、身体は自然に効率的な動きを試行錯誤し、ナンバ的な動きにたどり着くのだろう。

 

【私の感想】

ナンバ的な動きを意識することで、今より効率的な動きを身につけられる可能性を感じて、ワクワクし始めました。私が学んだことがある「チーランニング」でも、身体を前傾させることを前に進む推進力に変えるような動きを教えていました。私は理学療法士の資格を持っていますが筋トレをするのが苦手なので、「ナンバ的な動き」を学んで、歩きや走り、日常動作を「疲れにくい動き方」にしていこうと思います。

 

 

「ナンバ的な動き」のポイント

 

著者らは、甲野善紀氏より古武術の身体の使い方からヒントを得た。それは、スポーツや日常生活の中で、できるだけ「捻らない」「うねらない」「踏ん張らない」動きの模索であった。そこからでた動きを「ナンバ的動き」と呼んでいる。

 

手をどのように振るか、振らないかという以前に、身体全体をなるべく捻ったりうねったりしないことをポイントとしている。

「捻らない」

急な階段や上り坂では、自然と身体が前傾して腿の上に手を添えて歩くようになる。こうすることで体を捻らない動きになる。体幹部の捻りは、内臓、腰に負担をかける。足先と膝の向きがずれる捻れは、膝や足首のケガの原因になる。

 

「うねらない」

うねっているというのは、肩~肘~手首の順に動きが伝わっていくこと。物を投げるときは、力を順番に伝えて動かすのでなくて、肩・肘・手首をなるべく同時に動かし、少ない努力で早く大きな力を出す。

 

「踏ん張らない」

呼吸を止め、歯を食いしばり、全身の筋肉に力を入れっぱなしの硬直した状態を踏ん張っている、という。動きの中では呼吸を止めてはいけないし、歯を食いしばる必要もない。

 

【私の感想】

本書の文字や写真だけではイメージしにくいと思い、YouTubeで「ナンバ歩き」と検索すると沢山の動画が見られました。たしかに、坂道や階段を上るときに、ナンバ歩きが楽そうに見えました。そのポイントは、「捻らない、うねらない、踏ん張らない」で、言葉で読むと納得いくような気がするのですが、ではどうやって動けばいいのか、まだわからず、もう少し動画を見てみようと思います。

 

 

ナンバ的動きの練習方法

 

まず胸郭や骨盤を動かしてみて、その部分が動き、変形するということを自覚することが、ナンバ的な動きを行うための基本となる。胸郭にしても、骨盤にしても、大切な内臓を収めている容器であるが、固定された一枚岩ではなく、動くという認識が重要である。

 

「胸郭ボックスをつぶす」

胸郭ボックスとは、肋骨と肩甲骨を含むろっ骨周辺すべてのこと。胸郭ボックスをつぶすことができるようになると、腕や指をより自由に動かせるようになり、首から肩にかけての緊張感もなくなる。

座った状態で腰を固定して、肩のラインを水平に保ったまま左右に移動する。そうすると、背面からみて、長方形の胸郭ボックスが平行四辺形に潰れる。

 

「骨盤歩き」

長座して、右足を出すときは左半身全体を使い、右足を出すときは右半身全体を使う。左右の骨盤をそれぞれ引き上げるときに、骨盤ボックスと一緒に胸郭ボックスも潰れる。この骨盤歩きは、ナンバ歩きの導入に非常に効果的である。

 

「ナンバ歩き」

立った状態から前傾を行い、自然に足が出たところで歩き始める。一番大事なのは、歩くときに肩のラインと腰のラインがクロスしないということだ。言い換えると、腹部を捻らないということ。できるだけ肩のラインと腰のラインを平行に保つように歩くのが、ナンバ歩きのコツである。

 

ナンバ的な動きの練習を始めると、身体のあちこちに違和感を覚えるかもしれない。そのときに必要なのは身体との対話だ。本当にこの動きのほうが楽なの。本当にこの動きのほうが自然なのと、身体に問うことが大事なのである。

 

【私の感想】

ナンバ歩きをやってみましたが、まだぎこちなくて変な感じがして続きません。「骨盤歩き」が有効とのことで、それを取り入れてみます。そういえば、「骨盤歩き」は、大腰筋トレーニングに有効だと、久野譜也先生も言っておられました。疲れにくい体を作ろうとすると、身体の中心を使うところにいきつく感じがします。手足を踏ん張ろうとせず、胸郭と骨盤を動かすところから、身体全体を使うようにすることだと理解しました。

 

ナンバ的な動きが「楽で」「自然な」動きの追求するところが、踏ん張ってやるトレーニングが続かなかった私に合っている気がしています。

 

ありがとうございました。