骨格筋は食後のインスリン刺激による血糖の取り込みの上でとても重要です。この骨格筋の糖の取り込みが糖尿病患者においては健常者と比べて明らかに低下していることが、糖尿病患者の食後高血糖の大きな原因の一つとされています。
インスリンが筋肉でその作用を発揮するためには、最初に筋細胞を栄養する微小血管系にインスリンが運ばれ、次に血管内皮を通って筋間質に運ばれる必要があります。この二つがインスリンが働くための律速段階となります。
最近の研究で筋肉のインスリンの働きにおいて筋微小血管が重要な役割を持つことがわかってきました。運動も筋微小血管の血流量を増やすので重要なのですが、GLP-1は直接血管内皮のレセプターに働き、血管を弛緩させて血流量を増やしインスリンの効果を増強してくれます。
糖尿病患者における骨格筋での糖の取り込みの低下は、運動不足が主因ではなく、このGLP-1の分泌低下によってインスリンの作用が落ちていることの方が影響していたようです。
更には神経や腎臓、眼などにおこる糖尿病の合併症は微小血管の障害が原因ですから、GLP-1の分泌が低下しその血管弛緩作用が低下してしまうことが大きな原因の一つなのかもしれないと考えると、血糖をコントロールするだけでは糖尿病の合併症の予防にはならなかった理由としてもつじつまが合います。
合併症予防の観点からもGLP-1を増やす食事療法に焦点をあてるべきだと思います。
年齢に伴う筋肉量の低下を防ぐためにも、その重要性は糖尿病でない健常者においても当てはまるはずです。また、筋トレをしている人にとっても役立つ知識だと思います。
追記
高血糖の記憶などというのは、糖質制限で合併症が予防できないことから考えだされたもので、根拠がありません。