黒猫物語 浮舟の選択 小景 綺麗な僕‥‥‥
2016-04-02 03:25:55
テーマ:クロネコ物語

この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。






仄明かりに
お前は打ち伏している。
汗に濡れ
上下する背が艶かしい。


肩に手を添え
そっと返せば俺の情欲を滴らせながら
微かに唇を開く。


その唇に唇で応じる。
舌は優しく絡み合い
ピンクに色づく唇は震える。


海斗のものになれた?

ああ
俺のものだ
もう逃がさない。

逃げたりしない
愛してる‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥



仄暗がりに二人の情欲の匂いが立ち込める。
その匂いに抱かれ
お前は囁く。


愛してる
愛してる海斗‥‥‥



浴衣に包み
抱き上げれは
足先だけが
藍に覗く。


‥‥‥‥‥‥‥‥‥白い。
行灯に浮かぶその足指は、
そのときに震えていた。


胸に寄せられた顔は
薄暗がりに沈んでいる。


病み上がりのお前を
責め苛んだ。
小さな声が掠れていた。



可哀想に‥‥‥‥‥‥。

半ば意識を失っている瑞月の四肢は
人形めいて小さく包まれている。


決めたはずなのに
胸が傷む。
お前には酷な儀式だったかもしれない。



‥‥‥‥‥‥お前は俺のものだ。
揺らぐまい。


襖を開ければ
廊下は
既に夕闇に包まれていた。







桧の匂いだ
‥‥‥‥‥‥お風呂?



パチャン‥‥‥

誰かの手が
優しく頬に触れる。


海斗の抱っこだ‥‥‥‥‥‥。
僕は抱っこされてる‥‥‥‥‥‥。
あたたかい‥‥‥‥‥‥僕の居場所‥‥‥‥‥‥。


僕は目を開く。
ひどく心配そうな海斗が見えた。

「瑞月‥‥‥苦しいか?」



くるしい‥‥‥‥‥‥‥‥‥?
僕‥‥‥くるしいかな‥‥‥?


海斗が
僕の手をとる。

脈を測ってるの?


海斗の手の中にある僕の手‥‥‥‥‥‥
小さいや。

ううん‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥白魚‥‥‥だよね、咲さん。

細い細い指。


甲から指先まで
すっと
伸びてる。




指の間を海斗の舌が舐めあげた。
一回‥‥‥
二回‥‥‥
三回‥‥‥‥‥‥
頭の芯まで痺れた。


本当だ。
綺麗だ。
ほんとに綺麗‥‥‥‥‥‥‥‥‥。




「海斗‥‥‥」
大好きな人を呼ぶ。

海斗が
僕を
見る。


目が止まる。
吸い付いたように離れない。
驚いたの?

海斗の目に映る僕がわかる。
凄く綺麗なんだ。



海斗‥‥‥
そんな
知らないものを見るような目で見ないで。
僕は瑞月‥‥‥海斗の恋人だよ。





信じられないほど妖艶な生き物が
俺の唇に唇を重ねる。


苦しいよ
海斗が欲しくて苦しい‥‥‥‥‥‥‥‥‥。


甘い囁きが
耳をくすぐる。



絡み付く腕
その舌は俺の舌を愛撫する。
俺は酔いしれる。




お願い‥‥‥‥‥‥

掠れた微かな声に
華奢な下肢は開かれ
湯の中に揺らめく。




誘惑に目が眩む。


見てはいけない。
聞いてもいけない。



俺は
瑞月を抱き締めた。


「我慢おし。

お前は
俺のものだろ?

言うことを聞け。」


世界で一番綺麗な俺の恋人よ
お前は
世界で一番危ない恋人だ。



無茶をさせようとするな。
体が壊れてしまう。





お前は
腕の中でもがき
笑いながら
応えた。

「わかってる
叱ってほしかっただけ」

思わず
腕を緩めると
お前は俺を見上げて言う。

「今夜だよね」





そうして
小首を傾げて笑うんだ。


「僕の中に
海斗がいるよ」


俺は
もう一度抱き寄せる。



パチャン‥‥‥。

瑞月は素直に身を預ける。




「一緒にいる」

「うん

‥‥‥うん、海斗‥‥‥。」



瑞月
いい子だ

お前は俺のものだ。
俺はお前のものだ。

もう
わかったな

それだけを覚えておいで。


画像はお借りしました。
ありがとうございます。