最近の住宅建築を見ると、大半の新築住宅の内装は、このような内装です。
リビング・ダイニングの内装は、天井は、ビニルクロス(塩化ビニルクロス)で、天井と内壁の接点のコーナーは、塩化ビニル製の廻り縁造作材か、天井のビニルクロスと内壁のビニルクロスのコーナーの接点をコークボンドという、コーキング材で処理をしているかで仕上げています。
内壁の仕上げ材は、日本ではクロスというと、ビニルクロスと素人の一般ユーザーまで思い込んでいるほど普及している塩化ビニルクロスで仕上げられており、床材も、一般のユーザーは、「木の床材」と思い込んでいますが、最近のユーザーは、均一を求めるので、床材の基材は、特殊MDF(中質繊維板)の上に、表面材として特殊オレフェンシートか、特殊強化フィルム、特殊加工化粧シートのフーローリングが大半で、無垢材のフローリングを使用していることは、指定しない限り無垢材(輸入材または国産材も含めて)のフローリングを使用されることは少なく、国産材の桧や、杉のフローリング、栗やナラ、ケヤキなど無垢のフローリングなどは皆無に近い状態なのではないでしょうか。
現在供給されている戸建て住宅やマンションの床材の表面は、特殊シートが貼ってある、木質調といわれるシート建材です。
床と内壁の接点のコーナーは、これも、塩化ビニル製の幅木で処理されています。
サッシの枠も、塩化ビニル製です。
まさに、塩化ビニルの袋の中に、生活している状態です。
クローゼットの写真も、床、内壁、天井、クローゼットドアまで、塩化ビニル漬けになっています。
これらの内装材を使用すると何が問題なのかは、多くのユーザーは、住宅内の空気汚染に気づかずに、日本ではどこでも目にする内装建材なので、化学物質を使用しているという意識が、工事業者にも、一般ユーザーにも、意識が薄く、気づかないうちに暴露し、汚染された空気を体内に取り込んでいるのです。
東京都衛生研究所で、完成したばかりの新築木造住宅の室内空気を調べた結果、フタル酸エステル類7種と、有機リン化合物8種が検出された例もあります。
この中で、最も濃度が高かったのは、フタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)で、1立方メートルあたり1046ナノグラム、次がフタル酸ジ-n-ブチル(DnBP)で、871ナノグラムが測定された例もあります。
フタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)は、プラスチックや、塩ビ製品を柔らかくするための可塑剤として含まれていますが、容易に遊離して、室内環境に放出されるのです。
それらの、合成化学物質は、内分泌かく乱物質(endo-crine disruptors)なのです。
内分泌かく乱物質は、一般に、「正常ホルモンの産生、分泌、輸送、代謝、排出、レセプターへの結合、作用などを阻害し、それを通じて生体に健康被害をもたらす外来性の化学物質」と定義されています。
わが国では、ふつう、「環境ホルモン」と呼ばれています。
内分泌系のかく乱によって、生ずる健康被害は、生殖毒性、発生毒性、行動毒性、発がん性などの多様なかたちで現れるのが特徴です。
千葉大学大学院医学研究院の戸高先生も自著の「化学物質の反乱」の中でも書いているように、
「日本国内における出生児の先天異常の発生率は約0.9%である。
毎年、約100万人の赤ちゃんが誕生しているので、毎年約1万人の人に生まれてすぐわかる外見的な先天異常が発生していることになる。
しかも、その後の成長とともに、外見からはわからなかったホルモン分泌の異常や内臓の異常、精神・知能の異常などが見つかるので、学童期までに約6%の子供たちに先天異常が見つかっている。
これは決して無視できるほど小さなリスクではない。
因果関係が明らかでなくとも、個人的レベルで化学物質への暴露を減らすことによって、将来、化学物質が原因で、先天性異常を背負うことになる子供たちとその家族の数を1%でも減らすのが私のテーマであり、願いでもある。」
と、述べていますが、まさに、私どもが、第三の皮膚と言われる住宅において、出来るだけ、化学物質を使用した建材を排除し、健康な住空間を造ることが、国産材の木材にこだわり、接着剤から、塗料等々と、こだわるのがその精神です。
私個人的には、住宅において、これだけ多くの、塩化ビニル漬けの家を造り、一般ユーザーの建築主も、疑問を抱かずに、住まい続けているのには、驚きです。
それだけでなく、我々、日本人はきれい好きなのか、あるいは、ユーザー受けが良いから使用するのか、身近なところに、あらゆるところに抗菌・防カビ処理・建材を使いまくるのです。
「抗菌防臭加工」「抗菌防カビ加工」「ぬめり防止」「黒ずみ防止」「防虫防カビ加工」など、ありとあらゆる家庭用品に抗菌・防カビ加工がなされています。
抗菌防カビとは要するに細菌やカビの増殖を抑え込むというものです。
しかし、細菌やカビも人間と同じ「生き物」であり細胞のつくりは基本的に変わりません。
細菌やカビの増殖を抑えたり、殺したりするのに「人間の体だけには悪影響が出ない」と、そんなに虫のいい、都合の良い話はあるわけがありません。
人間も生物であり、その体もその周囲も細菌だらけなのです。
ほとんどの細菌は無害ですし、人間に利益をもたらしてくれるものも少なくありません。
そして、人間も生物体の一生物であり、何十億という細胞とDNAで成り立っているのです。
そもそも人間の体は微生物とのバランスの上に成り立っています。
抗菌・防カビ製品はそのバランスを崩す恐れがあります。
抗菌剤は人体にとって毒性物質なので、極微量で免疫を刺激しアレルギーや、さらには化学物質化敏症をも引き起こす可能性があります。
耐性菌を誕生させる恐れもありますし、常在菌を殺してしまいます。
常在菌は無害どころか、病原菌の侵入を防ぐことで体を保護しています。
抗菌剤で常在菌を殺してしまえばバリアーがなくなり病原菌に対して無防備になってしまいます。
抗菌性の靴下を履き続けた場合、水虫菌の進入を受けやすくなりますし、肌着を身につけることでタムシやインキンなどになりやすくなることも十分考えられます。
特に「キレイ キレイ」などで全身殺菌する必要はどこにもありません。
O-157騒ぎで市場が過敏状態にあるとき、消毒剤や薬用石鹸などの売り上げが急増しました。
全身を殺菌する薬用ボディシャンプーを売り出せば間違いなく売れると思ったのでしょう。
「キレイ キレイ」に限らず市販のボディシャンプーには危険性のある物質が多数含まれています。
それは、安息香酸、安息香酸塩、パラベンなどの保存料、そして、細菌の増殖を抑えますが基本的に毒性物質です。
エデト酸塩は発がん性が疑われています。
2010年9月には、抗生物質の効かない耐性菌が、入院患者に感染し、死亡してしまったニュースは皆さんも覚えていることと思います。
細菌も、抗菌、防カビ材に少しづつ耐性を持ち、より強くなり、私達人間に感染してくるのです。
しかし私達は、キレイ、キレイで、逆に免疫力は低下し、耐性がなく弱くなってしまっているのです。
抗菌・防カビ製品はほとんど使われている抗菌剤が表示されていません。
これはなぜかというと、表示を義務付ける法律がないからです。
食品に使われる食品添加物の場合食品衛生法により表示が義務付けられていますが、建材は規制外です。
医薬品の場合、薬事法によりやはり表示が義務付けられています。
家庭用品の場合は家庭用品品質表示法により、製品の成分・用途・その他品質に関するものを表示することが義務付けられていますが、抗菌剤は表示の対象になっていないのです。
メーカーに問い合わせをしても、企業秘密をたてに教えてくれません。
「清潔」、「安全」、「安心」、「健康」と言うキャッチフレーズが、一般ユーザー受けが良いのか、そうすることで売れるのか、建材にも、抗菌性の機能を付加した建材が多い。
しかし、化学物質過敏症などの健康被害も発生の報告もされているのです。
さらに、2月頃になると、花粉症の事が、TVや新聞などのマスコミが取り上げ、杉の木が悪者のように報道されますが、実は、住宅の空気汚染を物質に、リン酸トリブチル(TBP)が検出さたのをはじめ、有機リン系の難燃剤も検出されるのです。
実は、花粉症と有機リン系との関係も指摘されているのです。
建材から発生する、内分泌かく乱物質=環境ホルモンは、私たち、人類の未来に多大な影響があるにもかかわらず、コストが安く、簡単、安易な工事が可能と言うことで、世界の非常識な、塩化ビニル漬けの住まい造りがされ続け、未来への子孫に多大は悪影響を与えるかもしれないにもかかわらず、国も見て見ぬふりをし、さらに、震災の多いこの日本で、事が起こったときには、外で、暖をとったり、煮炊きの薪にも使うことの出来ない建材だけで、なぜなら、塩化ビニルの混ざっている建材を燃やすとダイオキシンが発生するのです。
昔のように、薪になるような、自然の木材や、建材が、一切れも使われていないため、塩化ビニル系の混ざったゴミがうずたかく積まれ、これらのゴミは「土」にも還らないゴミとして、大地を汚すだけなのです。
日本の山には、使ってほしい国産材が沢山あるのに、輸入材を使い、内装材は、国産材をはじめ、しっくい、和紙など、自然素材にあふれているのに、ただ、目先の安くて簡単にとらわれ、住文化や、職人の育成もままならない建築の有り様は、どうなのでしょうか。
建築に携わるものはもちろん、一般ユーザーの方も目先の安さにとらわれず、健康で安全な家造りをすることが家族を幸せにするとともに、未来の子孫に、健康を送り届けることが出来るのです。
関連ブログ
私たちは、なぜ、ビニル壁紙を使わないのか!・その1
http://ameblo.jp/suzuki-naturaldesign/entry-11993639453.html
も、良かったら読んでください。
参考・参照文献
化学物質の反乱 千葉大学大学院医学研究院 戸高 恵美子著
有害物質小事典・改訂版 泉 邦彦著
株式会社スズキ建築設計事務所
取締役相談役 鈴木 明
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