蓼食う虫はいい男、食われる蓼は醜女で深情け | kanotomiuozarainenkokidesuのブログ 人呼んで筍医者 田杉白玄

蓼食う虫はいい男、食われる蓼は醜女で深情け

いつの世も色恋沙汰は御座います。当たり前の男と当たり前の女の色恋は当人以外は面白くもへったくれも御座いません。田杉白玄先生のお好みは面白い色恋沙汰なのです。弥吉は芝居役者にしたいような良い男。いつも女が群れていて、入れ喰い状態。そんな色男の弥吉が田杉白玄先生を訪ねて来た。「よう、色男、女殺し、ゆんべは何人殺した」「物騒な事、言わないでくだせえ、岡っ引きの耳に入っちまったら、しょっぴかれ、ちまいますよ」「よそから聞いたんだけど、弥吉さんが女に跨がって、何を突き立てるんで、女が死ぬ、死ぬと騒ぐのが外まで響き、岡っ引きが乗り込んで来たら、女が白目を剥いて、助けてって岡っ引きに言ったので、弥吉さんは褌無しでお白砂に引っ立てられた。その時、奉行が逸物で女を殺すとは天晴れ見事。逸物大明神と命じると言ったそうじゃないか」「女に振られっぱなしの、松が言いふらした冗談ですよ。冗談だと分っていても、面白えから、広まっちまったんです」「モテル悩みか、面白くねえ話だな、今日の自慢は何だい」「自慢話など、ありませんよ。良い女は飽きちまった」「それが自慢話に聞こえるんだ」「そうですかい、あっしは良い女より不細工な女の方が好みなんですよ」「蓼食う虫も好き好きと言うから、弥吉さんみたいな男もいても可笑しくねえ」「そこで先生は顔が広いようなので、これと言った蓼を紹介して欲しいので、ここに来たて訳です」「居ることは居る、極上な蓼がいる」「極上な蓼がいるんですか、仲を取り持って下さえ」「でもなあ、極上の蓼は面倒だから、勧められない」「どう面倒なんです」「紹介しようと思ったお惠は醜女だ」「蓼は醜女と相場が決まってるでしょう」「まあ、そうだが、そんじょそこらにいる醜女とは大違いの横綱、醜女なんだ」「それは願ったら叶ったり、極上物ですね。会うのが楽しみだ」「それともう一つ、深情け」「深情け?」「醜女の深情けって言葉があるだろう。深情けも極上物だと思うよ。生まれてこの方、男つ気無し。初めての男が錦絵に出てくるような良い男となると、深情けも尋常じゃなくなる。悋気の塊になる。雌猫が弥吉さんのそばに来るだけで、悋気を起こすんだ。逃げようとしてもかじりついて、離しはしない。地獄の果てまで囓りつく、よした方がいいよ」「面白そうだ。田杉白玄先生、醜女で深情けのお惠に会わせて下せえ」よした方がいいよと言いながら、田杉白玄先生、二人のこれからを見てみたいので、色男弥吉に醜女のお惠を会わせた。先生の懸念は見事に当たり、弥吉はすぐさま、深情け地獄に落ちてしまったらしい。松っあんが田杉白玄先生を訪ねて来て「先生でしょう、弥吉に醜女のお惠を紹介したのは、弥吉がはばかり「便所」に入っると戸の前で見張りをしている。自分が入る時は戸は開けたままで、弥吉の褌を握って離さない。だから、弥吉のそばには女がいなくなりました。先生のお陰です有り難うございます」「何で松っあんが礼を言うんだ」「先生のお陰で女が一人、あっしのとこに、やって来たんですよ」「棚からぼた餅、蓼食う虫も好き好きって事だな」