「天の雫 鳳の木」。 | 机の上のちいさな箱

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素朴な日々の暮らし。



ずいぶんと時間が経ってしまいましたが
9月に読んだ本のことを書きます。



「天の雫 鳳の木」喜咲冬子 ポプラ文庫



八穂島(やちほのしま)という
九州に似た雰囲気の島がありました。
島にはいくつも国があり
多くの人が暮らしています。

八穂島の東地域にある
天壺国(あまつぼのくに)
物語の舞台です。

天壺国には鳳山(おおとりやま)という
薬の技術を守り伝える場所があります。

そこでは、薬草への鋭い感覚を持つ
小さく短命な種族「雛子(ひなこ)」が
生涯を薬道に捧げて生きていました。

主人公は雛子の中でも
優れた能力を持つ「匙子(さじこ)」イトナです。
匙子には、人間の薬師と
鳳山の主である斎宮を助ける
特別な役目があります。

斎宮、未央の悲願は
伝説の秘薬「天の雫」を復活させ
その権威をもって
東方の国々の混乱を鎮めること。
イトナは未央の思いに賛同し、
力を尽くすと約束し
特別な絆で結ばれます。

その中で、隣国との戦や
歴史に深く隠された真実を巡り
イトナと未央に
様々なことが降りかかる…

というのが大まかな流れです。



日本神話(古事記)がベースにある物語です。

 
*―――――*―――――*

物語の中で大きな位置を占める
雛子、匙子という存在。
その在り方には 天壺国の建国神話に
隠された 大きな秘密に関わっています。
歴史の中に巧妙に組み込まれ 
 ”神々しい良い話” と思わせるようになっています。


匙子であるイトナが
真実を知った場面は
読んでいて辛かったです。



本当のことを意図的に隠されていたことを知った時、
平気な顔をして嘘をつかれていたことを知った時、
その時に感じる 憤り とは
どんな構造で、その正体は何なのか…

読みながら考えていました。


イトナは、とても辛かったと思います。
この感情は実際に体験してみないと
本当には理解できないものだと思います…


実は この本を読んでいた頃、
私自身も似たような感情があった時期で
色々と考えてしまいました。


最後、イトナが匙子の在り方を
傷つきながら受け入れ
自分なりに昇華して、
大きな一歩を踏み出したことに
とても心を動かされました。

そして、斎宮 未央も
悩み苦しみながらも、
イトナと一緒に一歩踏み出したこと
とてもとても感動しました。

最後は切ない終わり方でしたが
それがとてもいいいな、と思いました。

 


*



そして、今回 自覚したのが、
私はアンハッピーエンドが嫌いじゃないということ。
好きな物語のいくつかはアンハッピーエンドです。

例えば、
「未必のマクベス」「レーエンデ国物語」etc.

どうしようもなく救いのないバッドエンドや
アンハッピーエンドではなく、
少しの希望や救いがある、アンハッピーエンドが
かなり好みなのだなあ と気が付きました。


*



 悔いなく死にたい。この道を選んでよかったと思いながら死にたい
どれだけ胸が痛もうと、夜に一人涙をこぼそうとも、前に進まねばならない。それが自らの道を選んだ者の務めだ、とイトナは思った。
         第一章 里の奇病 P87〜88





*―――――*―――――*―――――*―――――*



年末が近づいてきて
今年のBest本を考える時期なのですが、
はっきりと浮かぶものがなく…
(いくつかぼんやりと浮かびますが…)


今年の分は書かずに終わるか…
もしくは来年になるか…
どちらにしても Best本の記事は
今年中のアップはなさそうです。


そんな年もあってもいいかな、
そんな感じで思っています。

 
*


今朝、今年のノエルを飲みました。
おいしいコーヒーは嬉しいものですね。*

明日の朝のコーヒーを
楽しみにして 夜 眠りにつく
気持ちを思い出しました。

そんな気持ちで今月を過ごしたいです。





今日もお立ち寄りくださり
ありがとうございました。*



寒さが厳しくなってきましたね。
暖かくしてお過ごしください*




如奈。