5月14日の総選挙により、連立政権を組む運びとなった前進党。

上院議員も含めての国会での首相指名投票で、党首のピター・リムジャルーンラット氏（42歳）が総理に選ばれるかどうかに注目が集まっています。

多くの上院議員が前進党について懸念していることは、同党が王室制度改革を政策に掲げているから。

かつての軍政により、2019年に選出された上院議員250人は現在の国体護持派がほとんど（全員といっていいかも知れません）のため、王室制度改革を訴えている前進党には警戒感があるのです。

警戒感…。

タイの上院議員以外にも、前進党政権の成立に危惧を抱いているところがあります。それは、ミャンマー軍事政権。

現在のプラユット政権は、2014年5月の軍事クーデターによって成立した軍事政権の流れにつながっていますから、2021年2月にクーデターで実権を握ったミャンマー国軍と近い関係にありました。タイもASEANの加盟国ですから、表向きはASEANのミャンマー軍政に対する姿勢（民主派政権との和解を求める姿勢）に賛同していますが、ASEANの対ミャンマー方針を決める議論の過程においては、ミャンマー軍政を擁護する主張が目立っていたのです。

しかし、民主派である前進党、貢献党が中心となってタイ政治を主導するようになったら、これまでの対ミャンマー外交が変容していくことは必至。ミャンマー軍政が懸念している理由です。

これまでにピター党首は、「ミャンマー問題については、ASEAN諸国が合意し、ミャンマー国軍、民主派双方に提示している項目の推進に力を入れる」と語っています。ASEAN諸国の中で、ミャンマー軍政に厳しい姿勢である国々はマレーシア、インドネシア。シンガポールもやや厳しい姿勢を示しています。一方、寛容的な姿勢を取っているのは、タイ、カンボジア、ラオス。そのため、もしタイがマレーシア、インドネシアと歩調を合わせるようになったら、これはミャンマー軍政にとっても大きな頭痛の種になります。

ミャンマー国軍は、すでに各軍に警戒を強化するように指示し、前進党が政権を担った場合の政策変更について研究を始めているようです。

Myanmar puts troops on alert after Pita's statements | Thai PBS World : The latest Thai news in English, News Headlines, World News and News Broadcasts in both Thai and English. We bring Thailand to the world

ピター党首が総理大臣に選ばれて、連立政権が成立したら。

タイの王室護持派ばかりでなく、ミャンマー軍政幹部も安眠できなくなるかも知れません。

下の写真は、ミャンマー軍政トップのミン・アウン・フライン総司令官（左端）とタイのプラユット首相（右端）。これまで何度も会談を重ねています。

ミャンマー軍政にとっても、心配のタネ