タイは酒類販売に時間的制約を設けています。
量販店、コンビニ、レストランを含めすべての店舗が酒類を販売できる時間帯は、
①11時~14時 ②17時~0時 です。すなわち、14時を1分でも過ぎたら、販売が再開される17時まで待たなければなりません。
但し、すでに購入しているものであれば、何時飲んでも違法ではありませんし、レストランの中には特別な許可を得て①、②の時間帯以外でも酒類を提供しているところもあります。それに、街中にあるレジのない個人商店では、販売のできない時間帯であっても知らぬ顔して売ってくれるところもあります。これはほんとうは違法行為ですが、マイペンライ、気にしない、気にしない。
酒類に関しては、実は広告にも制約があります。
政府機関である「国家放送委員会(NBTC)」から免許を取得している放送事業者は、酒類の映像を放映してはいけない決まりになっているのです。
そのため、たとえば「シンハー」や「チャーン」など大手ビール会社のテレビ広告は、ソーダ水の気泡映像や自社マーク、あるいはノンアルコール・ビール瓶(これは放映可能)を前面に出したコマーシャルを放映しています。大手はすでに十分過ぎる知名度があるから、商品であるビールを直接映さなくても、イメージ映像だけで広告として効果があるんですね。
しかし、それで困るのは中小の事業者。
タイにだって、地ビールを製造している業者がいます。ワインを醸造しているワイナリーもあります。こうした事業者は、全国的に有効な広告を打つことができず、自社のサイトが主要な宣伝リソースとなりますが、これは「知名度」をあげるという視点からは、大きな課題となっています。知名度が上がらなければ、量販店と取引することも難しい…。
これでは名の知られた大手事業者ばかりが優位となり、新規事業者が参入するのに不利。
5月14日の総選挙で勝利した前進党は、この規制に手を入れ、新規事業者が参入しやすい環境を整えるとしています。そしてこの方針は、中小の酒類醸造業者たちの強い支持を受けているのです。
タイにだって、知る人ぞ知るワイナリーがあるのですが。
PB Valley Khao Yai Winery | For perfect memories all you need is the perfect place
でも前進党のこの公約、大手ビール会社にとっては新鮮なホップのように、苦々しいものでありましょう。
さて大手ビール会社各社が、コネのある高級官僚たちを総動員して妨害工作を始めるのか。あるいは酒類販売の禁止を訴える市民団体に資金提供をして、規制緩和を反対させるのか。私のような酒好きにとっては、今後の動向が注目されます。
下の写真は、前進党の公約に期待する「クラフトビール協会(Thai Craft Beer Association)」幹部です。