残念ながら、否決 | 「アジアの放浪者」のブログ

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昨日、タイの国会で改憲審議がありました。

具体的には、改憲案をまとめる組織の設置と、改憲に向けた基本方針の審議・採択があったのです。

 

改憲に向けては、与党側が1案、野党側が5案、独立した民間組織「iLaws」が約10万人の支持署名と共に1案、提出しています。

18日、19日の2日間にわたる上下両院の合同審議により、19日に第1次採択が行われました。その結果が、以下の表です(11月19日付の電子メディア、Nation Thailandより)。

 

採択されたのは、与党案1、野党案1の2本のみ。期待されていたiLawsの案は、賛成212、反対139、棄権369で過半数に達せず、残念ながら否決となってしまいました。民主化運動に取り組んでいる青年たちは、iLawsの提案(しかも10万人の支持署名付き)が否決されたことに反発し、数千人がバンコク中心部にある警察庁前で抗議活動を行っています。

 

一方、採択された2案ですが、与党案の骨子は、

①改憲起草委員会の設置(選挙によって選ばれた者+政府によって指名された者)

②委員会設置から120日以内に改憲案を議会に提出すること。

③国体に関わる憲法第1条、同第2条は改定しないこと。

 

野党案は、

①改憲起草委員会の設置(全員、選挙によって選ばれた者)

②委員会設置から240日以内に改憲案を議会に提出すること。

③国体に関わる憲法第1条、同第2条は改定しないこと。

 

与党案と野党案には、相反する内容がありますが、この点については国会議員45人からなる小委員会で調整を図り、その上であらためて両院合同会議に提出され、第2次採択、第3次採択が行われます。タイの議会ルールは「読会制」で、第1回目の法案読み合わせで基本方針を確認し(第1次採択、今回行われたのがこれです)、その後小委員会で細部が検討され、第2回目の修正法案の読み合わせで大筋合意し、細かい表現などを手直しした再修正案を3回目の読み合わせで確認し、最終的に法案として採択する方法が採用されています。

 

民主化運動支持者が求める主要3要求(①新憲法制定 ②首相の即時退陣 ③王室制度の改革)のうち、新憲法制定までは行かずとも、改憲に向けてこぎつけたことは、彼ら、彼女らの努力のおかげです。ただ惜しいことに、民主化運動のうねりは国民全体にまで行き渡っておらず、逆に民主化運動支持者たちの「息切れ」を指摘する声が高まっています。事実、動員数も減少傾向にあるようです。

 

タクシン派を含めた主要野党も、憲法改正と首相退陣には同調しつつ、王室制度の改革には腰砕け状態。タクシン元首相の家族ですら、現行の王室制度を支持していると言われています。

 

民主化運動にとっては逆風となっているのですが、有識者の中には、王室関係者や関係機関の権限やルールをもっと明確にすべきだ、と考えている人たちがいます。是非、そうした人たちと協力を深め、新たな波をつくって欲しいと思います。あと、もう一つ。タイに帰国している国王陛下。どうやら自由奔放な生活態度を抑えているようです。これはおそらく、民主化運動の成果の一つでありましょう。これは青年の皆さん、Good Job!