本の裏書より

 

花を愛でながら余生を送っていた老人・秋山周治が殺された。第一発見者の孫娘・梨乃は、祖父の庭から消えた黄色い花の鉢植えが気になり、ブログにアップするとともに、この花の縁で知り合った大学院生・蒼汰と真相解明に乗り出す。一方、西荻窪暑の刑事・早瀬も、別の思いを胸に事件を追っていた・・・・

 

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この事件を通して、蒼汰は、大きく成長した。また、梨乃もやっと、立ち直り、歩きはじめた。

 

蒼汰は、就活中の身で、専攻が原子力工学だ。

 

原発事故が起きる前までは、CO2削減の切り札として、重宝されていたエネルギーだ。化石燃料に頼る時代ではないことは明らかだし…太陽光発電や風力には、天候に左右され、限界がある。

蒼汰は、修士を卒業して、博士課程に進む。その後、原発事故が起きてしまい、未来を描き切れないでいたのだ。

 

でもこの事件の解決に二人のかっこいい生き様を知ることができた。それもわりと身近な人物なのだ。

 

さすが、東野圭吾さんだ。事件だけの解決だけに終わらない。

就活中の学生や、将来性に不安を抱えている若者たちに、いいアドバイスを送ってくれる。蒼汰や梨乃を通してだけどね。

 

P463~

”世の中には、負の遺産というものがあるのよ。”

”それを放っておけば消えてなくなるものなら、そのままのしておけばいい。でもそうならないのなら、誰かが引き受けなければならないでしょ。”

 

この言葉受けて…蒼汰は、原子力工学の道へ進む。

P473~

”将来性はないかもしれないな。だけど原発自体がなくなるわけじゃない”

 

ここに、蒼汰と藤村(蒼汰の友達)のやり取りを記しておく。

藤村が云う。

”2030年には、原発をゼロにする、とかいうてるやつらがおるで”

蒼汰が答える

”原発依存を、だろ。2030年に稼働している原発がゼロだったとしても、原発自体が消えてなくなっているわけじゃない。おそらく廃炉はほとんど進んでいない。さらに五十基以上の原発で、大量の使用済み燃料が保管されている状態だろう”

”ふつうの家なら、放置しておけば自然と廃屋になる。だけど原発は違う。放置しておけば勝手に廃炉になるというわけじゃない。たとえ発電していなくても、厳重に管理し、慎重に廃炉への手順を踏んでいく必要がある。おまけに廃炉の際には、膨大な量の放射性廃棄物が発生する。それを処分する場所でさえ、まだ決まっていない。そういう場所を作れるかどうかさえも不明だ。仮に処分場ができて、そこに埋めたとしても、放射能のレベルが安全な値に下がるまでには、何万年もかかる。実質的にこの国は、もう原発から逃れられないんだ。そういう選択を、何十年も前に済ませてしまっているんだ。”

 

さらに、梨乃は、亡くなった尚人からの言葉を雅哉から聞いて、水泳に再挑戦する決意をしたみたいだ。梨乃は、もとはオリンピックを目指すほどの水泳選手だ。才能がない人から見れば、何を悩んでるんだーーって気持ちだよね。”才能を与えられた人の義務だ”って言葉から、前向きになっていく・・・。