こんばんは。
大好きな安城市の在宅医療に貢献したい!
日だまり訪問看護ステーション
看護師 山田万理です。
最近は高齢者のひとり暮らしや
子供と離れて生活している老夫婦や
軽度の認知症の夫が重度の認知症の妻を
世話していたり、逆も然りですが。
さらに独身同志の兄弟や姉妹で
暮らしていることも多い。
いわゆる『老々介護』『認認介護』。
昨年の12/18のこと。
病院のソーシャルワーカーから
新規相談が入った。
「腎不全末期で透析非導入の方が
自宅退院を希望されています。
ちょっと生活背景が複雑です。
認知症の奥様と二人暮らしで
お子さんが市内にお2人いますが
娘さんは父親には怖くて会えない
会いたくないと仰って
息子さんはご本人と
警察が介入するほどのケンカを
複数回しておられて関係が悪くて
介護支援が期待できません。
入院を機に介護保険の申請をしましたが
結果が出るのが年明けになって
サービス調整も難しいです。
自宅退院を希望されています」
透析非導入の腎不全末期なら
予後は月単位で急変リスクが高い
認知症の妻と二人暮らしで
急変時に、はたして妻が
緊急連絡先に電話ができるのか?
状態が悪化してオムツ交換や
介護が必要になったとき
家族の支援が望めないなら
妻に介護指導するのか?
課題は山積みだが
面談して1つ1つ整理して
解決方法を探すことにした。
翌日病院に向かった。
ご本人に会うなり
「妻のことが気がかりなんです。
携帯に何度も着信が残ってて
かけ直したいけど
妻が自分を探して家を飛び出したら
事故にでも遭うんじゃないかと
心配でできない。
妻に一目会って、声が聞きたいです。
家に帰らせて下さい。
お願いします」
懇願された。
妻を溺愛しているのが見て取れた。
病院側が自宅退院するなら
訪問診療と訪問看護を導入することを
提案していた。
世間一般的に訪問診療と訪問看護は
高額だと誤解されている。
彼もそうだった。
知人から訪問診療と訪問看護の
両方を利用すると月に20万ぐらいかかると
聞いたと言った。
だから家に帰りたいけど節約したいから
訪問看護は必要ないと思うと言った。
ソーシャルワーカーが
「状態からして訪問看護は
絶対に必要です」断言した。
まずは訪問看護の役割を説明した。
日常の健康管理やお薬管理
入浴介助や栄養管理、介護指導
病院、医師・ケアマネジャー間の橋渡し
緊急時は年中無休で24時間対応すること。
日だまりは年中無休のため
病院が年末年始で休みに入っても
稼働していて定期訪問すること。
誰に何を相談したらいいか分からない時に
24時間対応の相談窓口になると伝えた。
「子供たちに財産を狙われてるから
世話にならずに生きていきたいんだ。
来てもらった方がいいな」
訪問診療と訪問看護の利用を
前向きに考えてくれた。
財産を狙われているというのが
ちょっと引っ掛かった。
認知症特有の被害妄想ではないか?
次に訪問看護利用の料金説明をした。
訪問看護は介護保険と医療保険の
2通りの介入方法があって
介護保険は20分、30分、60分、90分、
それ以上と細かく料金設定されている。
医療保険は1回ごとで
90分までは同一料金になる。
医療保険と介護保険の
それぞれのパターンで料金を説明すると
元銀行員の彼は瞬時に計算して
「思ったより安いな。
妻のこともお願いできるのか?」
訪問看護は医師から
指示書が交付されたら誰でも
利用できることを伝えた。
にこやかな表情で
「それはありがたい。
これから世話になります。
もう一度名前を教えてくれるかな」
訪問看護が妻のケアもできることが
決め手だったようだ。
名刺を渡して次回は
ご自宅に伺うことを約束しました。
次に離れた場所で待機していた
娘さんと面談をしました。
今までの父親との関わりを
30分近く聞かせていただいて
父親は恐怖の対象で
顔も見たくないし
介護はもってのほかと言うのが
十分すぎるくらい理解できた。
だから入院してから1度も
父親に会っていない。
私はそのことを
決して非情とは思わない。
死が近いことは分かっていても
『ごめんな。悪かったな』と
父親が詫びたとしても
その一言が受け入れられないし
聞きたくもないのだ。
それほどまでの嫌悪感が
理解できた。
「ご本人は奥様が気がかりで
退院したいそうです。
そのために訪問診療と訪問看護が
必要なら受け入れる感じでした。
奥様は今どうしてますか?」と
娘さんに聞いてみた。
長男の嫁が泊まり介護をして
食事や入浴介助をしていて
仕事の前に在所に連れて行き
帰宅途中で迎えに行く毎日とのこと。
父親は長男の嫁とも折り合いが悪く
入院中に認知症の母の介護はできても
退院するなら
介護はできないと言う。
私は、
遺される家族のこころに
傷跡を残さないことを
信条としている。
娘さんが父親を介護できない
複雑な事情は理解できる。
無理強いはできない。
気持ちだけは
両親の近くにいて欲しいと伝えた。
その日の夜、
仕事の都合で面談に来れなかった
息子さんから連絡が入った。
娘さんとやりとりした内容の確認と
息子さん家族とご本人の関わりを聞いた。
昨年だけで3回パトカーを
呼ぶ騒ぎを起こしている。
本人が自分たちの関わりを拒否して
実家の敷地に入ると警察を呼ぶと言う。
口論から暴力に発展するのだと。
父親はもともと暴君で
自分も暴力を受けて育ったが
娘さんも付き合っていた彼さえも
門限が守られなかったりすれば
顔の形が変わるほど殴られていた。
孫も最近の祖父の暴君な一面を見て
関わらなくなったと聞いた。
息子さんには
医療機関や地域包括との面談や
介護保険、障害者手帳の申請手続き
訪問診療と訪問看護の契約など
事務手続きをお願いした。
すると、
父親は自分が
財産を狙っていると言って
健康保険証も通帳もカードも
見せてくれないし渡してくれない。
それを自分が口にすれば
また警察沙汰になりそうだと言う。
退院の時に迎えに行っても拒否して
タクシーでひとりで勝手に
帰って来るかもしれないとも言った。
訪問診療の申し込みに必要な保険証は
病院が控えを提示して
利用料金は振込みができる。
退院の時は看護師が
息子さんと一緒に帰るのを
見届けることにした。
退院日当日を初回訪問看護にして
訪問看護の契約は
息子さん立ち合いのもと
ご本人にしてもらい
保険証の提示と
通帳、銀行印が必要な書類は
本人にサインしてもらうことにした。
退院は息子さんの休みに合わせて
12/28に決まった。
在宅医療の環境は整った。
さて、孤立無援な状況で
どうやって本人と愛妻を
支えていこうか。
困難事例には多職種連携が必須だ。
この場合は、病院の医師、医療福祉相談室
地域包括支援センター、ケアマネジャー
在宅医と看護師、訪問看護師が連携する。
面談の結果を地域包括と共有した。
3年前、高カリウム血症で
入院したのを機に介護保険を申請した。
要支援でも要介護でも
その時担当していたケアマネジャーに
依頼する予定でいる。
親子関係が崩れたのがこの頃からで
たびたび家族から相談が入り
最近1年間で警察介入の騒動を起こし
警察からも地域包括に報告されていると
情報を得た。
地域包括支援センターは
高齢者やその家族のための
「地域の相談窓口」
市町村区が設置していて
保健師、社会福祉士、主任ケアマネなど
専門職がチームで対応して
①介護相談にのる
②介護保険サービスにつなぐ
③高齢者を守る役割
をしています。
退院までの道はできたけど
介護保険を申請してから
結果が出るまで最短でも3週間。
年末年始の連休で
病院や行政がストップするから
通常よりも時間がかかる。
腎不全末期で急変リスクが高い
入院している病院は
ドクターヘリにも対応して
一刻を争う重症者の受け入れをする
三次救急病院だ。
病院から透析しないのなら
救急搬送の受け入れはできないと
はっきり言われている。
日だまり訪問看護ステーションは
開業して8年目。
たくさんのご縁に恵まれてきました。
先日、重度の認知症の父親を
介護をしながら看護師をしていた方が
来所された。
施設入所していた父親が下血して
入院して亡くなったこと、
訪問看護のおかげで仕事を続けられたこと
今は地域連携の仕事をしていて
療養型病棟をオープンしたことの
案内のために来たと話してくれました。
療養型病棟というのは
点滴などの医療処置をしながら
看取り対応をする病棟です。
救急搬送を拒否されている彼には
もってこいの病棟です。
急変したり、介護が困難になったら
真っ先に相談しようと決めていました。
とはいえ、年明けて病院が
通常診療を始めるまでは
連携や調整ができないから
トラブルを起こさず
何としても穏やかに
過ごしてもらう必要がありました。
介護保険は利用できない
重症で頻回な観察やケアが必要
そんなときに心強いのが
『特別訪問看護指示書』だ。
これは1か月14日間を限度として
毎日でも、1日複数回の訪問も
可能にする指示書で
この14日間の訪問看護は
医療保険(健康保険証)の介入になる。
1割負担の後期高齢者の場合、
外来通院、外来で処方された薬、
訪問診療、訪問看護を合わせて
負担限度額が18000円。
一時的に各医療機関に支払うが
後ほど還付される。
在宅医療は高額だと誤解されがちなので
医療保険で介入する訪問看護の
利用料金を説明します。
医療保険の訪問看護は
管理療養費+基本療養費+加算で
算定します。
管理療養費は
月の初日 7670円
2日目以降 3000円
基本療養費は
週3日まで1日あたり 5550円
日曜日を起算とする
4日目以降は 6550円
加算というのは
24時間いつでも相談対応して
場合によっては訪問する
24時間対応体制加算(6520円)や
在宅酸素療法管理(2500円)
気管カニューレ、胃ろう管理(5000円)
など日常的に医療処置を要する
場合の特別管理加算などがあります。
その他、1日複数回訪問する場合や
深夜早朝に訪問した場合などが
設定されています。
特別管理加算は月1回の算定です。
上記の金額は10割負担の場合なので
例えば在宅酸素療法をしていて
24時間対応体制加算を算定する
1割負担の方が週4回利用した場合は
初回 767円+555円=1322円
2回目以降 300円+555円=855円
4日目以降 300円+655円=955円
分かりやすく、日曜日始まりの3月に
日曜日から水曜日まで
利用したとすると
1322円+855円×18+955円×4
=20532円
加算は250円+652円なので
ひと月の利用料は合計で21234円
ここで医療保険と比較するために
介護保険の介入の場合も説明します。
介護保険サービスにおいて
介護度は要支援1.2と
要介護1~5に区分されて
それぞれ支給限度額が決まっている。
要支援1 50320円
要支援2 105310円
要介護1 167650円
要介護2 197050円
要介護3 270480円
要介護4 309380円
要介護5 362170円
要介護5が
日常生活全般に介助を要する状態。
介護保険サービスは
介護、医療、福祉用具など
利用するサービスごとに
単位数が設定されていて
1単位おおよそ10円で利用料金は
1~3割と負担割合によって変動して
限度額を超えた単位は
10割負担となる。
介護保険の訪問看護は、
時間ごとに料金が設定されている。
30分未満
要支援451単位 要介護471単位
30分以上60分未満
要支援794単位 要介護823単位
60分以上90分未満
要支援1090単位 要介護1128単位
例えば、1割負担の要介護1の方が
60分未満の訪問看護を利用すると
823円になる。
その他にも24時間いつでも相談できて
場合によっては訪問する加算や
胃ろう管理、在宅酸素の管理や
週3回以上の点滴をするなど
医療処置が必要な場合は加算が発生する。
訪問看護は基本的に介護保険が優先で
加算は介護保険か医療保険の
どちらかでしか算定できません。
ざっくりとした説明で訪問看護の
利用料金をすぐさま計算できた
彼の場合、認知症ではなさそうだ。
歩行が自立していると
『要支援』の認定結果が予測される。
もし要支援1だとすると
訪問は30分未満で週2回が限界。
夫婦で自転車で隣市まで出かける
身体機能があったから
妻に認知症はあっても
介護保険は申請していなかった。
でも、妻の認知症の程度によっては
要介護の認定が下りる可能性があった。
妻も訪問看護を利用すれば
妻の訪問時に
本人の体調を確認できる。
妻も介護保険を申請することになった。
12月28日 初回訪問に伺うと
妻が笑顔で出迎えてくれました。
本人に
「奥様の笑顔が素敵ですね」
と言うと
「でしょう?」と
目を細めて奥様を愛おしそうに
眺めて言いました。
退院を心から喜ぶご夫婦の姿に
温かい気持ちになりました。
息子さんがいなくては
在宅療養の環境を整えることも
退院もできなかったから
息子さんに対して
感謝の言葉を何度か口にしました。
息子さんは難しい顔をしていました。
実家の敷地に入るだけで
警察に通報していた父から
感謝の言葉を聞かされても
『許し』より『拒否反応』が勝るのだろう。
退院前日の夜
息子さんから電話がありました。
「お世話になる在宅医に妻が
余命について尋ねました。
病院からの情報やデータだと
3ヵ月だと言われました。
山田さんもそう思いますか?」
どれくらいの期間
顔も見たくない父親と向き合うのか
知りたかったんだと思う。
狭くて暗いところが苦手な私は
高速道路でトンネルに入る時
距離を確認する。
どれくらい耐えればいいか
予測できると安心する。
それと似ていると思う。
息子さんに
「命の時間は
神のみぞ知るところですが
医師の予後予測は旅立たれた後に
その通りだったと
感じることが多いです」
と伝えました。
初回訪問で
入院のきっかけや
病院で説明されたことを
どのように受け止めているか
本人と息子さんから伺いました。
息子さんは
「めまいで病院に連れて行ったら
意識消失して心臓が止まって
ペースメーカーで動かして
高カリウム血症になってて
一時的に透析して回復して今この状況。
透析はしないってことで
退院になりました。
本人はまったく覚えてないけど
医者から長々といろんな説明されて
何種類もの同意書にサインしました」
本人は意識消失していたので
当然ながら治療経過は
まったく記憶にない。
「若くて生意気な医者から
透析しないならここには
来ないでくれと言われて頭に来て
透析なんか絶対やらんと言って
退院しました。
どちらかが片割れになるまで
この家で暮らしたいです。
母さん、山田さんに世話になるんだ。
頭を下げてお願いするぞ」
そう言って二人で私に
深々とお辞儀をしました。
ご本人に、私に感謝するよりも
息子さんなくしては
在宅療養が成り立たないから
息子さんの行動力に
感謝するべきだと伝えて、
息子さんの関わりを絶対に
拒否しないことを約束してもらった。
退院して最初のつまづきポイントは
『薬の管理』だ。
病院では毎食ごとに配られて
飲み込むまで確認される数種類の薬が
退院時にビニル袋にまとめられ
渡される。
なんなら、薬が10種類あるとして
10袋に別々に入っているのを
薬剤師から一通り説明されて渡される。
食事のたびに10袋から
1錠や2錠など飲み方を確認しながら
袋から取り出すのだ。
しかも彼の場合は
むくみが強いときに内服する
利尿剤の頓服もあった。
薬を曜日と朝・昼・夕と明記した
小袋にセットして
むくみが強い時に内服する
基準を作るために体重測定をした。
浮腫みがあって
1週間で2㎏以上体重が増えたときに
内服することを指導して
訪問のたびに体重測定することにした。
訪問中に妻を観察しました。
お茶を淹れることはできるが
短時間で何度か同じエピソードを話す。
寒さで震える夫に
厚手のネルシャツ、セーター
薄手のダウンを次々と着せて
毛布で体を包み、
足元を座布団で土手を作ろうとしたとき
妻のすることに
されるがままだった本人が
「もういい、やり過ぎだ」と言った。
夫を想う気持ちからか
認知症で加減ができないのか。
本人が
「ふと目を離すと(妻が)
出て行ってしまうから
ここにいなければあっち、
あっちにいなければあそこって
探す順番があって
ああ、ここにいたのかと
発見する毎日でした」と言う。
腎不全末期で筋力低下した彼が
徘徊する妻を探すことは不可能だ。
仕事始めまでは息子さんが
泊まり介護をしてくれることになった。
本人も息子を
拒否できる状況でないことは
重々理解していた。
こうして在宅療養は始まった。
今回の記事は
ソーシャルワーカーからの相談で
始まった訪問看護の流れと
利用料金、多職種連携
訪問看護のはじまりの話でした。
本人が人工透析をするかしないかを
妻に早く会いたい、退院したい
透析しなければ退院できる
生意気な医者の物言いが気に入らないと
感情的に決めたことが気がかりでした。
次回は、人生会議(ACP)の視点で
本人と介護者の揺れ動く気持ちに
寄り添う看護についてです。
それでは今日はこのへんで。
最後までお読み頂き
ありがとうございました。





