こんばんは。

大好きな安城市の在宅医療に貢献したい!

日だまり訪問看護ステーション

訪問看護師 山田万理です。

 

 

先日、私の子供たちの母校である小学校で

『がんについて知り

いのちの大切さを考えよう』

というテーマで講話をしました。

5.6年生とその保護者対象で

学校保健委員会が主催する行事の一環です。

教員、学校医、学校歯科医、薬剤師も

参加していました。

 

私は命を大切にするって

健康で自分らしく

今を楽しんで生きることだと思う。

 

そして健康というのは

『頭』で考えること

『心』で感じること

行動する『体』の機能のバランスが

整っている状態だと思う。

 

思考、感性、行動力の

バランスが取れていなければ

今を楽しんで

自分らしく生きるのは難しいのだ。

 

がんは死因の1位で

日本人の2人に1人がなる病気だけど

医療の発達で早期に発見して治療したら

がんになった人の2人に1人が

完治を望めるようになりました。

 

健康を脅かす可能性が高いがんを知り

予防のためにできることをして

早期に発見して治療を始めるためのがん検診が

健康を守るために大切です。

 

 

 

 

 

小学5.6年生に分かりやすく説明するために

たくさん考えました。

事前に学校がアンケートを行っていて

ダイヤグリーンがんという言葉を聞いて頭に浮かんだこと

ダイヤグリーン看護師さんに聞きたいこと知りたいこと

2点の意見を教えてくれたので

質問に答える形式で講話しました。

 

Q.

がんはどうして起きるんですか?

どうして体のいろんなところにできるのか?

がんは治りますか?

治ってもまたなるんですか?

たばこ以外にも原因がありますか?

 

A:

人間の体は60兆個もの細胞が

集まってできていて細胞の1つ1つに

体の設計図の役割をする遺伝子がある。

正常な細胞は壊れたり古くなると

新しく生まれ変わる。

新しい細胞は遺伝子がコピーされて生まれて

1つが2つに、2つが4つにどんどん分裂する。

コピーされる時に遺伝子が

紫外線や化学物質、ウイルスとかの影響を受けて

傷つくと『間違い』が起きる

この『間違い』ががん細胞のはじまり。

 

がん細胞は正常な細胞のように

古くならないし壊れない。

増えるのをやめるというスイッチが

壊れてるからどんどん増え続ける。

がん細胞は体中に張り巡らされた

血管やリンパ管の流れにのって移動して

骨にくっつくこともできる。

だから体中にがんができる。

 

人間の体には免疫というがん細胞をやっつける

仕組みがあるけど

がん細胞がどんどん増えていくから

退治できなくなって時間をかけて

がん細胞が大きな塊になる。

がん細胞は体の働きを邪魔したり

必要な栄養分を奪ったりして

体を弱らせてしまう。

 

治療して治っても

遺伝子を傷つける紫外線や化学物質

ウイルスはなくならないから

またがん細胞が大きな塊になることがある。

 

 

 

 

Q.

治療法を知りたいです

 

A.

治療の目的には『攻撃』と『防御』の

2つあって、分かりやすくいえば

『攻め』と『守り』

野球でもサッカーでも

攻撃して得点を入れたり

守って点を取られないようにするよね。

がんの治療には手術、抗がん剤・免疫療法

放射線治療があります。

 

Q.

どうしたらがんを予防できますか?

 

A.

予防のためにできることを話すけど

これを頑張ったら絶対にがんにならないって

ことではないし、さっき話したけど

がんになる原因は紫外線、大気汚染、化学物質

ウイルスといった目に見えないものが多いから

自分ががんになっても、大切な人が

がんになっても決して責めないで下さいね。

 

予防のためにできることは

・禁煙する

・食生活を見直す

・節酒する

・体を動かす

・適正体重を維持すること

 

小学生のみんなができることは

塩分を控え目にすること

化学物質がたくさん入っているお菓子や

インスタント食品を食べすぎないこと

緑黄色野菜をしっかり食べること

ゲームやスマホを見る時間を減らして

目と頭が疲れないようにする

早寝早起きをして規則正しい生活をすること

できることがたくさんあります。

 

Q.

がん検診ってなんですか?

 

A.

がんになりやすいのも亡くなりやすいのも

大腸、胃、肺です。

女の人がなりやすい乳がんは

みんなのお母さんくらいの年齢だと

4人に1人がかかると言われています。

がん検診は、胃がん50歳以上

肺がん40歳以上、大腸がん40歳以上

乳がん40歳以上、子宮がん20歳以上を対象に

お知らせが届くので

お父さん、お母さんにがん検診受けてる?

封筒が届いてない?って聞いてみて

受けるように勧めて欲しいです。

 

 

 
 

 

 

看護師に聞いてみたいことのなかに

がんになった人に私ができることはなんですか?

という心優しい児童からの質問がありました。

 

会場には母親をがんで喪った児童もいて

親御さんが、がん治療中の児童もいました。

とても繊細な話だから

質問にどのように答えようかと

たくさん考えて

私の看取り体験を話すことにしました。

 

私は中学3年生の時に

大好きな祖父をがんで喪いました。

 

私は小さい頃から厳しく育てられ

しつけと称した虐待も受けてきました。

祖父は私を救ってくれるヒーローで

どんなときも絶対に味方でいてくれる

ドラえもんのような

大切で特別な存在でした。


6月に救急搬送されたときは

風邪をこじらしただけだと思っていたのに

検査したら手の施しようのない

肺がんの末期状態で

長くても余命3ヵ月と宣告されました。

 

夏休みに入ってから30分かけて

自転車でお見舞いに行って

今みたいにネットで

簡単に調べものができないから

図書館にも通ってがんのことを

たくさん調べました。

 

調べるほどに、じいちゃんが

もうすぐいなくなることを実感して

怖くなって涙が溢れました。

でも、じいちゃんが私を想うとき

笑顔を思い浮かべて欲しかったから

じいちゃんの前では絶対に泣かなかった。

 

そのかわり、じいちゃんが好きな相撲の話や

楽しい話をしたり、

じいちゃんの話をたくさん聴いて

痛そうにしていたらさすってあげて

ご飯を食べさせてあげた。

お散歩するときは

転ばないように手を繋いで

じいちゃんがひとりで過ごすときに

退屈しないように手紙を書いた。
 

大切な人が感じている体のつらさや

どんな気持ちで過ごしているのか知って

どうしたら苦しさを和らげることができるのか

考えて行動すること。

 

これが大切な人ががんになったとき

してあげられることだと思います。

 

 
 

 

人生最期の話もしました。

人のいのちには必ず終わりがあります。

 

じいちゃんのお見舞いに行ったら

個室に変わっていて

酸素マスクと心電図モニターがついていました。

 

声をかけても目を開けてくれなくて

看護師さんが

「じいちゃんがいつも自慢していた万理ちゃんだね

看護師になるのが夢なんだよね。

じいちゃん、万理ちゃんが看護師になるのを

見たいから頑張るって言ってた」と

じいちゃんの言葉を届けてくれました。

「じいちゃんのいのちの終わりが近づいている」

とも言いました。

 

じいちゃんのひんやりとした手を握って

その場から離れられずにいたら

心電図の波形がまっすぐになって

息がとまってしまいました。

 

死というのは

動いていたものが止まり

温かかったものが冷たくなることだと

知りました。

 

命の終わりを見届けることを

『看取り』と言います。

 

じいちゃんがいなくなってしまって

会いたくても会えないから

さみしくてたくさん泣きました。

おかえりと言ってくれないことも

じいちゃんの自転車に

埃が積もっていくのもつらかった。

 

でも長い時間が過ぎて

じいちゃんとの思い出や

じいちゃんに愛された記憶が

心の引き出しに上手くおさまって

自由に出し入れできるようになった。

それがお守りになって

今の私を支えてくれている。

 

じいちゃんがいなくなって

寂しかったけど

後悔することはなかった。

 

ごめんなさいとありがとうは

言える時に言わなきゃダメだと

じいちゃんが教えてくれたから

じいちゃんに『大好き』と『ありがとう』を

何度も伝えてきた。

 

私は幸せな別れ方は

『ありがとう』と感謝の言葉を伝えて

『ごめんなさい』を伝えて

わだかまりを解消して最期を迎えることで

命の終わりを見届けることだと思っている。

 

あんなことしなきゃよかった。

あんなこと言わなきゃよかった。

 

後悔ってずっと引きずってしまうから

照れくさいし、勇気がいるけど

大切な人に、ごめんなさい、ありがとう

大好きって、素直に

伝えられるといいなと思う。

 看取り体験と

大好きなじいちゃんを喪ってから

今に至るまでの心の変化を

話しました。

 

じいちゃんは最期を病院で迎えたけど

暮らし慣れた家で大切な思い出や人に囲まれて

最期を迎えることもできる。

在宅医療についても話をしました。

 

 

 

 

じいちゃんの看取りから学んだことで

看護に活かされていることがある。

 

じいちゃんが旅立ったあの日

看護師さんが中学生の私に

もうすぐじいちゃんの命が終わることを

教えてくれた。

別れを覚悟するきっかけだった。

言葉を発することができないじいちゃんの

私への思いを伝えてくれた。

じいちゃんの体をキレイにしながら

看護師さんが泣いていた。

 

私は遺される家族に後悔して欲しくないから

看取りの瞬間が近づいている時に

「会いたい人に会わせてください」

「耳は最期まで聞こえるから

話したいことを

できれば幸せで温かくなるような言葉を

たくさんかけてあげて下さい」と

伝えます。

 

「家族に面と向かって

言えない言葉がありますか?

代わりに伝えます」と

会話ができるうちに

もうすぐこの世を去る人に尋ねます。

病院で勤めているとき、

大切な人を喪ったご家族が

私を尋ねてくることがありました。

 

「妻の日記に山田さんと楽しい

おしゃべりをしたと書いてありました。

妻がどんなことを話して笑顔になったのか

知りたいんです」

奥様との関わりに

後悔しているご主人でした。

もっと大切にすれば良かった。

幸せにしてあげれなかった。

 

「奥様の作る料理をおいしいって

言いながら食べてましたよね。

お友達のご主人はテレビを見ながら

ただ食べてるだけで

おいしいんだか好みに合わないんだか

分からないって愚痴ったそうです。

私は何を作っても美味しいって

言ってもらえるから作り甲斐があるって

話してました。

私の旦那さんはお友達の

ご主人タイプだと言ったら

作り甲斐がないわねって言うので

私は食いしん坊だから好きな物作って

私が満足しているから幸せですって

言ったんです。

楽しい人ねって笑ってました」

 

ありふれた毎日だったと思うけど

確かに奥様を幸せにしていたんです。

『奥様の作る料理を

美味しいと言って頬張ること』で。

 

両手で私の手を握り「ありがとう」と

言って帰って行かれました。

 

私は看取りのお手伝いをして

感情を抑えることはしません。

さすがに嗚咽をあげて泣くことはないけど。

看護師さんがじいちゃんのために

流してくれた涙になぐさめられたから。

 

 

講話の資料を作ったり

どうやって伝えようか考えた時間は

自分自身の健康を見つめて

これからの人生で何をしたいかを

想像する楽しい時間でした。

 

貴重な時間をプレゼントしてくれた

先生と5.6年生のみんなに感謝します。

ありがとう。

 

講話をメモをしながら熱心に聞いてくれて

たくさん質問してくれてありがとう。

私も勉強になりました。

 

みんなの可能性は無限大で

未来はキラキラと輝いています。

未来は今のつみ重ねだから、

今を大切にしてケガや病気事故に気をつけて

毎日を楽しく元気に過ごして欲しいです。

 

 

文科省が推進しているがん教育は

小学校段階では

「がんとは何か」「がんの予防」

「がん患者への理解と共生」の

分野での指導が求められているそうです。

私の人生や看護師の経験が

お役に立てて何よりでした。

 

 

 

それでは今日はこの辺で。

最後までお読み頂き

ありがとうございました。