何も要らないから
たまに覗き込んで


泣いていたら
雲を割る光の矢で
おでこをこづいて


調子にのっていたら
突然の雨で
ふやけた頭冷やして


この手も
願いも
声さえも


二度と届くことはなくても
感じられるところに
いつも

 

 

 

 

 

 

教室の窓から声援してくれるのは
心優しいクラスメートたち
あたしの目には見えぬ何かが
ものすごい速さで追いかけてくるから
後ろを振り向くことも出来ずに
ただただ闇雲に走って逃げる


右だ! 左だ!

松の根元だ! ポプラの下だ!


ああ 皆には見えるのだ
あたしを追ってくるものの正体が
皆声を嗄らし身を乗り出して
安全な場所へと誘導してくれる

あたしにはそれがなにより心強い

きっと逃げおおせると信じる



ゴールポストを蹴飛ばして
花壇へさえも突っ込んだ

あたしは泥まみれで

傷だらけだけど

皆のお蔭でまだ生きている

ありがとうありがとう

 

 

でも

 

 

ひとつだけ

不思議に思うことがあるんだ
どうして誰も降りて来てくれない
どうしてだぁれも助けに来ない

この手をとって

この手をひいて

 

 

(もしかしたら もしかするのか?)


あたしは思い切って

グラウンドのど真ん中で
わざと大の字に寝転んだ


(さあ あたしを喰らえ!

お前の好きにすれば良い!) 

 

かすれた声で叫んでみた


風がヒュウと吹き

クラスメートは

ひとりふたりと消えて行き

 

やがて皆消えた


折よくチャイムが鳴ったので
あたしも汚れた制服をはたき

傷ついた手足を洗う間もなく

そのままの姿で

そのまま教室に戻った

何事もなかったかのように


さて 

 

その日から

あたしはどうなったでしょう

 

 

 

 

 

 

あなたは言う

じゃあ しょうがないから と

 

私は言う

しょうがない なんて言うなら

もういいよ と

 

 

背を向け寝息を立てている

尖った耳の三角窩

そこに蜂蜜をたらした後で

小さなアリを首すじに這わせる

 

 

そんな妄想してみるくらいにはあなたが嫌いよ

 

 

 

 

 

 

 

海はいのち輝かせるもののために躍る
浜辺は死してなお美しいもののため眠る


潮風に晒され色艶を剥がされて
風化してゆく長い旅の途中
小さな孔だらけの巻貝の白い殻

鋭角を落として悲しい記憶擦り取られた
元はビール瓶らしき陽気な茶色のシーグラス
無邪気に弾けた季節を忘れた炭酸飲料風の緑の破片


人は誰も相応しい場所をみつけるために歩く
サンダルがスリッポンに変わる秋の空


背をのけぞらせ仰ぐ

 

 

 

 

 

 

 

捜さないでください

そう書き置きを残すのは

捜してくれる人がいる

前提があるから

 

死にたいと

無意識に書いてしまうのは

自分が生きている今を

心に留め置いてほしいから

 

冷蔵庫に額をそっと押し付ける

誰よりも熱いのに冷たかった人を

懐かしく思い出す

 

暗くて悲しいニュースが積もる

テレビのプラグを引き抜いた

喉を鳴らしてアーモンドミルク

 

悩みなさいは母の声

考えるなは父の声

 

呼吸を正しく整える

鼓動に合わせて歌ってみる

喉を鳴らしてアーモンドミルク