翌日は暑い晴天だ。
新調したデニムのライダースジャケットを羽織って、汗だくで駐車場まで4キロ以上歩いた。ヘルメットも持っている。
駐車場でトライクのカバーをめくると、駐車場のオーナーさんが話しかけてくれた。「今日はツーリング日和ですね」
いやいや、自分はペーパードライバーだし、バイクの免許は取れなかったので、今日は近くのガソリンスタンドへ給油に行ければいいなと思ってるだけですけど。上手くいったら、ホームセンターとかバイク用品屋にも行きたいですね。
そういいながらセルスイッチを入れて、トライクにまたがり、クラッチを切って一速に入れて半クラにしたらいきなりエンスト!
おっとじゃあもう一回セルを回して・・・ありゃりゃさっき一速にしてたから車体が前に出るな。じゃあ、ブレーキをギュッと。あ、またエンスト!
慌ててもう一回セルスイッチを押すと、カチっと音がしてセルモーターが回らない。エンジンはもちろんかからない。
しばらくその状態を繰り返して、壊れた?と目の前が真っ暗になった。
マニュアルを読み、ネットを検索して、どうもバッテリー切れが怪しいなと思う。納車されたばかりだし、立て続けにセルモーターに電気を使ったし。
販売店のお昼休み明けを見計らって電話し、症状を伝えるとやっぱりバッテリーを充電した方がいいと言われる。
「今後のことも考えて、バイク屋とかガソリンスタンドでやってもらうより、充電器を買って自分で充電した方がいいですよ」
充電器はホームセンターでも売っているという。近くに何度か行ったことある店がある。
そこへ歩いてBALの充電器を購入した。家庭のコンセントで充電するそうだ。
駐車場へ再び歩いて、シート下にあるバッテリーを取り外す。ゴムバンドが金具で止まっているのがわからなくて、横にずらすのが苦労した。
バッテリーは思ったより小さかったので、リュックに入れて自宅に戻る。
充電を始めると、まあまあ消耗していたらしい数値が表示された。これでセルが動くのかなあ。
台風の影響の大雨が明けた日、平日の夜にバッテリーを持っていき、トライクに取りつけてセルスイッチを押してみる。
カチッ
やっぱりモーターが回らない。
バッテリーをそのままにして帰宅し、翌日販売店に電話してみた。
「本当に充電されたのかな?・・・あ、もしからしたらエンストしたときに、ギアが噛み込んだかもしれないですね」
私がエンストしたのは発進時。ニュートラルから一速にした後、ニュートラルに戻したつもりだけど、その間にギアが噛み込んでしまってる可能性があるという。
その対応として、ニュートラルランプが点くのを確かめてメインスイッチを切り、トライクを駐車場の中で前後にゴロゴロと動かす。これでギアが正常な位置に戻れば、完全なニュートラルポジションと認識された状態ならエンジンがかかる。
だが、やっぱりセルスイッチを押してもカチっとしか音がしない。
翌日本当に壊れたのではないかと重い声で販売店に電話すると、エンジニアさんも見てみないとわからないから、ハイエースを手配して数日後に引き取って修理しましょうという。その後は自分で乗って帰ってくれるか?と言われ、「まだ発進もしてないから何とも・・・」と自信がすっかり失われた砂フキンは凹んだ。
ハイエースの手配が出来たという電話の際、エンジニアさんが言った。
「今思い出しましたが、セルモーターが中で引っかかっているケースだと、モーターの外殻を叩くと回るようになる可能性があります」
セルモーターを叩く?それはネットで何人もそういうことをやっているというのを見ている。ただその症状が出てきたら、セルモーターを交換すべきということだったが。
ビックカメラの工具コーナーで、塩ビで包んだハンマーを買って帰り、駐車場へ歩いてモーターをコンコン、コンコンと叩いてみた。これ金属の工具でやる人もいるらしいが、なるほどモーターの外殻は丈夫だ。
その後に半信半疑でセルスイッチを押したら、何度目かでエンジンがかかった!
こ、これは行けるのか?!初の運転!