田中「俺ちょっと次の馬券買って来るから此処で待ってて。」
時枝「うん、いいよ。」
あのやろう…あたしに黙って両替してやがるな絶対…ふんっ!浮かれやがって、あたしを欺こうなんて上等じゃんよ。
田中「やあ…混んでたよォ…参った参った。」
時枝「出しな…。」
田中「えっええ…何!?」
時枝「出しなって言ってんだよ!ほらぁ!」
田中「ええ~はいよ…2万円。はぁ~っ、みっかっちやったぁ…。」
時枝「とぼけんなよ…まだあんだろう…いいから出しなって。」
田中「わぁーかったよぉ!ひでえなぁおい…血も涙も無い、ヤ〇ザよりひでえよ…本当に…。」
時枝は、田中が差し出した札束を引ったくりながら言い放った。
時枝「あぁそうだね、血はあるけど涙は無いね。誰かさんのお陰様でね。」
田中と時枝は、かれこれ10年近く一緒に暮らしている内縁関係だ。田中は時枝に弱みがあるから逆らえないのだ。働き者だが金にだらしなく賭事好きな田中は時枝には散々迷惑を掛けてきたのだ。
おまけにすぐばれるような嘘を平気で吐くから嘘の嫌いな時枝の逆鱗に触れる事も日常茶飯事なのだ。
これは、正反対の二人の物語である。