西尾道徳氏「検証 有機農業」より

 

「有機農作物の品質は慣行農産物より優れているか?」

という、大変興味深いテーマについて

各国の論文を紹介しつつ解説されていました。

 

まず、栄養素の含有量について、

ロンドン大学のダンガーらの研究によると、

1958年から2008年までの50年間の文献を対象に

統計解析した結果、一般的な栄養素については

有機栽培と慣行栽培とはほぼ同等と結論付けられている。

 

また、1年間にわたって有機と慣行の食事を与えた乳幼児について、

アトピー発現率に有意な差はなかったとされている。

 

その後、2012年にスタンフォード大学の

スミス・スペングラーらのチームが

1966年から2011年までの文献をもとに分析をおこない、

以下の結論を出している。

・有機食品が慣行のものより栄養的に優れているとの証拠は見つけられなかった。

・有機農産物は慣行農産物よりも許容上限値を超える

 農薬汚染リスクが30%低かった。

 しかし農薬残留物による汚染リスクの差は小さいので臨床的意義は不明。

・慣行/有機を問わず、家畜ふん尿を使用した農作物は

 大腸菌で汚染されているリスクが高かった。

・慣行の鶏肉/豚肉は、多剤耐性菌(3つ以上の抗生物質に耐性をもつ細菌)

 で汚染されているリスクが高かった。

・短期間の観察で、有機と慣行の食事を摂取している子供のアレルギー発症に

 有意な差がみとめられなかった。

 

これを受けて、ワシントン州立大学のベンブルック教授は

以下の批判を公表している。

・有機では慣行に比べて残留農薬の検出率は85%低い。

・農薬のリスクを過小評価している。

 2012年の農薬残留データを使って計算すると

 慣行食品の農薬リスクレベルは有機食品よりも1.75倍高い。

 有機食品は農薬による健康リスクを94%削減できる。

・スミスらの分析では、有機食品に切り替えたことによる

 健康改善効果を示す研究結果を排除または過小評価している。

 

さらに、アメリカのサイエンスライターのホルズマン氏も

学術雑誌に以下の意見を投稿している。

・カリフォルニア大学のエスケナジ教授らの研究において

 母親が妊娠中に有機リン酸系農薬を多く曝露していた場合

 子供の7歳時点のIQが7ポイント低いことが認められた。

・内分泌攪乱物質は、低い濃度でも様々な代謝活動に影響するが

 スタンフォード大学の研究では、低レベル曝露の影響を考慮していない。

 

長くなるのでいったんここで切ります。