郵便局で旅券業務 ATMで年金記録確認も
(産経新聞 11/27付)

政府・与党は26日、全国にある日本郵政グループの郵便局で、パスポートの申請や受け渡しなどを行えるよう制度を改正する方針を固めた。また、郵便局の ATM(現金自動預払機)を活用して年金記録を確認できるようにする。いずれも具体策について最終調整を行っており、来月中旬をめどに正式決定する考え だ。

パスポート業務は、来年の通常国会に提出を予定している「郵政改革法案」に盛り込む考えで、平成22年度中にもサービスを開始する。 具体的には、全国で2万4000カ所ある郵便局ネットワークでパスポートの取り扱いをできるようにする方向で、郵政グループは業務委託料を国から受け取る ことになる。

パスポート申請などは現在、外務省が各地にあるパスポートセンターや市町村に業務委託しているが、全国に計579拠点しかないため、離島や山間部の住人が申請するには都市部まで出向く必要があった。郵便局の活用は、こうした不便の解消が最大の狙いだ。

年金記録業務は、社会保険庁が来年度後半から配布を予定する「年金通帳」に関連したサービスで、郵便局のATMで保険料の納付履歴を確認できる仕組みとなる。開始時期などは今後詰めるが、「民業圧迫」の批判を回避するため、大手銀行や地域の金融機関とも連携したい考えだ。

一連の新規業務は鳩山内閣の「郵政改革の基本方針」で、多様な行政関連サービスの窓口として郵便局を活用する方針が示されたことを受けて検討された。

・・・日本郵政を“何屋さん”にしたいのか?
日本郵政は、『郵便事業会社』『ゆうちょ銀行』『かんぽ生命保険』と、それらの窓口業務を請け負う『郵便局』からなる企業体。

とりあえず郵便局へ行けば、郵便も、銀行も、保険も足りるようになっています。が、それぞれの事業で黒字経営をしていくには、この「とりあえず郵便局へ」という何でも屋さん状態は、マイナスにもなる可能性を持っています。

銀行になりきれない『ゆうちょ銀行』
ゆうちょ銀行は、法令で運用の対象を『安全資産』に限定されていたため、全体の約83%が国債運用に充てられています。

普通の銀行なら、昨日からの急な円高で、「A企業への貸し付けは大丈夫か? B企業への融資は返答を1日延ばそう。 C企業は75円台のシナリオを追加しておくか?」と融資部門はピリピリしていたでしょうが、ゆうちょ銀行にとっては他人事。8割以上を国債が占めているため、普通の金融機関のように動こうにも動きようがないわけです。

過去の実績頼りの『かんぽ生命保険』
かんぽ生命保険についても、なかなか不思議な状況が生まれています。
保険商品のほとんどは民営化前からのものを継承し、それらの窓口業務は郵便局へ委託しています。が、その郵便局では、アフラックのがん保険、住友生命保険の医療保険、法人・経営者向けにING生命、アリコ、住友生命、東京海上日動あんしん生命、日本生命保険、三井住友海上きらめき生命、明治安田生命といった、他社の保険商品も取り扱っています。

総資産額・約114兆円を誇る世界最大の保険会社の余裕なのか、かんぽ生命の保険外交員が外回りをしているところはあまり見かけません。
それもそのはず、総資産額46兆円で、かつて国内第1位だった日本生命保険相互会社(ニッセイ)の従業員・約6万6000人であるのに対し、かんぽ生命の従業員は約5000人です。いくら郵便局が全国展開をしているとはいえ、商品説明に苦労する保険営業。6万人の営業力で、ジリジリとシェアを削られることは 明らかでしょう。

実際、08年度の個人保険の新契約額で、かんぽ生命は5兆4249億円でしたが、ニッセイは6兆0185億円。個人年金保険の新契約額で、かんぽ生命が6288億円であるのに対し、ニッセイは1兆3285億円という差が出ています。

これ以上、「人的営業力」を削って活路はあるのか?
銀行が銀行になり切れず、保険は昔の実績の上であぐらをかいたまま。その上に、パスポートの申請・発行など行政サービスの代行まで始めては、日本郵政という組織から「人的営業力」がさらに削られることになります。

銀行業には融資先の開拓業務が必要であり、保険業には新規顧客の獲得業務が必要です。いずれも、人がどんどんと求められている声を探しにいき、収益につながるかどうかを人が判断して拾ってくる業務です。

単に郵便局の店舗施設が存在しさえすれば、まるで日本郵政が永続できるかのように語られることがありますが、日本郵政で、今もっとも利益を上げられているのは『ゆうちょ銀行』です。国債で回せているうちに目利き能力を磨いておかなければ、日本郵政は収益の主軸を失いかねません。

行政サービスの窓口を担うことで、日本郵政は国から委託料を得られるようになるのかもしれません。
けれども、本当に日本郵政を“何でも屋”にすることは、経営強化になるのでしょうか? 日本郵政が“何でも屋”になっても収益が上がるようにするべく、パスポートの手数料を引き上げたり、年金記録システムのためにゆうちょ銀行の手数料を上げたりといった事態へつながりはしないでしょうか?