WEEKEND SUNSHINE 追悼:Jerry Leiber その1 | 鳥肌音楽 Chicken Skin Music

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ジェリー・リーバーの追悼で取り上げたビートルズの「カンサス・シティ」の記事の中にも書きましたがピーター・バラカンさんが自身のNHK-FMの番組「Weekend Sunshine」で2週に渡りジェリー・リーバーの追悼特集をオンエアされました。プレイ・リストは下の方にアップしましたが、のべ51曲、これでも一部にすぎないと思いますが、あらためて聴く曲初めて聴く曲どれもこれも素晴らしい曲ばかりで至福の時間を過ごさせていただきました。

拙ブログのジェリー・リバー追悼の記事にいただいたまーしーさんのコメント「スペクターばかりもてはやされますが ロックンロール時代 一番 重要度・影響力・実績・人脈を考えるとリーバー・ストーラーが一番だとおもうのですがどうでしょうか」に思わずうなずいてしまいます。スペクターも勿論ですけどね。

番組でバラカンさんが語られたエピソードで印象に残ったことや番組を聴きながら心に浮かんだことをを幾つか備忘録的に記しておきます。つれづれなるままに。

追悼:Jerry Leiber (part 1)
02. Real Ugly Woman / Jimmy Witherspoon

二人の出会いは18歳の時。共通の友人の紹介で出会います。マイク・ストーラーはピアノが弾け作曲も行なっていました。黒人音楽を扱うレコード店で働きながら店でかかるレコードの歌詞を見よう見まねで(聞きよう聞きまねか?)でマネして作詞をしていたジェリー・リーバーはストーラーに自分の書いた歌詞を見てくれと頼みます。普通のポピュラー音楽のような歌詞だろうとタカをくくっていたストーラーはリバーの4小節の同じ歌詞を繰り返すその歌詞を見て驚きます。「こいつはブルースじゃないか」「あぁそうだよ」ってな会話があったかどうかは知りませんが、その歌詞を見て実はブルースやR&Bが大好きだけど自分の周りの音楽仲間にはその趣味をまったく理解されていなかったストーラーは自分と全く同じ趣味を持つ白人=リバーに初めて出会い意気投合、二人でコンビを組むことを決めます。

実はリーバーは歌が上手かったようで、二人で曲を作りリーバーがそれを歌うという可能性もあったのですが、さんざん素晴らしい黒人の歌手を聴いてきたリーバーにとっては自分が歌うことはブルースやR&Bを冒涜することだと思い作家としての活動に専念したようですね。賢明な判断と言えるのでしょうがバリー・マンジミー・ウェッブのようなセルフ・カバー集を聴いてみたかった気もします。

彼らの作品がレコードとして世に出たのはブルース・シンガー=ジミー・ウィザースプーンの「リアル・アグリィ・ウーマン」というシングルで1951年のことでした。リーバーもストーラーも1933年生まれですからこの時わずか18か19歳、いくらなんでも作家デビューには早すぎる気がします。

これにはある理由があります。

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Lee Hazlewood och Lester Sill

LAの当時としては珍しいブルースやR&B(いわゆるレイス・レコード)も扱っていたレコード店で働いていたリーバーはある日一人のお客から声をかけられます。「君には何か夢があるのかい?」「そうですね、できれば作詞家になりたいと思っています。」「面白い、自信のあるやつを聞かせてくれ」と言った会話があったかどうかは知りませんが、そのお客の前で自作の歌詞を披露した(バラカンさんによれば歌った)リーバーに、気に入ったからまた連絡するよと言い残し男は去っていきます。このお客こそ誰あろうLAの音楽界のヒット・メーカーの一人レスター・シルだったのです。シルはリーバーに作詞だけじゃだめだから曲を作れる奴を探してコンビを組むようにアドバイスします。リーバー&ストーラー誕生にはシルの助言があったというわけです。そして自分がプロデュースしていたウェザースプーンのシングル曲として彼らを起用したというわけです。

なんとラッキーなという気もしますが、1947年にはNYで白人(トルコ人)であるアーメット・アーティガンによりJAZZやR&Bといった黒人音楽専門のインディーズとしてアトランタ・レコードが創設されたように、おそらくは当時のアメリカの音楽業界の目鼻の利くプロデューサーたちはまだまだ一般からは敬遠されているブルースやR&Bといった黒人たちの音楽が次代の音楽として注目され商売になるという確信を持っていたと思われます。ただ黒人に対する差別が当たり前の時代ですからそのまま出しても白人聴衆には無視されてしまうでしょうから、何らかの仕掛けが必要と考えたのではないでしょうか。その仕掛けのひとつが、そのままでは濃ゆ~いブラック・コーヒーに白いクリームを入れて飲みやすくする、つまり曲作りの際どこかに白い要素を入れる、リバー&ストーラーの場合は楽曲を白人が作り黒人が歌う、ということだったんじゃないでしょうか。

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その仕掛けの象徴的かつ最も成功したものが数年後にサン・レコードのサム・フィリップスが「黒人のように歌える白人歌手」として見つけ出したエルヴィス・プレスリーだったのです。ですからリーバー&ストーラーの楽曲をプレスリーが歌うことになるのは必然だったといえないでしょうか。

05. Hound Dog / Big Mama Thornton


ピーコック・レコードのミュージシャン兼プロデューサーであったジョニー・オーティスはヤクザな社長ドン・D・ロベィからビッグ・ママ・ソーントンをなんとかしろと脅され藁をもすがる思いでリーバー&ストーラーに楽曲を依頼し、二人は彼女のために「ハウンド・ドッグ」を書き上げます。レコーディングのリハーサルで最初この曲はスローなバラードで歌われていたようですが、リーバー&ストーラーはソーントンのイメージと違うということでシングル化されたバージョンに変更してもらったようです。その際リーバー自身が歌って歌唱指導もしたとのこと。リハではオーティスがドラマーとしてリーバー&ストーラーも満足のグルーヴをたたきだしていました。しかし本番ではオーティスはプロデューサーに徹するため代役のドラマーが起用されましたが、満足の行く結果が得られず結局オーティスがドラムを叩くことになります。そのためブース内で実質的なプロデュースを行なったのはリーバー&ストーラーでした。この時の体験により自分たちのイメージどおりの音作りを行うためにはプロデュースまで自分たちが行う必要性を覚えた二人はプロデュースも積極的に行うようになります。

06. Riot in Cell Block #9 / The Robins
09. Smokey Joe's Cafe / The Robins


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ソーントンの「ハウンド・ドッグ」はR&Bチャートで7週連続1位というビッグ・ヒットとなりましたが、それに見合う印税は入ってこなかったといいうます。海千山千のロベイが印税を独り占めするような契約書にサインさせられていたからです。こういった経験を踏んで版権を自分たちが持つことの重要性を意識するようになったリーバー&ストーラーにまたもやレスター・シルが自分たちのレーベルを作るべきだと示唆を与えます。こうして二人はスパーク・レコードというレーベルを興します。シルはといえばちゃっかり共同経営者に収まり自分のマネージメントするロビンズのレコードをスパーク・レコードから発売します、もちろんリーバー&ストーラーの曲で。このへんレスター・シルも海千山千のやり手の業界人という感じですね。

The Robins / Riot in Cell Block #9 ___________________Smokey Joe's Cafe
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後にコースターズとなるロビンズの「第9監房の反乱Riot in Cell Block #9」「スモーキー・ジョーンズ・カフェ」のヒットもありスパークはレーベルとしてそれなりに成功していたようです。この弱小インディーズに目を付けたのがインディーズの大手であったアトランティック・レコードでした。1955年スパークはアトランティックに身売りされることとなります。この際にリーバー&ストーラーはソングライター兼プロデューサーとしてアトランティックと契約を交わしますが、専属ではなく他のレーベルのアーチストに対しても楽曲提供やプロデュースを行えるというオプション付きであったことから二人は独立プロデューサー第一号と呼ばれることとなります。

そしてこのオプションが最大限に活かされたのが皆様ご存知のプレスリーとのタッグでした。きっかけは以前のエントリーに書きましたようにプレスリーが56年に「ハウンド・ドッグ」を取り上げ大ヒットさせたことでした。

11. Hound Dog / Elvis Presley


07. Black Denim Trousers and Motorcycle Boots / The Cheers
08. L'Homme A La Moto / Edith Piaf


話はさかのぼりますが55年リーバー&ストーラーがチアーズというグループに書いた「ブラックシーンとライダーブーツBlack Denim Trousers and Motorcycle Boots」という歌が全米6位の大ヒットとなります。そしてこの歌がどういう経緯かシャンソンの女王エディット・ピアフが「オートバイの男L'Homme A La Moto」というタイトルでカバーして話題となります。これを知ったストーラーは56年に妻と二人でヨーロッパに渡りピアフに会います。意気揚々とアメリカに戻るはずであったストーラーですがあろうことか入港寸前に乗っていた客船が沈没し命からがらNYにたどり着きます。この時に出迎えたリーバーから「ハウンド・ドッグ」が信じられないくらいに大ヒットしていることを聞きます。歌っている歌手の名前を聞いたストーラーは「エルヴィス、誰それ? Elvis who?」とつぶやいたとか。リーバー&ストーラーの中ではブルース、R&Bこそが音楽で流行し出したR&Rは子供が聴く音楽という意識で興味が無くエルヴィスについてもほとんど知らなかったようです。

The Cheers/Black Denim Trousers and Motorcycle_____________ Edith Piaf/L'Homme A La Moto
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と、本当はサラっといくつもりが書いてるうちになんやかやと長くなってきたので、とりあえず本日はここまで、続きは明日以降に・・・

追悼:Jerry Leiber (part 1)
01. That's What The Good Book Says (Take 1) / Bobby Nunn & The Robbins
02. Real Ugly Woman / Jimmy Witherspoon
03. Kansas City aka KC Lovin' / Little Willie Littlefield
04. Flesh, Blood and Bones / Little Esther
05. Hound Dog / Big Mama Thornton
06. Riot in Cell Block #9 / The Robins
07. Black Denim Trousers and Motorcycle Boots / The Cheers
08. L'Homme A La Moto / Edith Piaf
09. Smokey Joe's Cafe / The Robins
10. Hound Dog / Freddie Bell & The Bell Boys
11. Hound Dog / Elvis Presley
12. Love Me / Willy & Ruth
13. Love Me / Elvis Presley
14. Ruby Baby / The Drifters
15. Fools Fall In Love / The Drifters
16. Lucky Lips / Ruth Brown
17. Treat Me Nice / Elvis Presley
18. (You're So Square) Baby I Don't Care / Elvis Presley
19. Don't / Elvis Presley
20. Down in Mexico / The Coasters
21. Searchin' / The Coasters
22. Young Blood / The Coasters
23. Yakety Yak / The Coasters
24. Charlie Brown / The Coasters
25. That Is Rock & Roll / The Coasters

追悼:Jerry Leiber (part 2)
01. Kansas City / Little Richard
02. Kansas City / Wilbert Harrison
03. Three Cool Cats / The Coasters
04. There Goes My Baby / The Drifters
05. Searchin' / The Hollies
06. Poison Ivy / The Coasters
07. Poison Ivy (version 2) / Rolling Stones
08. Down Home Girl / Alvin Robinson
09. Down Home Girl / Rolling Stones
10. Love Potion Number Nine / The Clovers
11. Love Potion Number Nine / The Searchers
12. Some Other Guy / The Big Three
ALBUM: The British Invasion Vol. 5
13. Some Other Guy / Richie Barrett
14. Some Other Guy / The Beatles
15. On Broadway / The Drifters
16. Stand by Me / Ben E. King
17. Spanish Harlem / Ben E. King
18. Spanish Harlem / Aretha Franklin
19. I'm A Woman / Christine Kittrell
20. I'm a Woman / Peggy Lee
21. Bossa Nova, Baby / Tippie & The Clovers
22. Something You Got / Alvin Robinson
23. Iko Iko / Dixie Cups
24. Leader Of The Pack / Shangri-Las
25. Is That All There Is? / Peggy Lee
26. Stuck In The Middle With You / Stealers Wheel

$鳥肌音楽 Chicken Skin MusicLeiber & Stoller Story 1: Hard Times

鳥肌音楽 Chicken Skin MusicThere's a Riot Goin On: Lieber & Stoller

鳥肌音楽 Chicken Skin MusicThere's a Riot Goin' On: The Coasters on Atco

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鳥肌音楽 Chicken Skin MusicElvis' Golden Records